宮島・大元公園〜室浜 〜定例観察会〜


 

【広島県宮島町 平成14年7月14日(日)】
 
 7月の定例観察会。
 天気予報は雨でしたが、あにはからんや結局真夏の陽射しの一日でした。

 今日のテーマは、@大元公園(宮島水族館の100m先)から広島大学自然植物実験所のある下室浜までを歩いて、宮島特有の自然景観をミクロにマクロに観察する、A全国一斉観察会(日本自然保護協会主催)の一環として海辺を対象とした環境評価、です。

 大元公園に集合したのは約70人。この時点ですでに汗だく。
 目的地までは4.5q。動植物を見ながら、景色を見ながら、ゴミを拾いながら歩けばたいして長い距離ではありません。

 花の少ない季節ですが、木本を中心としていくつか観察できました。

 ホルトノキ(植栽)

 ホルトノキの名前の由来は「ポルトガルの木」。本来はオリーブのことでしたが、かの平賀源内がこの木をオリーブと勘違いしたことから、ホルトの木と呼ばれるようになったそうです。

 アカメガシワ

 これは雌花です。雄の木と雌の木があるので、この株は雌の木ということになります。新芽が赤いことからアカメですが、カシワの仲間ではありません。

 ミミズバイ

 宮島には海抜数メートルのところに暖温帯性針葉樹のモミの大木が多数生育していて、これ自体かなり珍しいことらしいのですが、そのまわりに南方系高山植物のミミズバイが群生していて、こんな風景はここ宮島でしか見られないものだそうです。
 ハイノキ科の木の材はアルミニウムの含有量が他より多く、灰が染色の媒染剤として利用されます。
 しかし何で「ミミズ」なの?

 シャシャンボ

 「小小ん坊」 小さな果実をたくさんつけることからこの名がついたと言われています。けっこう美味しいですよ。

 5つのグループに分かれて海辺の自然度調べを行いました。「岸のまわりのようす」「水ぎわのようす」「岸のまわりの植物」「水際の動物」「ごみのようす」「水のよごれ」の5項目について点数をつけていきます。
 この環境評価は全国規模で行われ、そのデータは日本自然保護協会に集約されて、やがて現場の自然観察指導員にもフィードバックされます。
 

 

 波が到達するラインから陸側の砂浜にはハマゴウの群落が広がっていました。
 先日、乾燥した実を中に入れた手作り匂い袋をプレゼントしてもらいました。なんとも”粋”ですよね。

 

 宮島を象徴する景色は照葉樹林。その林床には光はとどかず植物はほとんど目につきません。
 光を求めてはい上がるつる性植物が多いのもうなづけます。

 ウラジロマタタビ
 ※花はこちら
 サンカクヅル
 ハスノハカズラ
 ※これははい上がりません。


 宮島にシカが多いのはご存じのとおりです。彼らは宮島が島になる前から住み着いていたのだそうです。(宮島にはサルもたくさんいますが、こちらは人為的に持ち込まれたものです。)
 今、このシカたちに災いがふりかかっています。
 宮島が観光地であるがゆえに過度に人間との接触をもつこととなり、人間から与えられた餌の味を覚えたシカは匂いに惹かれて放置されたビニールゴミなどを食べてしまうのだそうです。結果、シカの胃の中は絡まりあったビニールゴミで膨れ上がり、やがて衰弱して死に至ります。
 ゴミを厳重に管理すること、餌を与えないことを徹底すれば解決できる問題ですが、年間何十万人と訪れる観光客が相手となると簡単にはいかないでしょう。

 ハマゴウの中に佇むシカ
 「お前はだいじょうぶか?」