三毳山 〜冬晴れの尾根歩き(前編)〜


 

 (前編)

【栃木県 栃木市 令和4年12月10日(土)】
 
 今年もいつの間にか師走になっていました。早いです。そう思うとなんだか急に気忙しくなってくるような気がします。
 ところで、「師走」の語源として、師(僧侶)が走り回るほど忙しい時期という話をよく聞きますが、それが俗説であって確かな語源は分かっていないということを最近知りました。今まで散々「師が走るくらいだからね」とか言ってきたのに。そもそも「師走」の漢字自体も当て字なのだそうです。よく考えると、暮れに僧侶が忙しくなるとはどういうことか。仏教行事のことに無知なので、そこからしてよく分かりません。
 とはいえ、世間が忙しかろうがyamanekoとしては野山に出かけるわけで、今回は栃木県南部にある三毳山(みかもやま)に行ってみることにしました。この山は春にはカタクリが咲くことで有名。時期になると観光バスもやって来るほど賑わうと聞きます。でも、この季節は静かな野山歩きが楽しめるでしょう。
 
                       
 
 午前7時時過ぎ、ドリーム号Vで自宅を出発。圏央道を外回り(反時計回り)で北に向かい、久喜白岡JCTで東北道へ。栃木県に入ってすぐの佐野藤岡ICを下りると、今日のベースとなる「みかも山公園」南口駐車場はすぐそこです。
 

 駐車場から

 9時20分、到着。車を降りてこれから登る三毳山を見上げます。山はもうすっかり褐色になっていますね。

 Kashmir3D

 今日のルートは、南北に細長い三毳山の南端部から登り始め、終始稜線を歩きます。途中、中岳、三毳山(青竜ヶ岳)の2つのピークを踏んで、北端部のカタクリの里に下山します。下山後は県道を歩いてバス停に向かい、コミュニティバスで道の駅に戻ってくるというものです。

 三毳神社

 隣接する道の駅で飲み物などを買って、準備はOKです。とりあえず登山口となる三毳神社に移動しました。



 そこの境内でラジオ体操をさせてもらい、当座のエネルギー補給として道の駅で買った鯛焼きを食しました。味は…作り置き感満点でした。まあ、朝早かったですからね。

 まっすぐ林の中へ

 9時50分、スタート。まずは正面のピークの上にある三毳神社奥社に向かってまっすぐに登っていきます。地図を見ると文字どおりの直登のようです。
 三毳山の南側3分の2は県立の「みかも山公園」のエリア。写真の左手にカーブする道は公園内を周回する道路で、フラワートレインが運行していました(一般の車は通行不可)。

 静かな林

 林の中に入って振り返るとこんな感じ。さっきまでの車の音はなくなり、鳥の声と自分が踏む落ち葉の音だけになりました。



 急な坂道を登っていると、目の前を横切る道路が現れました。さっき並走していた園内を周回する道路です。この道路、元は山上に電波塔を建てるために取り付けたものとのことです。この道を越えて更に真っ直ぐ。今度は階段が続いています。



 少し登って振り返ると、木立の向こうに周回道路が見下ろせました。この直登ルートを避けて周回道路を歩いている人もいました。



 階段はちょっとだけで、途中からまた山道になりました。落ち葉で足元が滑りやすいです。



 おっ、また車道だ。ようやく奧社に着いたか。



 でがーん!周回道路に上がってみると、その先にも更に傾斜を増した階段が続いていました。今度はびっちり全部階段です。

 三毳神社奥社

 スタートからいきなりの急登に汗すること20分、三毳神社の奧社に到着しました。標高差にして150mを一気に登ったことになります。



 まずは今日の安全な野山歩きを祈願。そして景色を楽しませてもらいました。ここは関東平野の北の端。目の前にはその関東平野が望洋と広がっていました。冬晴れとはいえ大空と大地との境は眩しく霞んでいてどこまで続いているのか判然としません。



 奧社からは一旦小さく下ってまた登り返すことになります。

 ヤブコウジ

 ヤブコウジの赤い実。枯れ色の風景の中にあってみずみずしく感じます。ところで、ヤブコウジは漢字では「藪柑子」。柑子とはコウジミカンのことで、すなわちミカンの仲間ですが、それがなぜこの植物の名前に用いられたのか。実の色も違いますし。強いて共通点を挙げるとすれば、花の色が双方とも白色ということくらいでしょうか。

 テイカカズラ

 こちらはテイカカズラの葉。旺盛に繁っていますね。生命感を感じさせる色と輝きです。



 木々が葉を落としているので、明るいです。これが冬の低山のいいところ。

 ろうそく岩

 変わった形の岩が現れました。看板には「ろうそく岩」とあります。確かに見る角度によってはロウソクの炎に見えなくないことも。(別角度からは全くただの岩でした。)

 ゴンズイ

これはゴンズイの実ですね。赤い部分は子房が肉質に熟したもの。裂けて反り返った状態で、中にあった黒い種子が出ています。



 急に右手が開けました。パラグライダーの離陸ポイントのようです。手前には荷揚げ用のモノレールも見えます。
 遮るもののない関東平野。そこからの風が山腹に当たって上昇気流となり、これがパラグライダーには絶好の環境なんでしょうね。



 離陸ポイントからの眺めがこちら。まっ平らですね。遠く霞の上に頭を出しているのは筑波山。ここからの距離は約45kmです。



 それにしても、今日は寒くもなく、青空の下での野山歩きで最高です。

 中岳山頂

 10時25分、中岳(210m)に到着しました。南北に細長い三毳山には2つのピークがあり、南側のピークがここ中岳。そして、北側のピークが最高峰の青竜ヶ岳(229m)で、青竜ヶ岳をもって三毳山の山頂とされています。

 佐野市街

 中岳のピークからは木立越しに西側の里の様子が見下ろせました。佐野ラーメンで有名な佐野市の市街地になります。

 ミツバアケビ

 中岳では特に休憩をとることなく先に進みました。これはミツバアケビの葉。いい具合の和テイストに黄葉しています。

 山頂広場

 中岳から少し下ったところに立派な東屋がありました。看板には「山頂広場」とあります。きれいに舗装されていて、ここにも周回道路が通じているようでした。



 東屋の裏手の林。赤や黄といった鮮やかなものもいいですが、やはり里山にはコナラやクヌギなどの茶色の葉がよく似合います。

 犬石

 ここでも休憩するほど疲れてもいないので、東屋の周りを見ただけで先に進みました。
 この岩は「犬石」だそうです。この角度から見ると犬に見えるのだとか。本当に?



 微妙なアップダウンを繰り返しながら歩いていきます。適度に体が暖まってちょうどいい感じ。

 犬(威奴)石

 また岩が現れました。こちらにも「犬石」との看板が。ただ、元々は「犬」ではなく「威奴」だったとのことでで、そのいわれは、この先にある関所を見張る役人がこの岩に陣取っていたことから。その役人を「威奴」と呼んだのだそうです。よっぽど威張っていたんでしょうね。

 三毳山

 10時40分、進行方向にきれいな姿の山が見えました。あれが三毳山の頂、青竜ヶ岳でしょう。もう一頑張りです。(後編に続く