大柿花山 〜寒中にぽっと陽の差す里の山〜


 

【栃木県 栃木市 平成29年1月22日(日)】
 
 年が明けて初めての野山歩き。寒い日が続いていて山登りはちょっと億劫なので、のんびりと散策できる場所を選びました。
 今日の目的地は「大柿花山」。 ん、やっぱり山なのか? いや、こういう名前の山があるわけではなく、里山の斜面を利用して個人の方が植物園を営んでいる、その施設の名前が「大柿花山」(おおがきはなやま)なのです。
 この日の朝、NHKの「趣味の園芸」を見ていたらこの園地でのロケを放送してて、ちょうど今園内にロウバイが咲いているとのこと。番組終了後、準備をして行ってみることにしました。
 
                       
 
 圏央道を北上して久喜白岡JCTから東北道へ。関東平野に別れを告げて山あいを走るとほどなく栃木IC。ここで一般道に下り、県道を北上します。辺りは低い里山が連なっていますが、そのほとんどをゴルフ場が削り取っているといった感じです。都心から2時間程度の距離なので、ゴルフ場開発が盛んに行われたんでしょうね。

 事務所

 午後1時、施設の駐車場に到着。車を降りてすぐのところに管理棟がありました。ここを通り抜ける形で園内に入っていきます。建物はちょうど小さな山ひだの入口に位置しています。

 園内


 管理棟でここを運営されているご夫婦と少し話をしてから、園内に入りました。すぐに山肌を登って行く道になります。この時期、まだ花は少なく、ロウバイくらいしか花がないそうです。そんな中、今年はウメの開花が早いとのことで、今園内にも咲いているとか。



 すぐに大きなロウバイが迎えてくれました。見事に満開です。

 ソシンロウバイ

 空気はひんやりしていますが、花の周囲だけ春です。



 花冠の中央まで黄色いので、これはソシンロウバイでしょうか。青空によく映えます。



 しばらく歩くと白梅が。確かにまだ咲きはじめです。枯れ野の中に花に出逢うと本当に嬉しくなります。



 冬の午後の陽は傾き始め、谷間に早くも影を広げつつありました。

 山頂

 30分ほど歩いて山頂部に出ました。標高187mです。風もなく暖かな日和です。

 西方向

 山頂から眺めた西の方向。ザ・里山風景ですね。手前の白い建物は金属加工会社。左奥の煙突のある建物はゴミ処理施設です。やっぱり高いところからの眺めっていいですね。特に絶景でなかったとしても。
 写真中央奥に台形の山頂が見えているのは三峰山。ここから7、8kmほど離れていて、今から9年前この山の麓にセツブンソウを見に行ったことがあります。(こちら

 サルスベリ

 山頂で何かおもしろそうなものを探すと…、
 避雷針のようなサルスベリの花殻。花の時期には枝はしな垂れるようになっているんですが。「実るほど 背筋を伸ばす サルスベリ」

 ネジキ

 ネジキの本年枝は塗り箸のような光沢を持っています。冬場にはよく目立って、その存在をアピールしています。

 日光連山

 山頂から北東に向かって尾根筋沿いに歩いて行くと、途中でこの眺望に出逢いました。北に居並ぶ日光連山です。白い山肌が輝いていますね。ここから直線で40kmほど離れています。
 手前の裸地はゴルフ場ですね。

 石の祠

 小ピークに石の祠が三つ。よく見ると鏡餅がお供えしてありました。今でも地元の方の信仰を集めているんですね。
 近くの標柱には「深沢布袋山城本丸跡」と記されています。ここに城があったんですね。この植物園のパンフレットによると、ここにあった城は藤原秀郷が938年頃築城した山城を基礎に1504年頃秀郷の子孫の皆川氏が再構築したものだそう。1588年、常陸国の佐竹氏、宇都宮氏連合軍との合戦で落城したとのことです。

 本丸跡

 祠から一段下がったところに広いスペースがありました。ここが本丸だったのかもしれません。

 大柿の里

 北側の風景。写真左端辺りの里を大柿地区というようです。写真右奥に宇都宮の市街地(ビル群)が見えましたが、この写真では判然としませんね。

 紅梅

 本丸跡から坂道を下って、最初のロウバイのあった辺りに戻ります。
 紅梅が数輪咲いていました。花が少ない時期だけに、ほんの数輪の開花でもカメラを向けてしまいます。

 マンゲツロウバイ

 このロウバイは花冠の中心が赤い色をしています。花冠全体の姿が丸っこいのでマンゲツロウバイかもしれません。

 サザンカ

 サザンカも咲いていました。斑入りの園芸種ですね。寒のまっただ中でも咲く花はあるものです。
 1時間ちょっとのんびり歩いて事務所まで戻ってきました。ここでまたご夫婦と雑談。ちょうどついさっき剪定したというロウバイの枝をいただきました(他の来園者にも配っておられました。)。
 管理棟を出ると建物の入口脇に大きな木があり、ピンポン球くらいの大きさの実がたくさんぶら下がっていました(このページの最初の写真参照)。係の人に聞くとこれはハンカチノキなのだとか。特徴的な白い花(というか苞)はよく知られていますが、実の姿までは知りませんでした。厚い果肉の中に大きな種子が一つ。ちょうど桃の種のような感じです。地面に落ちた果実から係の人が靴で踏んで出してくれた種子をもらって帰りました(さっそく帰ってから鉢に植え付けました。)。
 
 今日は急に思い立って来た割にはのんびりと楽しい野山歩きができました。立春まではまだ2週間ほどあります。早く春が来ないかなとも思いますが、こうやって寒い中にも健気に咲く花の姿を見るのも悪くない。そんな気がした一日でした。