高原の家七塚 〜自然探検隊 06冬(前編)〜


 

【広島県庄原市 平成18年2月11日(土)】
 
 本年度4回目の七塚原自然探検隊です。去年は秋と冬の2回お手伝いしましたが、今年度は春、夏、秋とパスして、今回初めてのお手伝いです。
 七塚原自然探検隊とは小学校中・高学年を対象とした自然体験プログラムで、高原の家七塚が主催する事業のうちの一つです。今回は三次市、庄原市から18人の子供たちが参加。スタッフはNACS−Jの自然観察指導員6名(このサイトでもちょくちょく顔を出す面々)と、あと、お隣にある広島県立大学の学生4人です。

 高原の家七塚

 高原の家七塚は庄原市七塚原(住居表示上は三次市)にあります。広島からは約80q。庄原市といえば県内でも雪の多いところです。今週は広島市内でも月、火、水と雪が降ったので、きっと庄原あたりは銀世界だろうと思っていました。
 午前7時に広島を発って国道54号線を北上し、高原の家に着いたのは2時間後のちょうど9時。途中の道路には雪はなく、スイスイでした。

 スタッフミーティング

 高原の家の職員の方々に挨拶して、さっそくスタッフのミーティングです。盛りだくさんのプログラムをいかにスムースに進めるか、安全を確保しつつ子供たちに様々な体験をさせるにはどうするか、過去の経験を踏まえて手際よく打合せをしていきました。

 オリエンテーション

 やがてお家の人に車で送ってもらって探検隊に参加する子供たちが集まってきました。
 10時、研修室でオリエンテーション。これまでに見た顔も何人かいるようです。今回は参加者18人を二組に分けて、1班にはMさんとTさんが、2班にはM女史とyamanekoがそれぞれサポートすることに。これから2日間、いっしょに楽しい時間を過ごして、子供たちにいろんな体験をしてもらいたいと思います。ついでにyamaneko自身も新しい発見と感動を得て帰れればラッキーです。

 富良野?

 スタッフ紹介の後、子供たちの緊張をほぐすためにジャンケンゲームでアイスブレイクを。
 その後、最初のプログラムの「野鳥の観察」です。まずは双眼鏡の使い方の練習から。外に出てみると、高原の家の正面にある牧場の丘が白く輝いていました。ここだけ見ると北の国からのワンシーンみたいです。

 野鳥の観察

 聞いたところによると、今年は野山に鳥の姿が少ないそうです。あまり気にしていませんでしたが、そう言われてみればといった感じです。はたして今日はどんな鳥が見られるでしょうか。
 高原の家の前にある駐車場をスタートして近所の農業用溜め池までを往復するコース。さっそくセグロセキレイが屋根のてっぺんで鳴いているのを見つけました。体育館裏の林の中からはコゲラのギーギーといった鳴き声が聞こえてきます。ため池にはマガモとカワウ。双眼鏡を使って彼らののんびりとした姿をたっぷりと観賞しました。

 シナマンサク

 道路脇にシナマンサクの木がありました。枝中に黄色い花をたくさん付けて、今がちょうど盛りといったところ。もともとは中国原産で、日本産のマンサク類に比して葉や花は大きめです。花は葉の展開する前に咲きますが、そのときにしばしば茶色になった前年の葉がぶら下がっています。

 県立広島大学

 池の向こうには県立広島大学があります。県立の3大学(県立女子大学(広島市)、広島県立大学(庄原市)、県立保健福祉大学(三原市))が昨年春に統合し新たに開学しました。それにしてもこのロケーション。牧歌的な環境の中で勉学に専念できます。誘惑などという言葉はここには存在しません。
 
 1時間ほど観察して研修室に戻ってきました。みんなで「鳥合わせ」です。結局今日観察することができたのは、セグロセキレイ、ヒヨドリ、シジュウカラ、ハシブトカラス、カシラダカ、マガモ、カワウ、スズメ、キクイタダキ、ムクドリの10種。姿は見ることができなかったものの鳴き声が聞けたのが、コゲラ、ウグイス、エナガの3種。確かに鳥の影は濃いとはいえませんでした。

 「何にしようかな」

 昼食をはさんで、午後も野外プログラムが3本あります。ちょっとハードなようでもありますが、子供たちの集中力の持続時間を考えると1本あたり長くても1時間半といったところです。
 まずは「里山の探検」。自然の中のおもしろいもの探しです。子供たちそれぞれに厚紙で作った額縁のようなものを配って、それを持って野原に出ていきます。そして、自分がおもしろいと思ったもの、不思議に思ったものを見つけたら、目印としてその厚紙を掛けておきます。ひととおり掛け終わったら、今度はみんなでそれを見て回るというプログラム。自分が掛けたもののところにやって来たら、何故それをおもしろいと思ったのか、不思議と思ったのかをみんなに説明してもらうのです。

