大沢田池 〜遠来の客を熱烈(?)歓迎〜


 

【広島県東広島市 平成17年1月16日(日)】
 
 「そういえば今年って何年(なにどし)だったっけ?」
 毎年、その年の十二支を覚えているのはせいぜい松の内まで。お年玉年賀はがきの抽選が終わってしまうと、あれだけテレビや新聞でチヤホヤされたその年の十二支もあっさりと忘れ去られて、その後はせいぜい何かの拍子に冒頭のようなつぶやきとともに思い出されるのみです。そして、その年の暮れ、また次の年賀状の季節がやってくるまで誰も話題にすることはないのです。今や人々と十二支との関係はわずかに年賀状のみでつながっていると言っても過言ではないでしょう。(言い過ぎか。)
 
 そして今年は酉年。かろうじてまだ覚えていました。
 酉年のスタートだからというわけではありませんが、今年最初の定例観察会は冬鳥の観察です。場所は東広島市にある大沢田池。広さは約5ヘクタールでけっこう広く、この辺りでのバードウォッチングのメッカです。
 この池の向こうには国立病院機構東広島医療センターがあります。ここはその昔サナトリウムだっただけあって、周囲には里山、田園、そしてこの池と、静かな環境の場所が広がっています。 

 平岩公民館

 午前9時半、公民館のホールに集まったのは44人。
 今日は地元「東広島の野鳥と自然に親しむ会」の皆さんの協力を得て、というかほとんどお任せして、日頃あまり馴染みのない冬鳥たちに激しく肉迫してみたいと思います。

 開会

 今回の観察会のリーダーは高光さん。勤め先が東広島市内なので、この辺りはホームグラウンドでしょう。高光さんの前回の担当観察会も東広島でした。
 
 まず加藤代表から開会の挨拶。
 「生物の中には環境が変化してもその場所に適応し耐えて生きていかなければならないものがいる。移動能力の低い、例えばカエルやヘビなど。一方、鳥などはその時々で最適な場所を求めて移動することができる。すなわち、鳥の行動を見るとそこの自然の変化が分かるということではないか。野鳥の観察とは鳥を通じて自然の変化を探るということ。」 ふーん、そういう見方もありますか。

 新名さん

 フィールドに出る前に「…親しむ会」の会長の新名さんから、冬鳥についてのレクチャーがありました。
 親しみやすい語り口で、参加者の緊張もほぐれるというものです。

 「…親しむ会」の講師陣  パワーポイントを駆使して…

 10時半、大沢田池に向かって移動。徒歩1分の距離です。
 天気予報は見事にはずれて、気持ちのいい冬晴れです。でも風は冷たい。
 ところでこの期に及んで重大なことに気がつきました。双眼鏡を忘れてきたのです、家に。あーあ。これは競泳大会に海水パンツを忘れてきたようなもので、この必須アイテムがないと何もできません。なんともしまりのない話です。でも、今日は「…親しむ会」の講師陣が三脚付きのフィールドスコープを何台か持ってきてくれているので、それを覗かせてもらおうと思います。

 観察ポイント

 大沢田池の南端の土手に観察のための広場があります。大勢で観察するときは池の周りをあちこち移動せずに、このポイントから観察するのです。鳥のためにも周辺住民の方々のためにもそれがベターとのこと。
 対岸には医療センターの建物群が見えます。

 ヒドリガモ

 池のほとりにはたくさんのヒドリガモ。人が近づくと飛び立つどころかわれ先にと寄ってきます。どうも人から餌をもらい慣れているようです。
 君たち、ちょっと馴れ馴れしくないか。君らの野生はどこに忘れてきたんだ!(双眼鏡を忘れてきた者にとっては好都合だが。)
 ピーヨ、ピーヨ。ヒドリガモの鳴き声です。子供の頃、キューピー人形のおなかを押すとこんな音がしました。

 「おぉ!あれは」

 参加者はそれぞれ持参の双眼鏡で水面をなぞっています。また、講師陣のフィールドスコープにはターゲットが捉えられていて、みんながかわるがわる覗き込んでいます。そのたびに「あれがホシハジロか。」とか、「あっ、潜った!」とか声がします。
 今日の人気者はミコアイサ。通称パンダガモと呼ばれ、その名のとおり目の周りが黒くパンダみたいな顔をしています。遠目に地味な色が多いカモ一族にあって白と黒のコントラストが鮮やかです。
 あと、ヨシガモは見る角度によって頭部がメタリックな赤にも緑にも紫にも見える美しい鳥なのですが、今日はいないようです。ここから5qほどのところにある広島大学構内の池には毎年来ています。

 手作り感抜群の看板

 さすがに小寒と大寒との狭間だけあって、寒い。背中に貼り付けたカイロだけでは体の末端までは暖まりません。
 
 11時45分、まとめ開始。みんなで今日見た鳥を確認する「鳥合わせ」です。これは鳥を観る会では必ず行われます。

 鳥合わせ

 今日見ることができたのは、マガモ、ハシビロガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、ホシハジロ、ミコアイサ、カワウ、カイツブリ、アオサギ、ダイダギ、コサギ、ゴイサギ、カワセミ、ツグミ、ジョウビタキ、ガチョウ、ヒヨドリの計19種。たった1時間余りでこれほどの野鳥を観察することができました。一人で見に来てもなかなか分からないものですが、大勢で、しかも詳しい人と一緒に見るとたくさんの鳥たちと出会うことができます。事前のレクチャーも効いていました。
 
 ちょうど正午となり、閉会です。
 カモたちは越冬のため日本に渡ってきます。越冬地でのオスはきれいな姿をしていますが、春になりシベリアなどの繁殖地に戻るとメスと見分けがつかない地味な姿に変わります。向こうでバードウォッチングをしても鮮やかな姿を見ることはできないのです。そんな話を聞くと、シベリアの人もきれいな姿の鳥を見てみたいだろうな、そのためにわざわざ日本にやってくる愛好家もいるのかな、そうはいないだろうな、などととりとめのないことを考えてしまいました。
 そして今回の観察会は「…親しむ会」の皆さんに拍手を送って解散となりました。


 午後からは来年度の行事計画を建てるため、平岩公民館に戻って事務局会です。例年1回では決まらず何回か会合を持つのですが、今回はスパッと決まりました。