斑尾山 〜夏山でしっかり汗を〜


 

【新潟県 妙高市 平成23年8月14日(日)】
 
 斑尾高原での一泊。ずいぶんと涼しくてぐっすりと眠ることができました。昨日あまり寝ていないというのもありましたが。《昨日の斑尾高原
 
 さて、今日は宿の目の前にどーんと座している斑尾山への登山です。すでにセミの大合唱が始まっていて、今日も暑い一日であることを告げているようでした。

 斑尾山

 9時20分、ゲレンデの最下部からスタート。ここから日陰のない斜面をほぼまっすぐに上がっていきます。北側斜面(こちら側)には森を削るように何本ものスキーコースが造られていて、こうやってみると名前のとおり斑模様の山であることが分かります。


Kashmir 3D

 今日のコースは、ゲレンデを直登して、頂上近くの傾斜がきつくなるところからジグザグに登っていきます。最初に迎えるピークは頂上ではなく、400mほど先にあるピークが山頂です。山頂は樹林に囲まれていて眺望がきかず、その先300mにある大明神岳という尾根の張り出しが眺望抜群とのことなので、今日はそこまで行って折り返してこようと思います。

 

 ゲレンデにはブタナが揺れています。写真では爽やかそうですが、直射日光は厳しいです。

 緩斜面

 ここは緩斜面。どのスキー場にもあるファミリーゲレンデのような斜度のところでしょうが、いざ登となるとなかなかきついですよ。管理車両用の道は小石がズルズルと滑るので、草地の上を歩いて行きます。

 オトギリソウ

 ゲレンデでは山肌の浸食を防ぐ目的で牧草などの種を散布して緑を保っています。先ほどのブタナなどもその代表例ですが、そんな中にも野生の植物が。この黄色の花はオトギリソウです。きっと森の縁から種が飛んできたのでしょう。

 ススキ

 立秋は過ぎたとはいえ、「秋の気配が」というにはまだ早すぎるでしょう。空もまだ夏空です。

 

 林縁をノリウツギとリョウブの白い花が飾っています。夏の花には白いものが多いような気がしますが、どうでしょうか。

 斑尾高原

 登り初めて30分が経過。もうずいぶん高いところまで登ってきました。振り返ると小高い丘状のところにリゾートエリアが広がっているのが見えます。丘の最も高いところが標高1000mくらいです。

 ヨツバヒヨドリ

 ゴワゴワとした葉が4個輪生するヨツバヒヨドリ。ちょうど満開です。

 タケニグサ

 タケニグサの群落。華やかさはないものの、飾らない野の花ならではの風情を感じます。

 

 道はジグザグに上りはじめました。傾斜は増していますが直登よりも楽です。時折流れてくる雲の影に入るとき以外はずっと日射しを浴び続けています。暑いです。今回は、スポーツドリンクを4.5リットル背負っているので水分不足の心配はありませんが、その前に重たくて倒れそうです。

 ヤナギラン

 おお、出た、ヤナギラン。夏の高原を彩る花です。大柄で、人の背丈ほどにもなります。上の写真は斜面の上に向かってかなりの仰角で撮影しています。

 ヤナギラン

 名前はランですがれっきとした双子葉植物。アカバナ科です。花は長い花序を下から上に向かって咲いていきます。バックの緑によく映えますね。

 

 斜面を埋め尽くす花々。日が陰ると風が渡り、ホッと一息つけます。

 アサギマダラ

 ヒヨドリバナの群落の上をひらひらと羽ばたき、ついーっと滑空するアサギマダラ。あっちにもこっちにも飛んでいます。大柄な蝶なので観ていても楽しく、ついつい見とれてしまい、その間だけ異空間に連れて行かれたような感じになります。

 夏山風景

 「盛夏」という言葉がぴったりの風景。

 ヤマムグラ

 なんじゃこりゃ? と思って調べてみたら、ヤマムグラの果実でした。直径2、3ミリの小さな実です。この花の仲間にはヤエムグラやヤブムグラ、フタバムグラにヨツバムグラ、ソナレムグラ、クルマムグラといろいろあって、みんなアカネ科の植物です。これだけ並べると、こんなにいろんな接頭語が付く「ムグラ」っていったい何だということになりますよね。ムグラは漢字では「葎」と書き、これはカナムグラという植物のことなのだそうです。 ん? ムグラが何なのかの説明中にまたムグラの言葉が出てきて、ややこしいことに。どうやら「葎」には「広い範囲に生い茂って草むらを作る草の類」という意味もあるようで、そっちの意味の「ムグラ」に接頭語が付いているのだと思います。ところで本家のカナムグラはアカネ科ではなくクワ科だというのですから、もともと赤の他人を引き合いに出してるということなんですね。

