武蔵丘陵森林公園 〜静かな静かな里山の秋(後編)〜
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(後編) |
【埼玉県 滑川町 令和7年11月20日(木)】
♪しーずかーな、しーずかなー、さーとのーあーきー。そう、静かな静かな「里山」の秋を楽しむ野山歩き。後編です。(前編はこちら)
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Kashmir3D |
今日は武蔵丘陵森林公園の南側を散策します。10時30分に公園南口からスタートし、展望台、粟谷沼と巡って、野草コースの手前までやって来ました。時刻は12時前です。
| 東屋 |
道の右手に東屋が現れました。マップによるとこの付近に野草コースの入口があるはずです。
| 野草コース南入口 |
ほどなく左手に野草コースの南入り口が。ここを入っていきます。野草コースとは、園路沿いにこの辺りの丘陵地に自生するような植物を植栽している場所です。普通に園路を歩いているよりも高頻度で花に出会うことができます。ただ、この時期になるとその数は少なくなるとは思いますが。
| ノコンギク |
これはノコンギク。漢字では「野紺菊」と書きます。ここのものは紺色というより紫色か。yamanekoがフィールドとしている小山内裏公園でも見かけますが、色は薄く、かろうじて青味を感じるくらいなんですよね。それだけこの花の色のバリエーション幅は大きいということです。
| キチジョウソウ |
キチジョウソウです。この花が咲くと縁起の良いことが起こるということで、吉祥の草という名が付いたそうです。まあ、普通に毎年咲くので毎年縁起の良いことが各地で発生しているということになります。その割には世の中良くならないですが。
明るい園路を歩いていきます。こんな小径をのんびり歩けるなんて、なかなか贅沢なことです。
平成の名作ドラマ「僕の生きる道」で主人公が小学生の時に文集に書いた(という設定)「将来の夢」が今も心に残っています。「ぼくは幸せな人になりたい。幸せな人とは悔いのない人生を送っている人のことだ。」 この年になると、これから生きていく限られた時間は悔いのないよう送りたいと切に思います(これまでの人生もそんなに悔いが残っているわけではないですが。)。その意味で、こんなふうにして時間を送れることは幸せなことだとしみじみ思います。
| ムサシアブミ |
ムサシアブミです。大ぶりの葉は枯れて倒れていますが、茎の先端の果実はちょうど熟し始めたところです。ムサシアブミは漢字で「武蔵鐙」と書きます。「武蔵」は坂東武者を意味しています。鐙は馬具の一つ。馬にまたがった人間の足を置く器具で、スリッパの前半分みたいな形をしています。ムサシアブミはサトイモ科で、花を守る仏炎苞という器官があるのですが、その形が鐙に似ていることから名が付いたとのことです。
| リュウノウギク |
キク科のうちキク属のキクは、いかにも菊っぽいキクです。リュウノウギクもそのひとつ。竜脳のような香りがあるのが名の由来だそうですが、鼻炎歴30年で香り音痴のyamanekoにはよく分かりません。
| ヤクシソウ |
ヤクシソウもキク科ですが、こちらはオニタビラコ属。リュウノウギクとは雰囲気が違いますね。
夏場はもうちょっと薄暗い森だったのかもしれませんが、落葉が進んで地面にまで陽が届く明るい森になっています。夏は木陰、冬は日差し。森って偉いですね。
| リンドウ |
リンドウは開花の時期を迎えても陽が当たらないと開きません。雨などから大切な花粉を守っているのだと考えるのですが、違うか? 今日は明るい陽を浴びて精一杯開いています。
園路は谷戸に向かって下っていきます。
| ヤブラン |
時刻はまだ12時20分ですが、この時期の日差しは角度が浅いので、なんだか夕陽のような感じです。その光に輝くヤブランの種子。漆黒です。
| カシワバハグマ |
カシワバハグマ。キク科コウヤボウキ属です。名前のカシワバは柏の葉のこと。形は似ているとは言い難いですが、大ぶりであることはカシワに共通しています。羽熊は仏具の払子に使われるヤクの尾の毛のこと。花が羽熊に似ていると言いたいのでしょうが、はっきり言って似ていません。
| サルトリイバラ |
サルトリイバラの実です。一見美味しそうですが、中はスカスカで見かけ倒しです。yamanekoの故郷ではサルトリイバラの葉で柏餅を作っていました。全国的に見ると、カシワの葉を用いる地域よりも広範囲で使われているようです。
| 分山沼 |
また溜池が現れました。分山沼というのだそうです。水鳥が数羽、すいすい泳いでいました。
| フジバカマ |
畑みたいな場所でフジバカマがたくさん育てられていました。花壇にしては大規模でしたが、回遊式といったようなことでしょうか。ちなみにフジバカマはキク科フジバカマ属です。キク科は植物界の一大派閥なんですね。
| ホトトギス |
ホトトギスが咲いていました。結構遅くまで頑張っています。わが家のホトトギスは1か月前に散ってしまいました。
| コウヤボウキ |
枝の先端に線香花火のような頭花を1個付けるのが特徴のコウヤボウキ。キク科では珍しい木本の植物です。高野山の僧侶がこの枝を束ねて箒に使っていたという言い伝えから付いた名だそうです。さっきのカシワバハグマの花はこのコウヤボウキの花に似ています。
| 野草コース北入口 |
そうこうするうちに野草コースの北入口に到着しました。時刻は12時40分です。ここから南入口に向かって戻っていきます。
| あざみくぼ橋 |
さっきの東屋のところから丘を下っていくうちにちょっと道が分からなくなりそうでしたが、「あざみくぼ橋」に出たので、現在地を把握することができました。多摩丘陵にも「〇〇久保(窪)」といった地名があちこちにあり、大抵浅い谷のような地形になっているところに名付けられています。
| アワコガネギク |
橋を渡ってその先の丘に上ります。これはアワコガネギクですね。頭花が集まる様子がまるで泡を吹いたようにモコモコしているとのネーミングです。コガネは黄色いから「黄金」なんでしょう。
| ヤクシソウ |
その隣にはヤクシソウ。頭花の舌状花が短冊状で、アワコガネギクとは花の印象が異なります。
人っ子一人通らない園路。まるで奥山を歩いているかのようです。向こうからクマが現れたら…。まあ、ここではそれはないか。
| 西田沼 |
ちょっと大きめの溜池に出ました。西田沼です。岸辺の紅葉が見事で、しばらく立ち尽くしました。この景色を独り占めしていいんですかね。
細長い西田沼の岸辺に沿って歩いていきます。そろそろ腹が減ってきた感じです。
| マガモ |
マガモ。首から上が緑色の金属光沢を帯びています。嘴は黄色で、先端だけがちょっと黒色。そして白いチョーカーと、なかなかの洒落者です。
| 日本庭園 |
いつの間にか南口に近づいてきました。ここは日本庭園とのことですが、モミジは植えられているものの、全体的に普通の公園っぽい印象です。
| 南入口 |
1時15分、南口が見えてきました。無事に戻ってこられました(公園だし当たり前か)。
| 駐車場 |
さて、この近くで昼ご飯を食べられるところを探しましょうか。スマホのグーグルマップで探して、その場所を車のナビに転送できるので、目的地設定がすこぶる楽です。昔は冊子のロードマップで道順を頭に入れてから運転したものですが。
今日は静かな静かな野山歩きができました。こういう時間を持てることが自分にとって本当に幸せなことだと再確認しました。ありがたいことです。
それにしてもクマ騒動、早く収まらないかな。