大霧山 〜山々は淡いパッチワークに(後編)〜


 

 (後編)

【埼玉県 東秩父村 令和4年4月10日(日)】
 
 淡いパッチワークに彩られた大霧山界隈での野山歩き。後編です。(前編はこちら) 

 Kashmir3D

 彩の国ふれあい牧場をスタートして稜線上を南下。粥新田峠を過ぎて大霧山の山頂に向けて登り始めたところです。時刻は11時45分、お昼は12時を過ぎても山頂で食べたいところです。 

 ミツバツツジ

 先ほど別の株で花冠を直接確認したところ雄しべが5個あってミツバツツジと分かったので、おそらくこれもミツバツツジではないかと思います。

 クロモジ

 見上げるほどの大きなクロモジがありました。ちょうど開花の時期。木は大きくても花は小さく可愛いです。



 明るい尾根道を一歩一歩登っていきます。

 ホオノキ

 さっきのクロモジよりも更に大きなホオノキ。こちらは木の大きさに比例して花も特大で、洗面器くらいのサイズになります。写真は太いサインペンほどの大きさの芽が展開し始めたところです。

 ヒゲネワチガイソウ

 これはヒゲネワチガイソウですね。ワチガイソウに似ていますが、葉も花弁もこちらの方が細身です。



 急な坂が続きます。里の方から12時のサイレンが聞こえてきました。妻の声に振り返ると、とりあえずおやつタイムにしようとの提案。了承です。

 北東方向

 北東方向の眺め。山並みの向こう側に小川町や熊谷の市街地などがあるはずです。眼下の谷は槻川が削ったもの。槻川の「槻」とはケヤキのことで、この川の源流部にケヤキの大木があったことがその名の由来とされています。

 マムシグサ?

 枯れ葉に覆われた地面からニョッキと何やら出てきています。これはマムシグサの仲間の芽ではないでしょうか。一瞬、ネマガリダケの筍に見えてしまいました。



 急な上りの後にやや平坦な地形が現れました。ホッと一息です。

 結晶片岩

 ちょっと変わった岩が露出していました。ミルフィールのような薄い層のような構造があり、くすんだ緑色をしています。調べてみると、変成岩(もともとあった岩石が高温や高熱にさらされて別の性質の岩石に変わったもの)の一種の結晶片岩という岩のようでした。



 山頂直下、最後の登りです。

 山頂

 おお、ようやく山頂だ。時刻は12時30分です。



 yamanekoに続いて妻も登ってきました。さあ弁当、弁当。
 ちなみに、写真奥のなだらかな山のところから歩いてきたことになります。

 ランチ

 ランチはコンビニ弁当とゼリーです。目の前のパノラマを眺めながらだと何を食べても美味しいです。加えて空腹だし。

 北西方向

 そのパノラマとはこちら。なかなか雄大ですね。左手は妙義、荒船、浅間といった群馬県南西部の山々。右手は高崎や前橋など街並みが広がる北関東の平野。手前には中央やや右に宝登山が見えています。麓には長瀞があり、荒川がそこを流れ下っていく秩父盆地の出口になります。



 山頂にはここから見渡せる山々の解説板が設置されていました。今日はうっすらと春霞がかかっていて、そうたくさんのピークは確認できませんでした。

 山頂

 山頂はこんな感じ。ベンチが4基ありましたが、平らな部分はほとんどありません。

 シハイスミレ

 これはシハイスミレ。「シハイ」は「紫背」と書き、葉の背面(裏面)が紫色ということです。yamanekoの好きなスミレです。

 下山

 山頂で1時間ほど休憩して、下山を開始しました。

 分岐

 分岐です。直進すれば急坂。、左手に迂回すれば比較的なだらかな坂道で下っていけます。yamaneko達は当然に左です。



 ジグザグに下って行きます。そういえば今日はここまで山頂で3組、登り下りで2組の登山者に出会っただけ。静かな野山歩きです。

 セントウソウ

 セリ科の花ですね。花茎は赤味を帯びていませんがこれはセントウソウではないでしょうか。草丈は20cmほど。葉は1回3出複葉でした。セントウソウは漢字で「仙洞草」と書き、仙洞とは仙人の住むところという意味だそうです。見かける場所はそんな深山幽谷の地というほどではないですが。



 木々の影が少しずつ長くなってきたようです。でも急がずにゆっくりと。山でのケガは帰路で起きることの方が多いと聞きますから。

 粥新田峠

 粥仁田峠に戻ってきました。ここで小休止。時刻は2時5分です。



 歴史のあるこの峠。覆い被さる桜を見上げて峠を越えた人も多くいたでしょう。



 峠にはこんな記念碑が。「粥仁田地蔵尊建立記念碑」とあります。碑文に昭和60年と彫られていましたから、比較的新しいもののようでした。碑文を読むと、昭和57年に秩父事件から100年を記念して事件を映画化した際に、使われなかった膨大なフィルムを供養するために地蔵尊を建てたのだそうです。フィルムを廃棄することなく地蔵の下に収めて供養したということは、映画制作に相当な思いがあったんでしょうね。この地に建てたのはここが重要な戦の場だったということなんでしょうか。

 ヤマツツジ

 粥新田峠から再び山道を登ります。これはヤマツツジ。これから開花するところですね。



 2時30分、林道に出ました。ここは左手に向かいます。



 右手にはこんな綺麗な桜が。ちょっと戻って観に行くほど立派でした。



 さあ、ドリーム号Vが待っている彩の国ふれあい牧場を目指しましょう。



 この先で林道は終了。車道を横切って、丘の上の旧道を歩きます。 

 ノジスミレ

 スギナの中にノジスミレが咲いていました。今日見た5種類目のスミレです。

 ミツバアケビ

 一見、果実のようなミツバアケビの花。花弁のように見えるのが雌花。中にバナナのような形の雌しべが3、4個あります。雌花の下の方にあるのが雄花で、ぶつぶつしたものは雄しべです。花にもいろんな形態があるんですね。これはこれで理にかなっているんでしょう。

 秩父山地の果て

 右手の眺望。秩父山地の先端部に位置する笠山と堂平山が見えています。そのシルエットはここからなだらかに高度を減じていき、関東平野に滑り降りていきます。今日の野山歩きの締めくくりとして素晴らしい景色を見させてもらいました。



 3時前、駐車場に戻ってきました。多少ふくらはぎに張りはあるものの、それほど疲れもありません。
 
 今日は、下界では終わりかけている桜の姿も楽しめたし、ほのぼのと満ち足りた野山歩きになりました。帰りの高速道路も渋滞はなく、ついでにラジオでカープの快勝の様子を聞きながら帰ることができました。いい一日でした。