野川公園 〜春まだ遠い武蔵野散策〜


 

【東京都 調布市 令和4年1月9日(日)】
 
 正月気分もいつの間にか抜けてしまい、また日常が戻ってきました。
 今年も穏やかな気候の正月でした。ただ、正月明け早々に寒波がやって来て都心でも数cm積雪があったくらいなので、山の方はまだしっかりと雪があるはず(へたしたら降っているかも。)。なので今回の野山歩きは公園散策としました。場所は武蔵野の面影が濃い野川公園です。
 
                       
 
 京王線調布駅に12時過ぎに到着。とりあえず駅近で昼食をとって、あらためて駅前のバス乗り場にやって来ました。ここから武蔵小金井駅行きの京王バスに乗ります。

 東八道路

 バスに揺られること20数分。野川公園の真ん中を突っ切るように延びる東八道路の一之橋バス停で下車しました(道路の両側とも野川公園)。時刻は1時半です。さっそく道路を渡った反対側にある自然観察園に向かいます。

 自然観察園

 野川の流れを渡ると自然観察園の入口です。花の季節にはまだ遠いせいか、園内には数えるくらいの人しかいませんでした。静かです。

 オオイヌノフグリ

 園内を反時計回りに歩いて行きます。足下にオオイヌノフグリが。



 ソシンロウバイはほぼ満開状態でした。

 ソシンロウバイ

 ソシンロウバイはうつむいて花を開くので、下から見上げて写真を撮ってちょうど良いアングルになります。

 メジロ

 日本では留鳥のメジロ。暖地の常緑広葉樹林に最も多く、北に住むものは冬場南の方に移動するそうです。この小さな体で長距離を渡るのは大変でしょうね。その際には数十羽でまとまって移動するのだそうです。



 園内はこんな感じでがらんとしていました。冬の陽は早くも傾き始め、木々や地面を柔らかに照らしています。ほぼ無音の園内をより静かな雰囲気にしていました。

 シュロソウ

 むむ、この花殻は…、シュロソウではないでしょうか。花の後、花被片を台座にニョキッと現れる刮ハの姿からピンときました。(こちら



 上空に小型機が。となりの調布飛行場を飛び立った飛行機のようです。手が届きそうな(感じがする)高さに見えました。

 クリンソウ

 湿った場所に見つけた鮮やかな緑色のロゼット。これはクリンソウですね。この形で越冬するんですね。自宅の鉢植えでは冬には地上部が全部枯れていたような記憶があるんですが。

 ツグミ

 ツグミです。白い眉が目印です。さっきのメジロがスズメサイズだとしたら、ツグミはハトサイズ。(もう一回り大きな鳥はカラスサイズとなり、スズメ、ハト、カラスが大きさの目安として物差しのように使われたりします。)
 ツグミは日本では冬鳥で、夏にシベリアで繁殖し、冬に日本列島や中国中南部に渡ってくるのだそうです。お疲れ様です。

 ヤマツツジ

 一見花のように見えますが、これは葉。よく見ると黄葉しています。ヤマツツジでしょうか。

 ヒヨドリ

 センダンの木の上からピーヨ、ピーヨと甲高い鳴き声。見上げるとヒヨドリが忙しくセンダンの実をついばんでいました。ヒヨドリの大きさはハトサイズ。主に日本列島と朝鮮半島南部に留鳥として分布しているそうです。我々日本人にとっては見飽きた鳥ですが、海外のバードウォッチャーにとっては珍しい鳥なんでしょうね。

 ニホンズイセン

 ああ、咲いている花に出会えました。ニホンズイセンですね。すっくと伸びた花茎が、寒さに背を丸めてちゃだめだよと言ってくれているようでした。

 ワルナスビ

 鮮やかな黄色の液果が枯れた茎に連なっています。これはワルナスビの果実。プチトマトに似ていますがかなり強い毒性があり、摂取量によっては命に関わるくらいです。この毒性に加え、全草に鋭い棘があることや、いったんはびこると根絶やしにすることが極めて困難なことなどが「悪茄子」の名の由縁のようです。

 コゲラ

 コゲラがコナラの幹をつつきながららせん状に移動しています。ところで前から疑問に思っていたのですが、キツツキは木をつついていて脳震とうを起こさないのでしょうか。けっこうな衝撃だと思うのですが。頸椎が衝撃を吸収する構造だったりするとすごいですね。

 ツグミ

 コゲラを見上げていてふと気がつくと、3mほど離れたところにツグミがいて、しきりにキョロキョロしていました。普通、この距離だと鳥の方が逃げてしまいます。そのツグミは地面から30cmほどの所にある枝から動こうとせず、たまに地面に下りてまたすぐに枝に戻ったりしています。なにか地面に大切なものがあって、それを危険から守っているような感じでした。なんだったんでしょうか。あえて確認しませんでした。

 ヤブコウジ

 ほぼ茶色一色の園内で、緑と赤のコントラストを見るとなんだかホッとしますね。これが縁起の良さにつながって、センリョウやマンリョウといった植物が正月飾りに使われたりしたとのことです。これはヤブコウジ。別名「十両」です。

 マンリョウ

 百両(カラタチバナ)や十両(ヤブコウジ)は後付け感が否めませんが、こっちは標準和名自体が「マンリョウ」。別名ではなく本名です。

 ヤブラン

 野には赤い実だけではなく黒い実もあります。これはヤブラン。ただ正確には実というよりもこれは種子。いわゆる果肉に当たる部分は早いうちに落ちてしてしまって、よく知られているこの「ヤブランの実」の姿になるのです。

 野川

 体が冷えてきたので、そろそろ帰ることに。野川を渡ってまたバス停に向かいます。野川はこの公園内を流れる区間では護岸されていなくて、自然の川岸の風情を見せてくれています。

 自然観察センター

 橋を渡るとすぐに自然観察センターがありますが、今は改装工事中で閉鎖されていました。

 ネズミモチ 

 高いところにネズミモチが実を付けていました。この実がネズミの糞に似ていて、葉がモチノキに似ているからネズミモチという名が付けられたのだそうです。可哀想なネーミングですが、別名にタマツバキというものもあり、こっちの方にしてあげてほしいです。
 
 今日は春の気配にまだ遠い武蔵野の自然を楽しみました。一面静かな枯れ野といった感じでしたが、落ち葉の下ではちゃんと春を迎える準備が進められているはずです。あと一月もするとあちこちでその兆候を見ることができるでしょう。
 
 陽が傾いた通りでバスを待って、再び調布駅に戻りました。