大町自然観察園 〜下総台地の四季・3月〜


 

【千葉県 市川市 平成22年3月27日(土)】
 
 毎年のこととはいえ、ちらほらと桜の便りが届く季節になって油断していると、急に真冬のような日がやって来て寒い思いをします。今日も天気はよいですが、最高気温は12度くらい。日陰ではシンと冷えます。
 さて、3月の定点観察。長田谷津の自然は少しは春っぽくなっているでしょうか。 

 市川市動植物園

 今日は、首都高の中央環状線から6号三郷線経由でやって来ましたが、首都高も、またそこを下りてからの水戸街道も渋滞が激しかったです。なんだかんだで2時間近くもかかってしまいました。年度末ですからね。
 駐車場にドリーム号を停めてから、動植物園の脇を抜けて自然観察園に向かいます。ここの動物園はこぢんまりとしていますが、レッサーパンダがウリのようです。

 イロハモミジ

 モミジの若葉って、こんな早い時期に展開しているんですね。まだ周囲の落葉広葉樹は寒そうな枝をしているのに。

 谷地への入口

 自然観察園は谷地の奥へと続いています。この辺りに来ると子ども連れの人はぐっと少なくなりますね。木々の雰囲気は先月までと比べてちょっと明るくなったような。

 シャクナゲ

 植栽のシャクナゲの中に数輪咲いているものが。周囲がパッと明るくなるような華やかさです。

 コブシ

 谷地の林が心なしか明るく感じるのは、やっぱりコブシのおかげでしょう。ところどころに大木に育ったコブシがあって、それがみんなちょうど満開でした。純白の花が陽光を乱反射させ、木々の根元まで明るく照らしているようでした。

 定点写真

 定点写真のポイントにやってきました。葦原が少し緑色になってきているのが分かりますね。先月はベージュ一色でしたが。

 ケキツネノボタン

 畦道の定番植物、ケキツネノボタンです。写真が若干ピンぼけしているように見えるのは、茎や葉に密生している毛のせいでソフトフォーカス気味になっているせいです。この毛が「毛狐の牡丹」の名の由来ですね。花が明るいと、バックの流れも「春の小川」っぽく見えます。

 林の中

 谷地を縁取るように続いている林の中に入ってみることに。落ち葉が掻かれた後の地面からアマナの葉が伸びていました。見ると、林の中で枯れ枝を片付けたりしているおじさんがいました。昔からそうやって手入れをして、林からのたくさんの恵みを得ていたんでしょうね。
 

 ニワトコ

 開花直前のニワトコの花。2箇月前まではあめ玉みたいな蕾だったのが、こんな姿になるなんて。縮こまっていた花と葉が伸びやかに展開しています。

 春の空

 空の表情が優しくなっています。春の空です。
 地上でも、茶色の木々に混じってコブシの白い花が。ちょっと分かりにくいですが。

 オランダガラシ

 小さな流れを埋めるように繁っているオランダガラシ。濃い緑色の葉とは対照的な白い花が、まるで陶器で作ったような質感ですね。アブラナ科らしく4弁の可愛らしい花です。

 水ぬるむ

 流れの緩やかなところでは水温も上がって、生き物たちが活発に動き始めているようでした。アカガエルのオタマジャクシも人影に反応して、あちこち泳ぎ回っていました。

 キショウブ

 水路沿いにキショウブの葉が伸び始めていました。来月末にはレモンイエローの鮮やかな花を咲かせます。

 シナレンギョウ?

 黄色といえばこちらもかなり鮮やかです。レンギョウには有名なところでシナ、チョウセン、ヤマトとありますが、これはシナレンギョウでしょうか。葉があればある程度分かるのですが。ちなみにシナレンギョウの故郷中国でレンギョウというと、オトギリソウやトモエソウのことを指すようです。これは、レンギョウが日本に入ってきたときに間違ってしまったとのことです。

 観賞植物園

 ルート脇にある観賞植物園に行ってみました。寒いので温室が目当てです。

 ジャングル

 早春の下総台地からジャングルへ。高温多湿でレンズも曇り気味です。

 ヒスイカズラ

 おお、なんとヒスイカズラが咲いているではないですか。半年前、筑波実験植物園の温室に行ったときにその存在を知りましたが、この時期に咲くものだったとは。思いがけない出会いにちょっと感動です。

 蝶形花

 ヒスイカズラはマメ科のツル性植物。奇抜な形をしていますが、ちゃんと旗弁、翼弁、竜骨弁とマメ科の花の基本構造を踏まえています。右の写真は落ちていた花を開いてみたところ。上下が逆になっています。下向きに伸びているのが旗弁。小さいのが翼弁。鋭いフックのようになっているのが竜骨弁です。開いてみると、雄しべと雌しべは筒状に巻かれた竜骨弁の中に格納されていました。

 土筆

 温室を出ると、急に3月の日本へ逆戻り。でも日向は敷物でも敷いて弁当を広げたくなるような感じ。弁当は持参していないので残念ですが。

 ハンノキ林

 見るからに花粉が飛んでいそうな風景。今年も1月下旬から毎日2回薬を飲んでいて、このパターンは3年目なのですが、年々症状が軽くて済むようになってきている気がします。たとえば、今日は散策前に目薬を1回差しただけ。点鼻薬は使っていません。数年前までは、この時期に野山に出ようものなら、目薬を差しても、点鼻薬を使っても、夜になると目は痒いは、花はコンクリートを詰めたみたいになるはで、大変な思いをしていたものです。春のワクワク感を味わうことができるこの季節を、野山で楽しく過ごせるって素晴らしいことですよ。花粉症歴18年でしみじみ感じます。

 モミジイチゴ

 遠慮がちに下向きに咲いているモミジイチゴ。何となくサクラの花に似ているのは、同じバラ科で親戚同士ということも関係しているかもしれません。この花を見ると「春が来たな」と感じます。

 ミズバショウ

 植栽のものでしょうが、水路のあちこちにミズバショウが咲いていました。もう盛りは過ぎた感じですね。


 
 枝垂れ桜

 千葉県西部の桜の開花は3月31日の予報だったので、サクラはまだだろうとは思っていかしたが、長田谷津の最奥部にある枝垂れ桜は五分咲き程度にまでなっていました。素直に嬉しいです。
 桜の花を見ると心がすーっと澄んでくるのはなぜだろう。桜は人々の生活と深く関わって、その花の季節に数々の別れと出会いを見守ってきているからでしょうか。日本人の精神性からも切っても切れない特別な花だと思います。

 ナガバノスミレサイシン

 植え込みの影に可愛いスミレが。ちょっとフォトジェニックな感じのナガバノスミレサイシンです。春ですね〜。

 グイスカグラ

 この花も桜の頃に咲きますね。ウグイスカグラです。この実はジューシーで美味しいです。子供の頃、遊びの途中でよく食べていました。その後グミの実を食べて、酸っぱ苦い思いをしたこともたびたびでしたが。

 どうでしょうか、先月に比べて地面を緑の葉が覆い始めているのが分かりますよね。これからぐんぐん丈が伸びてくるでしょう。来月に来たときには春真っ盛りの長田谷津でしょうね。
 
 

  下総台地と大町自然観察園