日光白根山 〜東日本の最高峰へ(後編)〜


 

 (後編)

【群馬県 片品村、栃木県 日光市 平成21年8月15日(土)】
 
 さて、日光白根山の山歩き、続きです。(前編はこちら

 森林限界を超えてからはご覧のような急斜面(右手の岩肌を登る小さな白い点が人です。)。上の写真は頂上方向を見上げたものですが、山頂はあのゴツゴツした岩塊の向こうにあり、この位置からは見えません。
 写真左手からはどんどん雲が押し寄せてきていて、ちょうど山を越えるところでちぎれていっています。なので左(西)の空と右(東)の空は、後で写真を見ると別の日に撮ったように見えました。

 「やったー!」

 お気楽にバンザイをしていますが、もちろんまだ山頂ではありません(予行演習だそうです。)。これからまだまだ険しい登りが続きます。

 カール?

 傾斜が少し緩くなり、山頂が近づいてきたことが分かります。上の写真。地形がハーフパイプ状になっていて、一瞬カールか?と思いましたが、よく考えたら山頂部は溶岩ドームになっていて、約5700年前の噴火でできているとのことなので、氷河が削ったものであるわけがありません。

 ヤギを連れたペーターが出てきそうな風景。山頂近くの小ピークです。

 コケモモとガンコウラン

 左の赤い実と丸っぽい葉はコケモモ。右の黒く熟した実とブラシのような葉はガンコウランです。
 コケモモによく似たのに同じツツジ科のアカモノという植物がありますが、こちらはやや標高の低いところに分布するもののようで、コケモモは亜高山帯から高山帯で出会います。ガンコウランは更に高く、高山帯に分布しているのだそうです。確かにガンコウランの葉の方が寒さや雪への耐性が高そうですね。

 おっ?

 稜線に何人かの人影が。頂上でしょうか。急に元気が涌いてきましたぞ。

 ばーん! どうですか、この眺め! 東側、奥日光の風景が一気に開けました。
 正面の優雅な山体は日光の名山、男体山。そこから左奥に大真名子山、小真名子山と続き、最奥に尖った山容の女峰山。左手前の山は太郎山です。男体山の右手に見える湖水は中禅寺湖、男体山の麓にわずかに見えている黄緑色の部分が戦場ヶ原です。前白根山に隠れてその全容は見渡せませんが。

 昼食を

 時刻はちょうど12時。我々も昼食としましょう。この場所には祠もあり、一見山頂のようですが、真の山頂は隣の岩峰。ここからいったん20mほど下って、すぐに急な岩の斜面の登り返したところにあります。山頂には数人が立つスペースしかないので、みなここで弁当を広げています。この場所はちょっと台地状になっていて、さっきの写真のような見晴らしもあるので、ゆっくりするには最高です。

 トウヤクリンドウ

 昼食を楽しみながら辺りを見るとこんな清楚な花が。トウヤクリンドウです。ちょっと陽が陰ってきたので花を閉じてしまっています。「トウヤク」は漢字で書くと「当薬」で、これは健胃剤にもなるセンブリのこと。このトウヤクリンドウも胃薬になるのだそうです。

 山頂

 景色を楽しみながらゆっくりと昼食をとった後は、あらためて山頂を目指します。正面に見えるピークです。

 絶景

 いったん下り、山頂直下の壁に取り付きます。振り返るとさっきまで弁当を広げていたところが見えました。けっこうスリリングなところでした。

 五色沼

 外輪山の中にひっそりと佇む五色沼。右が前白根山、左が五色山です。

 「白根山」

 ところどころ両手を使って登りきると、ここが真の山頂。標識には「白根山」とだけ書いてあり、「日光」の文字がありません。国土地理院の地図にも単に「白根山」と記されています。(草津白根山もやっぱり「白根山」です。)
 予定ではここから北側の尾根に沿って下り、座禅山との鞍部から七色平に戻ろうと考えていましたが、写真のとおり視界が悪いため登ってきた道を戻ることにしました。

 地形図で俯瞰してみると、溶岩ドームの分だけ日光白根山が周囲の山塊からぐんと飛び抜けているのが分かります。周囲には火山噴出物が造ったと思われる地形が広がっています。

 陽が差すと

 帰りがけに見た五色沼には陽が差していて、湖水をエメラルドグリーンからターコイズブルーに変えていました。周囲が真っ白の雪だったりすると、また違った幻想的な風景になるんでしょうね。

 下山

 ズリズリと滑りながらも一歩一歩下っていきます。だんだん膝が笑ってきたぞ。

 ネバリノギラン

 花茎に触れるとネバネバするからネバリノギラン。いわゆる普通のノギランの方が派手な印象を受けますね。

 タデの仲間  ミヤマアキノキリンソウ

 これはタデの仲間ですが、何なのかはちょっと不明。オンタデでしょうか。黄色い花はミヤマアキノキリンソウです。

 緑の中へ

 次第に緑が増えてきました。これからまた樹林帯の中に入っていきます。

 ハナニガナ  ハクサンフウロ

 登山道脇の花たちに疲れた体が癒されます。白あり黄あり紫あり。虫たちにこのままの色で見えているとは思えませんが、なのに何故これほどにカラフルなんでしょうか。不思議です。

 あ?

 帰りも自然観察をしながらゆっくりと。ロープウェイの最終は何時だったっけ?

 カニコウモリの群落

 息をのむほどの群落。こんな自然を人の手によって壊すことなく、後世に引き継いでいきたいものです。

 根曲がりのシラカバ

 この根曲がりは積雪のなせる技。きっと何十年もかかってこの形になっているんでしょうね。こんなになってもなおまっすぐに伸びようとしている。見習いたいものです、ハイ。

 森の香り、汗を冷やす風、鳥や虫の声、そして素晴らしい風景。いやー、こんな気持ちのいい野山歩きって、何回やってもやめられませんね。

 七色平

 登山道からちょっと脇道にそれて七色平へ。ここはやや乾燥が進んだ湿地。花も少なく、もう秋のような雰囲気でした。

 ハクサンチドリ  さく果

 七色平のハクサンチドリに赤紫色の花は既になく、今は果実が熟しつつありました。果実の形はユリ科の花の果実と同じ「さく果」のように見えます。「さく果」の「さく」は草冠に「朔」です。

 ウスタケ  クマシメジ(たぶん)

 今日は最期までいろんなキノコを観察できました。ウスタケは毒のあるキノコ。食べると腹痛、下痢、嘔吐で苦しむことになるそうです。右のはクマシメジだと思いまが、そうだとしたら食べられるキノコです。

 ナンタイブシ

 タカネトリカブトの亜種、ナンタイブシと思われます。開花直前ですね。

 午後4時前、たっぷり楽しんだ日光白根山を後にして、丸沼高原に向かって下りていきます。上の写真は山頂駅を出発した直後。下りのロープウェイから振り返って撮った写真です。さあ一気に550m下って、ドリーム号の待つ山麓駅へ。
 
 ところでこの日はお盆まっただ中。沼田ICで関越道に乗ったとたんに大渋滞でじわりじわりとしか動きません。しばらくすると「渋川伊香保IC付近で事故。渋滞を抜けるのに2時間」と表示が出ていましたが、こういう情報は高速入口に出しておいてほしいものです、ほんと。次の昭和ICで高速を下りて平行する国道17号へ向かいましたが、同じような考えの方は大勢いて、こっちも大渋滞。結局事故現場を迂回して再び関越道に乗ったのは2時間後。どうも裏目裏目に出ているようで、徒労感に苛まれました。そして東京に着いたのは夜の11時を回っていました。これは修行か。