もみのき森林公園 〜キノコ観察会〜


 

【広島県廿日市市 平成17年10月23日(日)】
 
 10月の定例観察会はもみのき森林公園でキノコの観察です。キノコをメインにした観察会は2年ぶり。前回は福富町(現東広島市)の「県央の森公園」でした。
 今回は「五感を使った観察」という趣旨(?)から、キノコを味わうという企画が中心です。

 もみのき森林公園
 バーベキュー広場

 朝からどんよりとした空模様。今日はマイクロバスの添乗員なのでまずは広島駅北口に向かいます。
 午前8時に出発。途中でも何人かをピックアップしてもみのき森林公園へ。現地は小雨が降っていました。寒い!ビックリするほど寒いです。今日の天気は回復傾向で午後には晴れ間も出るとのことだったので、寒さ対策は上下のインナーとレインウエアのみ。失敗しました。

 開会

 午前9時30分。雨を避けて東屋の中で開会です。
 今日のリーダーはキノコに詳しい前田さん。今回の五感を使った観察会のために昨日数人のスタッフと観察材料の調達をしてくれていました。昨日も寒かったとのことで、感謝です。あと、広島きのこ同好会からきのこ鑑定士の高村さんと日野さんが助っ人として参加。参加者の安全を確保するためにも心強い限りです。

 森の中へ

 開会のレクチャーが終わった後、みんな小グループに分かれて森に入ります。yamanekoはスタッフ仲間の六重部さん、舛田さんとともにキノコ鍋の準備です。ちなみに鍋の具は昨日採集して鑑定士の方にお墨付きをいただいたもの。中にはスーパーで採集してきたシメジなどもありましたが。
 野菜を刻んだりするのに水仕事をしましたが、湧き水なのかむしろ暖かく感じました。それほど気温が低かったのです。

 美味そう

 やがて大鍋に2杯、美味そうなキノコ鍋ができました。辺りにいい香りが広がってきます。
 ここで少し手が空いたので、yamanekoも森に入ってみることにしました。

 クマノミズキ

 わずかに青空が出てきました。でも雲がすごいスピードで動いているので、この青空もすぐに厚い雲に掻き消されてしまうでしょう。
 枝先に赤い珊瑚のようなものをたくさん付けているのはクマノミズキ。赤く見えるのは花序で、初夏、白い花を付ける頃には緑色をしていますが、果実を実らせる秋には赤く色づきます。これは鳥に発見されやすいようにするためだとか。

 ウメガサソウ(果実)

 薄暗い林床でウメガサソウがさく果を実らせていました。この花は常緑の多年草なので、秋が深まったこの時期にも青々とした葉を付けています。花は夏、梅雨明け前あたりに咲かせます。薄緑がかった白い色の小さな花をうつむき加減に付ける控え目な花です。

 ムラサキシキブ

 林の縁にはムラサキシキブ。よく庭木として用いられています。花も紫なら実も紫。数ある紫色の植物の中で「紫式部」の名をもらうことができたのは、その輝くような濃い紫色の実があったればこそだと思います。でも、この実を見ると梅仁丹を思い出すのは自分だけ?

 ???  エセオリミキ

 林の中の朽ち木や枯れ葉の間からキノコが顔を出しています。もちろん名前は分かりません。(キッパリ)
 普段の観察会ではつい見過ごしてしまうキノコ達が、今日は主役です。

 成果

 途中でリーダーの前田さんに出会ったので、籠の中を見せてもらいました。それこそ名も知れぬキノコがわんさと入っていました。全部毒キノコに見えてしまうのは何故?(無知であるが故?)