 樹林帯へ

 標高1300m地点からは樹木が茂っているエリアへ。その前に小休止です。

 沼の原湿原

 水分補給をしながら眼下を見下ろすと、はるか向こうに昨日散策した沼の原湿原が見えました。直線距離で約3q、この場所との標高差は500mちかくあります。

 

 さっきまでとは全然違う風景の中を登っていきます。

 弱肉強食

 歩いていると地面でじたばたしているものが。見ると、オニヤンマがミンミンゼミを捕食していました。大きなあごでガッツリ噛みついていて、近づいても獲物を放す気配なし。

 万坂峠への尾根

 隣の尾根が間近に見えてきました。ピークが近づいてきた証です。あの尾根を下ると万坂峠に至り、沼の原湿原まで最短ルートで行けます。

 最初のピーク

 11時05分、万坂峠への分岐があるピークに到着。標高の表記はありませんでしたが、地図を見ると1350mちょっとあるようです。ここはスルーして、斑尾山山頂に向かいます。

 ホツツジ

 山頂への尾根道をいったん下って、また上り返します。
 写真はホツツジの花。先端がピンク色で可愛いです。

 斑尾山山頂

 11時20分、山頂に到着しました。山頂は2段になっていて、上の段に三角点がありました。広さはそれぞれ6畳間くらいで、周りは樹木に囲まれています。

 十二薬師

 下の段には苔むした小さな石の祠がありました。この中には薬師如来とその守護役である十二神将の計13体の仏像が収められているそうです。この像はいったん祠から出すと、収めるときに最後に1体だけ入り切らなくなるという言い伝えがあるそうです。また、この像を出し入れすると雨が降るともいわれているそうです。(こちら

 大明神岳山頂

 お昼までちょっと時間があるので、先に山頂から尾根伝いに更に南下したところにある大明神岳に向かいました。この道のりも若干下ってまた登ります。
 そしてすぐに到着。平坦なスペースはほとんどなく、山頂というより展望の開けた岩場といった風情でした。

 

 そしてこれが楽しみにしていた眺望。西方向を中心にほぼ180度の視界です。この季節なので日が昇るにつれてどうしても大気の透明度は下がってしまいます。クリアなら正面の野尻湖越しに黒姫山、右手に妙高山、左手には飯縄山(今日はうっすらと山影が見えています。)の3座がどどーんと望めるのだそうですが。それでも開放感満点の景色です。登ってきて良かった−。

 

 位置関係はこんな感じ。3つの山が縦一列にきれいに並んでいますね。斑尾山からの距離は10数qです。浸食の度合いからすると飯縄山が古く、妙高山が新しいように見えますが、いかがか。で、これまた調べてみると飯縄山が最後に噴火したのは約5万年前。黒姫山は約4万年前で、妙高山はぐっと新しく約6千年前だそうです。

 リョウブ

 大明神岳ではリョウブの花が満開でした。

 再び山頂

 再び斑尾山の山頂まで戻って昼食です。

 ムシカリ

 山頂では30分ちょっと休憩して、ぼちぼち下山することにしました。
 ムシカリはもう実ですね。でもまだ熟すまでには間がありそうです。

 ホツツジ

 こちらは白花のホツツジ。ここの群落はみんな白花でした。

 関田山脈

 12時40分、ゲレンデの最上部まで下りてきました。正面には斑尾高原。その奥には弧状に関田山脈が続いているはずですが、今日は夏雲の中です。

 花畑

 花畑の中を下っていきます。眼下の広い駐車場でドリーム号が待っているはず。

 高杜山

 右手には高井富士と呼ばれる高杜山がぼんやりと見えます。奥の志賀高原から離れて独立した山なので、均整のとれた姿とあいまってよく目立っています。

 高原リゾート

 1時25分、下山完了。後半はやっぱり日射しが暑かった。熱中症になることもなく、無事に下山できてよかったです。
 今日は夏の山歩きを満喫しました。景色もそれなりに良かったし。これから一休みして、まずは近くにある温泉施設「斑尾の湯」で汗を流します。その後、唱歌「故郷」のモデルとなった辺りを通って、豊田飯山ICから高速に乗り、後は一気に東京を目指します。
 (帰り道、更埴JCT辺りでスピルバーグ映画のようなものすごい嵐に見舞われて、びっくり。運転していて不安になるくらいのゲリラ豪雨でした。)