太田川河川敷 〜中学生と自然体験活動〜


 

【広島市安佐北区 平成14年10月2日(水)】
 
 秋晴れの空の下、広島市を流れる太田川の河川敷は朝からにぎやかな声であふれていました。
 広島市立口田(くちた)中学校の2年生、約270人です。
 
 総合学習の一環として行われる自然体験活動を「広島県自然観察指導員連絡会」のメンバーでサポート。もちろんボランティアです。

 安佐北区口田南の
 太田川河川敷

 平日に行われることからサポートメンバーが揃うか心配がありましたが、それぞれ都合をつけて16人の指導員が集まりました。yamanekoも休日出勤の代休を充てての参加です。
 去年に続き2回目のサポートですから、生徒たちの反応とかもある程度分かっているので少しは余裕があります。子どもたちと一緒に楽しむつもりで、肩の力を抜いていこう!

 「集合じゃー!」

 これだけの人数が集まると先生方も大変です。
 センセ、眉間にシワ寄ってますよ。
 
 生徒たちを14のグループに分けて、それぞれに指導員が付きます。1グループ当たり20人弱。観察会を行うにはちょっと多いかなといった人数です。
 自分の担当は「E班」。元気のいい子が多い班でした。


                     


 まずはこの観察ポイントがどういうところかを理解するところから始めます。
 みんなで丸く広がって芝生の上に円になってしゃがみます。直径10mくらいの円です。中心には座布団大の白いビニール。
 そして、みんなが地面を叩きながら中心に向かって円を狭めていきます。すると、何もいないように見えていた芝生の中からピョンピョンと虫たちが飛び出してきて、最後には白いビニールの上に追われてたくさん集まってきました。
 河川敷の刈り込まれた芝生広場。人の手が加わったこんな場所でもたくさんの生き物が生活しているということが体験により理解できたのではないでしょうか。そして、その生き物たちを狙ってほかの生き物もやって来るということも。
 
 次はこれから下りていく河原の方向をみんなで1分間ほど眺めます。
 そして振り返り、河原を背にして、何が見えたかを発表してもらいました。
 「草」、「川」、「(対岸の)マンション」そんな答えがパラパラと…。そうです、ただ眺めただけでは見ているようでもあまり記憶には残らないものです。いろんなことに気が付くには注意して見ることが必要なのです。
 そこで次は河原のスケッチです。スケッチをしようとすれば必然的に注意して見ることになるのですから。

 河原をスケッチ

 子どもたちの集中力はそう長くは持続しません。中にはものの数分で鉛筆を置いて遊びだす子も。でも、目くじらを立てることはありません。周りが楽しそうに描いていると、しばらくしたらまたちゃんと描き始めているんです。
 
 できあがった絵を見て、さっき見たときには気が付かなかったものに気が付いたかどうか聞いてみました。するとおもしろい答えが。
 「山」、確かにそうです。当然のこととして背景に山があるのですが、子どもたちはスケッチしてみてはじめてその存在を認識することができたのです。これには自分自身もハッとさせられました。
 
 そして、このときの反省点としては、集団の中の子どもたちの注意をいかにこちらに向けさせるか、ということです。進行を気にするあまり、話を聞いていない子を置き去りにして話を進めがちであった点は反省のうえ次回に活かさなければ。


                     

 今回の自然体験の場所をマクロに眺めた後は、今度は実際にその自然の中に入っていきます。
 この頃から子どもたちの目が輝きはじめました。待ってました。この変化は去年も経験済みなので、スタート時のテンションの低さもある程度余裕をもってやり過ごせるのです。(実は冷や汗)
 
 子どもたちには「探してみよう!」という課題が出されています。
  @何か動くもの A何か飛ぶもの B何か丸いもの C何かとげとげしたもの D何かにおいのするもの E何か音のするもの F何か辛いもの G誰かの食べたあと H何か水の中にあるもの I何かおもしろいもの
 バッタ、トンボ、小石、オナモミ…。子どもたちは答えを探しながら、おずおずと、やがて大胆に自然に触れていました。

 メハジキ
 マメアサガオ
 スベリヒユ
 アレチハナガサ

 そして当然の成り行きとして川の中に入っていきます。
 もう「探してみよう!」なんてそっちのけ。まるで無政府状態です。

 みんなイキイキしています。中には水にはいるのをためらっている子もいましたが、口で言うより周りで楽しんでいる子の姿を見せるのが一番効果的。
 石を投げて水切りをする者、水のかけ合いっこをする者、遠くの瀬の方まで放浪する者…。
 こうなることは計算済みなので、ひとしきり遊び終わるまではあえて放っておきました。ただ、安全確保には気を配らねばなりません。担任の先生もちょっと心配顔(?)。
 
 頃合いを見はからって子どもたちを水際に呼び集め、石をひっくり返してみたり、水中を網ですくってみたり。
 残念ながらこのときには子どもたちが他の班と入り乱れてしまって思っていたとおりのことができませんでした。グループのまとめ方についても反省点として次回への課題です。


                     

 そろそろ昼ご飯の時間が近づいてきました。
 また河川敷の芝生広場に上がって、最後のまとめ「川の自然しらべ」をします。
 NACS−J(日本自然保護協会)のマニュアルに則って、@川のまわりのようす、A土手と川のあいだのようす、B流れのうよす、C水ぎわと川底のようす、D水のよごれ、E川の鳥のようす、についてそれぞれ得点化し評価していきます。
 
 朝から、ここの様子をマクロに見て、そして実際に中に入って見て、触って、感じているので、それぞれの得点化に際しても素早い回答が返ってきました。たった半日のことでしたが、きっとたくさんの気付きがあったのでしょう。
 評価の結果は「まだ自然が残っています。これ以上自然が失われたいように注意しましょう。」というものでした。
 
 身近な自然に親しんで、理解して、そしてそれを守っていきたいという気持ちが子どもたちの心の中に芽生えてくれたら、今日の自然体験活動はその目的の大部分を達したといえるのではないでしょうか。
 
 最後に、サポートメンバーをさらにサポートする形で行動を共にしてくださった先生たちに、感謝です。



 午後、数人のメンバーと一緒に、南区霞町にある広島大学医学部附属薬用植物園におじゃましました。
 以前、公開講座の際(「02.5.19田之尻」参照)にお世話になった神田先生のおられるところです。
 おもしろい植物がたくさんあったのですが、いかんせん蚊が多い!なにせひと叩きで手のひらに4、5匹の蚊がつぶれているくらいですから。

 フジバカマ

 フジバカマを乾燥させたものを生薬で「蘭草」といい、利尿、通経や黄疸(おうだん)、腎炎などによる体にむくみに薬効があるそうです。
 現在、野生のフジバカマはほとんどないとのこと。

 イトヒメハギ

 イトヒメハギの根の芯を取り去ったものを「遠志」といい、去痰、利尿のほか、ストレス性胃潰瘍を抑制する薬効があるそうです。


 もっともっとありましたが、大量の蚊のせいでとてもとても…。
 案内してくれた人が一言、「ここは霞(蚊住み)町だから。」 チャンチャン。