 イタヤカエデの果実

 子供たちが散らばった雪の野原のあちこちから「これなんだー?」とか「ねえ、こっちきてみてー」とかの声が聞こえてきます。yamanekoが掛けたのはイタヤカエデの果実。この果実がヘリコプターのように回りながら落ちていく様子を子供たちに紹介しようと思います。

 「ボクが掛けたのは…」

 さあ、今度はみんなが掛けたものを見て回ります。
 赤い木の実、雪の上に残された鳥の足跡、木の幹をはい上がる蔦、古い切り株に生えている別の若い木、筆の先のようなホオノキの葉芽、などなど。子供たちの興味の対象の多様さにはいつも驚かされます。ひょっとしたら視線の高さが違うと別の世界が見えるということなのかもしれません。

 かまくら作り

 次のプログラムは「雪と遊ぼう」。かまくら作りです。
 もともと体育館の屋根からずり落ちてきた雪を使って(既に体育館の屋根の上には雪はないので安全)、子供と大人が一緒になって作ります。降ってから日にちが経っているので雪質はザラメ状。それでもなんとか積み上げて、1時間ほどで中に小さな空間を掘りあげました。体育館の軒下に積み上がった雪を崩す者、その雪を一輪車で運ぶ者、かまくらの上に上がって雪を積み上げる者。誰が指示するわけでもないのに自然と役割分担ができてきました。

 穴空け  駒の打ち込み

 午後のプログラムの最後は「椎茸の種付けに挑戦」。彼らは決して都会っ子というわけではありませんが、それでも椎茸を栽培する過程を見たことのある子はほとんどいないのではないでしょうか。
 椎茸の榾(ほだ)木に電気ドリルで穴をあけ、そこに椎茸菌をまぶした「駒」(直径1p、高さ1.5pの円柱形の木片)を詰め込んでいく作業。まずはスタッフが見本を見せて、後はできるだけ子供たち自らが体験できるようにしました。もちろん安全の確保は怠りません。
 穴を開ける作業は電気ドリルとはいえ結構力がいる作業。スタッフが榾木をしっかりと押さえておいて、子供は真上からまっすぐに穴を空けます。駒を打ち込むのは木製の棍棒で。クヌギの木を叩くトンカントンカンという音が小気味良く響いていました。
 椎茸ができるのは来年の秋頃。荷物になるのを厭わなければ持ち帰ってもかまわないので、うまく栽培すれば自家製の椎茸を楽しむことができるかもしれません。
 
 曇りがちの天気のせいか、早くも夕暮れが近づいてきました。戻って晩ご飯を食べて、少し身体を休めたいと思います。

 凧の絵描き

 夜のプログラムは「クラフト」です。
 最初は明日行う凧作りの準備として、障子紙(縦58.5p、横43p)にサインペンで絵を描きます。デザインはまったく自由なので、それぞれが思い思いの絵を描いています。それにしても、こういう作業をしているときの子供は本当に生き生きとしていますね。yamanekoも1枚もらって描いてみることにしました。

 箸作り  器作り

 次は竹を使って箸と器を作ります。これは明日作るうどんを食べるときに使います。器は釜揚げうどんのつゆを入れるためのもので、直径10p程度の竹を節のところで輪切りにし、鉈で表皮部分をそぎ落としていきます。仕上げにサンドペーパーをかけて角を落とせばできあがり。また、箸の方は、1p角、長さ30センチほどの大きさに小割にした竹を小刀で削っていきます。先の方にいくにしたがって細くするのがベストなのですが、なにしろ力がいる作業なので子供たちにしてみればなかなかうまくいかないようです。中には鉛筆のように先端だけ削ったものも。それでも子供たちはみな満足げでした。

 yamaneko作

 yamanekoも作ってみました。やり始めるとついのめり込んでしまいます。器は厚さ1センチほどある竹を鉈でそぎ落として薄く仕上げていくのが、また、箸の方は削りすぎに注意しながら先端に向かってなめらかに細くしていくのが、なかなか難しいのです。
 
 さて、8時半になりました。子供たちの作業があらかた終了したところで今日のプログラムは終了。後はお風呂に入って寝るだけですが、子供たちにとっては宿泊室に入ってからがまた楽しいのです。なかなか寝てはくれません。以前は12時過ぎてもまだ話し声が聞こえていたこともありました。
 一方スタッフはこれから更に明日の準備を行います。学生スタッフも交えて、凧作りとうどん作りを一からシミュレートしてみるのです。ちゃんとした完成品を作り上げるのはもちろんのこと、道具や材料をどのように使い回せば効率的に進められるか、衛生面、安全面で問題点はないか、スタッフ同士の役割分担は適切か、などなど。
 そうこうするうちに夜は更け時刻は12時になろうとしていました。明日が凧揚げに適した天気であることを祈りつつ我々も宿泊室に入ることにしました。(意外なことに子供たちは既に寝ていたようです。)