大町自然観察園 〜下総台地の四季・4月〜


 

【千葉県 市川市 平成22年4月25日(日)】
 
 春本番、下総台地にも輝くような日差しが降りそそいでいます。街では桜の季節もおおかた終わってしまいましたが、さて、今月の大町自然観察園の様子はどうでしょうか。
 家族連れで賑わっている動物園の脇を通って、奥に広がる自然観察園に向かいました。

 散策路

 どうでしょうか、この気持ちいい散策路。新緑の木漏れ日の中を歩いて、体まで緑色に染まりそうです。

 丘の上へ

 自然観察園の入口の左手にあるこんもりとした丘の上に行ってみましょう。2月に上がってみたときには、まだ冬の風景でしたが。

 ホウチャクソウ

 おっ、ホウチャクソウが咲いています。ナルコユリやアマドコロなどこの仲間の中では一番最初に咲く花です。漂う気品も一番でしょうか。のっけから花の出迎えで、何かワクワクしてきます。

 ヒトリシズカ

 ヒトリシズカの葉がつややかで若々しいです。この花に出会えるのは深山というイメージがありますが、こんな市街地に近いところでも。まだ昔ながらの里の自然が残っているんですね。

 ジュウニヒトエ

 十二単を身にまとった平安貴族のよう? 花が幾重にも重なって咲くことからこの名が付いたといわれています。

 丘の上

 丘の上は新緑に包まれていました。2箇月前はこんな感じだったのですが、ガラッと印象が変わりました。(→2月の様子) 今日も人影はほとんどなく、静かな林です。ベンチに座ってゆったり昼食としました。

 見上げるとモミジの若葉。日を透かして様々な緑色を見せています。枝をそよがせる風も爽やか。コンビニ弁当も3倍くらい美味しく感じられました。

 アマドコロ

 食事を終えて、辺りを散策。アマドコロも蕾を膨らませていて、ようやく一番下の花が開いたところでした。これで全開の状態です。

 ホタルカズラ

 丘を下りていつもの観察コースへ。散策路脇に咲くホタルカズラです。気づかずに通り過ぎる人もいましたが、yamanekoには「ここに咲いているよ」という呼びかけがちゃんと聞こえました。

 定点写真

 先月に比べてずいぶん緑色が増えましたね。まだ去年のアシが枯れ残っていますが、やがて新しいのがぐんぐん伸びてくるでしょう。

 晴天に桜

 葉と花が同時に展開する種類のサクラ。ソメイヨシノとばかり思っていましたが、違っていたようです。あらためて冬芽の写真を確認してみるとオオヤマザクラのようでもありますが。

 オニタビラコ

 長い茎の先に小さな頭花をたくさん付けるオニタビラコ。子供の頃、この花の茎を折って、断面から白い乳液が出るのを何度も飽きずに見ていた記憶があります。もう40年くらい前のこと。あの頃は遠く懐かしいなあ。

 いろんな緑

 この時期、里山には赤っぽいのから黄色っぽいのから、いろんな緑色があります。

 ハンノキ

 ハンノキの葉も展開しはじめました。1月、開花前はこんな感じでしたが。(→1月の様子

 イヌザクラ

 イヌザクラの花穂が伸びていました。開花は来月ですね。

 1年のうちでこの時期のみ、こんな輝くような景色を楽しめるのは。

 ハンノキの林

 いい雰囲気のハンノキ林です。(どうも似たような写真が続くなあ…。)

 ムクノキ

 ムクノキの若葉。しっとりとして柔らかいです。葉の基部の放射状の葉脈が特徴的ですね。来月にはクリーム色の小さな花をたくさん咲かせるでしょう。
 ムクノキの名の由来には諸説あるようですが、「古木になると樹皮が薄く剥がれる(剥ける)」というのが有力だそうです。そういえば、鳥にムクドリというのがいますが、これは甘くて美味しいムクノキの実をよく食べるからムクドリと名が付いたのだそうです。

 ニワトコ

 ニワトコの花が咲いていました。あの丸っこい小さな芽からこんな賑やかな花が咲くなんて。自然の不思議です。(→1月の芽の様子

 ナナホシテントウ

 そのニワトコの葉の上にいたテントウムシの幼虫。すぐ近くには成虫もいました。幼虫は地味な姿ですね。緑色の葉の上にいるとかえって目立ちます。一方、成虫は派手な色と模様ですが、これは鳥などに捕食されにくくするための警戒色なのだとか。テントウムシは敵に襲われると黄色い体液を分泌して、強い異臭と苦みで撃退するのだそうです。派手な姿は「食べても不味いぞ」って意味なんですね。

 遊水池

 谷地の最奥までやって来ました。下総丘陵の崖からの湧水です。涼しそう。

 シャガ

 湿った環境を好むシャガ。エレガント・ビューティーです。崖沿いに咲いていました。

 遊水池

 さっきのとは別の遊水池。すぐ隣にあります。覆い被さる梢の緑を水面に映し込んでいます。

 リュウキンカ

 湿地に咲いていたリュウキンカ。雪解け水が似合うイメージがありますが、こんな丘陵地でも出会えるなんて。花弁はなく、花弁に見える部分は萼片です。キンポウゲ科の植物にはお馴染みの構造ですね。

 ミツガシワ

 こっちはさらにビックリしたミツガシワ。アシ原の奥で咲いました。ミツガシワは高地や寒冷地の湿原に咲くという認識だったのですが、調べてみると都内の石神井公園にも自生しているものもあるとかで、暖かい地方にもまれにポツンポツンと隔離分布しているとのこと。でも、そのような群落はたいてい天然記念物に指定されているようなので、やっぱり植栽なのかもしれません。

 ノミノフスマ

 休耕地を覆い尽くすように咲いていたノミノフスマ。ナデシコの仲間です。「フスマ」とは建具の「襖」のことではなく、昔、夜具として寝るときに体の上にかけた袷(あわせ)のことだそうで、「衾」の字をあてます。葉がノミの夜具くらいに小さいことから「蚤の衾」と名がついたのだそうです。ふーん。

 メダカ

 流れの緩やかなところにはメダカの群れが。メダカは体が小さく泳ぐ力が弱いので、サラサラ流れる春の小川には棲めないのです。

 チャワンタケの仲間

 林床にチャワンタケの仲間が(チャワンタケは種類が多い上に情報が少ないので、yamanekoには種までは特定困難です。)。しかしこの形、雨水が溜まって困らないのでしょうか。

 ゲンゲ

 最近見なくなりました、レンゲ(ゲンゲの別名)の花に埋め尽くされた田圃を。田植え前の荒起こしの際にゲンゲをそのまますき込んで肥料として利用するのです。子供の頃、何で田圃に花を咲かせているのか不思議に思っていました。

 日本でも…

 今日は春を迎えて一気に輝きだした長田谷津を歩きました。花も多く、楽しい一日でした。
 帰りがけ、動物園には子ども達の遊具が。これって「とっとこ○○太郎」のようにも見えますが、顔のデザインが微妙に違うようにも…。どっかの国で話題になりがちないわゆる「パクリ」ってやつですか?
 
 

  下総台地と大町自然観察園