瑞牆山 〜絶景の岩峰に登る(後編)〜


 

 (後編)

【山梨県 北杜市 平成23年6月4日(土)】
 
 瑞牆山の後編です。(前編はこちら


Kashmir 3D

 瑞牆山荘を出発し、富士見平小屋を経て、天鳥川を渡り、瑞牆山本体の斜面にとりつきました。傾斜はどんどんきつくなってきます。

 ところどころ張られているロープを補助的に使いながら岩の道を登っていきます。

 キバナノコマノツメ

 タカネスミレの仲間、キバナノコマノツメです。スミレでありながら「スミレ」と名が付かないスミレは、このキバナノコマノツメだけだそうです。花の大きさは1センチくらい。かなり小さいです。

 アズマシャクナゲ

 10時、小休止。今回のコース上で唯一咲いていたアズマシャクナゲです。いい色合いですね。

 松の木が岩場に根を張り巡らせています。表土も少なく過酷な環境で生きているんですね。

 大ヤスリ岩

 10時25分、大ヤスリ岩の直下にやって来ました。天に向かってまっすぐに屹立するその姿。圧倒的な大きさに周囲の空間が歪んでいるのかと感じるほどです。

 傾斜が更にきつくなってきて、やや渋滞気味。上がった息を整えるのには好都合ですが。

 いつの間にか目の高さに大ヤスリ岩のてっぺんが。一歩一歩は小さくても続けていればやがて高いところに到達するんだと、今更なことをしみじみと感じてしまうこの風景。遠くに見えている雪渓の山は南アルプスですね。

 10時45分、山頂直下のきれっとに到着。V字の切れ目のようになっていて、ここから右の山体の裏側に回り込みます。

 山頂直下

 いままで登ってきた面とは反対側に回り込んで最後の岩登りです。ここはロープがなければ登れません。

 木立の向こうから賑やかな人の声が聞こえます。いよいよ山頂です。

 10時55分、山頂に到着到着しました。急に天井が抜けた感じで、素晴らしい開放感です。

 山頂は、北面が写真のように傾斜していて、南面は切り立った崖になっています。写真の左に写っている人は結構縁に近いところに座っています。もちろん柵などは何もなく、落ちたら一巻の終わりです。
 さて、まずは眺望を楽しみましょうか。

 西方向

 西から北西にかけて刃物を置いたように居並んでいるのは八ヶ岳連山です。ちょっと声も出ませんね、この圧倒的な風景には。最も高い赤岳を中心に、南に権現岳、編笠岳、北に横岳、硫黄岳、天狗岳などが連なっています。このパノラマを見ただけで、もう既に元が取れたような気がしました。
 赤岳までの直線距離は約20q。その麓は清里や野辺山になります。

 大ヤスリ岩

 目を左に転じると、眼下に大ヤスリ岩が。すぐ先が断崖なのでちょっと背筋がゾクゾクします。これもすごい風景ですね。今日はあの麓の谷から登ってきたのです。

 南西方向

 大ヤスリ岩から視線を上げると、遙か遠くに南アルプスが望めました。写真中央のピークが富士山に次ぐ高峰、北岳です。その右手には雪に覆われた千丈ヶ岳に、どっしりとした構えの甲斐駒ヶ岳。北岳のすぐ左には間ノ岳。さらに農鳥岳、雲の向こうに塩見岳などと続いていきます。
 北岳までの直線距離は約40q。写真中央の平地は今朝高速を下りた須玉ICがある辺りでしょう。

 南方向

 そして南の方向には富士山です。まさに日本人の(いあや外国の方にも)心に響く風景で、特に解説も必要ないでしょう。ちなみに、富士山までは直線距離にして約60qあります。

 山頂には平坦なところはなく、みんな写真のように石の斜面に腰を下ろしています。長さ20m、幅5mくらいの広さの山頂にざっと5、60人くらいの人がいました。

 南東方向

 南東方向には金峰山が。ここよりも300m以上高い標高2599mです。山頂には巨大な五丈岩が。山頂によくあるモニュメントのようにも見えますが、ここから形まではっきりと見えるということは、相当な大きさです。これが自然の造形というのですから驚きです。

 

 一通り展望を楽しんでから山頂の北側直下の森の中に入って食事にすることに。ここなら高いところが苦手なyamanekoでも安心して食事をとることができます。

 

 昼食は定番のカップなしカップヌードル。今日はまた格別に美味いです。
 
 昼食後も再び山頂に戻り、地図と双眼鏡を片手に眺望を楽しみました。そして11時40分、なかなか去りがたいけれど、そろそろ下りることにしました。まだどんどん人が上がってくるし。

 復路はただひたすら下っていきます。
 ふと見ると、大ヤスリ岩の岩肌になにかうごめくものが。 !!! ちょっと、あんた何してんの! 見ているだけでクラクラしてきます。とにかく無事の帰還を祈ってます。

 タケシマラン

 黙々と下る登山道でふと感じる視線。顔を上げるとタケシマランの小さな花と目が合いました。つい見逃してしまいそうな地味さですが、何か向こうから呼びかけられたような感じがしたんです。いや、ほんと。

 タケシマラン

 「ラン」と名が付いていますが、ユリの仲間です。花被片が反り返っているのが涼しそうで印象的ですね。果実はこんな感じです。

 アズマシャクナゲ

 輝いてますね。もうじき咲きそうです。

 12時45分、桃太郎岩のところに到着(復路はほとんど写真がありません。)。下山開始から約1時間。ここでちょっと休憩です。
 ちょっと面白い蕾をぶら下げている木がありましたが、何だかちょっと思い当たりません。これ何だっけ?

 

 天鳥川を渡って、対岸の斜面を登ります。ここもなかなかの急斜面です。

 コミヤマカタバミ

 12時55分、沢からの斜面を登り切りました。きつかったです。後は山腹を平行移動して、富士見平小屋に出たら瑞牆山荘に向かって下るのみです。

 富士見平小屋

 1時10分、富士見平小屋に到着。ここでも少し休憩しましょう。足の筋肉が張ってきてますから。

 

 1時25分、最初の尾根まで下りてきました。日射しが真上から降り注ぎ、今朝とはずいぶん違う印象を受けます。
 さあ、ここは休憩なしで下りましょう。

 

 林道を越えて、なおも下っていきます。ここまで来れば瑞牆山荘はあとわずかです。楽しかった今日の山歩きを思い返しながら、でも足下には注意を払って慎重に行きましょう。ここでケガでもしたら楽しい思い出も台無しですからね。

 

 ときおり歩みを止めて、頭上を見上げたりしてみます。緑のステンドグラスを透して降り注ぐ光。梅雨の晴れ間だからこそ、こんなに瑞々しいシャワーを浴びることができるんですね。あー、今日は引っ張ってでも妻を連れてきてやれば良かった。妻は今頃家で片付けをしていると思います。

 

 1時40分、瑞牆山荘に到着しました。ケガもなく無事に下山できたことに感謝です。
 いやあ、今日のリフレッシュ度は相当なものでした。これなら向こう2週間くらい梅雨で雨が降り続いても、ストレスなしでやっていける気がします(といいつつ、すぐに野山に出かけたくなるでしょうが。)。