 紅葉

 昼前になって参加者がパラパラと戻ってきました。みんな体が冷え切っているので、まずはキノコ鍋で昼食です。ここもみのき森林公園にはその名のごとくモミの林があります。モミに生えるキノコにも特徴があるのだそうで、今日作ったキノコ鍋にたくさん入っていたアカモミタケというオレンジ色のキノコもその一つ。けっこう歯ごたえのある食感です。

 画:鑑定士の日野さん
  (注)上のイラストの中には毒のものも含まれています

 以下は前田さんが用意してくれた今回の資料からの抜粋です。
 
 キノコは樹木と違い、光合成で養分をつくり出すことはできません。その代わり、光合成を行っている樹木と養分のやりとりをしたり(菌根菌)、落ち葉や倒木などを栄養にしたり(腐生菌)して生活しています。
 
【菌根菌】
 菌根菌とは、植物の根に菌根を形成するキノコのことです。温帯林や北方林を構成するほとんどの樹木の根には菌根が形成されているといわれています。菌根菌は植物とお互いに助け合って共同生活をしており、共生菌とも呼ばれています。菌根菌の菌糸は、植物の根の表面をすっぽりと覆い、土から吸収した水分、窒素、リンなどを植物に与えています。一方、植物は、光合成産物(炭水化物)などの栄養分を菌根菌に与えています。菌根菌と植物は互いに相手を選びあう場合が多いため、樹種によって林内に発生するきのこもほぼ限定されます。通常一つの樹種で30〜40種の菌と共生しているそうです。
 
【腐生菌】
 腐生菌とは、植物や動物などの遺体を分解して栄養をとり、キノコを発生させる菌類のことです。腐生菌は枯れ木や落ち葉を簡単な物質に分解することによって森の物質のリサイクルに寄与しています。
 
【寄生菌】
 寄生菌とは、生きた動植物などに寄生して寄主から栄養をとり、キノコを発生させる菌類のことです。ナラタケは生きた樹木、冬虫夏草は昆虫から栄養をとり、寄生された方はやがて死にます。寄生菌は森の中で老いたり弱ったりした樹木を間引く役割をしています。

 鑑定スタート

 昼食後は、午前中にみんなが採集してきたキノコを並べて、鑑定士の方が名前を書いた紙を置いていきます。わずか2時間あまりの間に30種以上のキノコが採集されていました。キノコの場合は地上部の子実体(いわゆるキノコの部分)を採っても、土や落ち葉の中に菌糸体(白い綿のようなもの)が残っていさえすれば、いずれ湿度、温度などの条件が整ったときにまた子実体を成長させるのです。
 いつもは「採らずに観察」がモットーですが、キノコの観察の場合は採ってもOK。(もちろん意味もなく採ることはNGです。)

 自然界の循環

 最後は加藤代表から自然界の循環に菌類が果たす役割についてレクチャーがありました。
 無機物から養分を作り出すことができる「植物」は生産者、自らは養分を作ることができず植物を食べることにより養分を取り入れる「動物」は消費者と位置づけられ、その両者を分解し無機物(水、リン、窒素など)に還元する役割を「菌類」が負っています。分解者です。そして、その無機物や、動物が排出した二酸化炭素などをもとに植物が養分を作り出す…。自然界はみごとに循環しているという内容の話でした。
 
 私たち人間も消費者として自然界の循環に組み込まれています。人間を除く動物は呼吸によってのみ二酸化炭素を排出していますが、人間は呼吸に加え経済活動によって膨大な二酸化炭素を排出しています。産業革命から200年。以来その排出量は右肩上がりどころか右肩が脱臼して靱帯が伸びきってしまうほど増え続けています。しかも、生産者をどんどん伐採して。これじゃいくら菌類ががんばっても追いつかないかもしれません。そうなる前になんとかしなければなりませんね。
 
 (以下、地球のつぶやき)
 「まぁ、いかに人間が傍若無人の限りを尽くしても百万年単位で考えればワシはその傷を修復してしまうわい。せいぜい人間の種としての寿命を自ら数万年短くしてしまうくらいのことじゃ。でも、それまでにそのとばっちりを受けて絶滅してしまう数多くの生物のことを考えるとそんなことは言ってられんがのう。」