櫛形山 〜南アルプスを望む展望台(後編)〜
|  | (後編) | 
【山梨県 富士川町 平成25年8月16日(金)】
 
 南アルプスの前衛に位置する櫛形山。日本の屋根を展望する山歩きの後編です。(前編はこちら)
|  Kashmir 3D |  | 
櫛形山の山頂を過ぎて裸山までやって来ました。時刻は8時55分です。ここからはアヤメ平に下り、復路は最近出来たばかりのトレッキングコースを通って戻ります。
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裸山のピークは、山と言ってもここからだと小さな丘のよう。上の写真の左手にある小径から登って、右手にある小径から降りてくる、その間5分ほどでした。さて、麓にある花畑をゆっくりと見てみましょう。シカの食害から守られた防護柵の中の花畑です。
| キリンソウ | 
周囲の丈の高い草に埋もれてしまいそうなキリンソウ。黄色い花が輪になって咲くから「黄輪草」だそうです。ベンケイソウ科の花に特徴的な肉厚の葉を持っています。
| キバナノヤマオダマキ | 
キバナノヤマオダマキ。この花を初めて見たのは大菩薩嶺だったか。いつ見ても清楚な雰囲気を漂わせています。
| コウリンカ | 
「紅輪花」。遠目から見ると枯れた花のようでもありますが、いまが最も生き生きと咲いている時季です。花の色は、紅というより濃い朱色、または赤さび色といった感じ。舌状花は反り返って下を向いています。この花を初めて見たのは広島の吾妻山だったと思います。ここと同じような明るい草原でした。
| シモツケソウ | 
シモツケソウ。この花がバラの仲間だとは。遺伝子解析などない時代、植物の形態をもとに分類したのでしょうが、これのどこがバラと共通しているのか素人にはさっぱり。学者の観察力には驚くばかりです。
| ツリガネニンジン | 
花畑とはまさにこのこと。いろんな花が所狭しと咲いています。風に揺れるツリガネニンジンが、ここの季節はもう初秋であることを告げています。
| タムラソウ | 
一見、アザミのようでもありますが、これはタムラソウです。アザミと違って葉に刺はありません。花にセセリチョウのような虫が来ていますね。
| マツムシソウ | 
こちらは見ているだけで涼しい風を感じさせるマツムシソウ。ときどき花屋の店先で鉢植えを見かけますが、やはり自然の中にあってのものですね。
| ヤマトリカブト | 
猛毒のヤマトリカブト。世界にあまたあるトリカブトの中でもトップクラスの毒の強さだそうです。ところで、秋は紫色の花が多いような気がします。
| コオニユリ | 
ユリを見て和服美人を連想するのはyamanekoだけか?
| アヤメ平へ | 
 花畑で20分ほど写真を撮ってからアヤメ平に向けて歩き出しました。裸山の麓から標高にして80mほど下ります。
 それにしてもまだ9時過ぎ。すでにこんなに野山を楽しんだのに。やはり早起きしてきて良かったです。
| アヤメ平 | 
9時40分、アヤメ平に到着しました。アヤメ…、どこにもありません。まあ時期的に予想はしていましたが。そうか、残り花もなかったか。
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ここも踏み荒らしや盗掘などによるダメージを受け続けてきたんでしょうね。大きな看板にこう彫り込まれていました。「手折られしあやめの花のあわれさよ君にも命のあるものを」 短歌とすればちょっと字足らずですが、登山者に対する戒めの言葉でしょうね。
| 避難小屋 | 
避難小屋の前で腰を下ろして休憩です。小腹が空いたのでアンパンを食しました。そういえば夜明け前のパーキングエリアで生煮え(?)のどん兵衛を食べたのは今日のことだったか。
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周囲を散策してもアヤメはないようなので、ぼちぼちトレッキングコースに向かうことに。この辺りは少し乾燥化が進んでいるようにも見えます。
| 入口 | 
アヤメ平の西の端にトレッキングコースの入口がありました。ロープがまだ白く真新しいです。午前10時、ここから朝スタートした駐車場に向けて戻っていきます。
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このコース、どうやら昔からあった道のようです。カラマツの梢を通して差し込む光が清々しいです。
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いい雰囲気ですね。こんなトレッキングコースなら何q歩いても苦になりません。
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が、しばらく行くと道はこんな感じに。もともと小径はあったのかもしれませんが、重機で拡幅されています。左側の斜面は土が崩壊しないようにネットが張られていました。
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 10時20分、「裸山ノコル」までやって来ました。コルとは鞍部のことで、裸山の直下にある鞍部という意味でしょう。なので、ここの左手を登って行くと裸山のピークに至ります。
 ここまで昔からの道と重機で拡幅した道とが交互に現れました。けっこうアップダウンがあって、それなりにきつかったです。
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ところがここからがさらにきつかった。ちょっと尋常じゃない斜度で道が開削されています。普通ならジグザグに下っていくような斜面を直滑降に道が作られていました。
| もみじ沢 | 
 急な坂道は延々と続き、それを下りきったところにあるのがもみじ沢。モミジの木立の下にちょっとした広場があって、紅葉を愛でるには絶好のスポットのようです。ここでしばし休憩です。
 もみじ沢から先は逆に強烈な上り坂の連続。よく重機が滑り落ちなかったなと感心するほどの傾斜で道が敷かれていました。ここを歩く人のためにところどころトラロープが張られていましたが、いかんせん路面に足がかりがなく綺麗な斜面なので、ズルズルと滑ってしまうのです。結局、裸山ノコルから先はすべて開削された道でした。
| 休憩所 | 
急傾斜の上りにヘロヘロになった頃、休憩所の看板が現れました。道からさらに20mほど高いところに作られていいるのは、きっと休憩をしながら眺望を楽しんでもらうためでしょう。ただ、今のyamanekoにはこの20mがきつかった。ゼーゼー言いながらようやくたどり着きました。そして登ってみたらどこにも日陰がないというオチ。何の修行か、これは。
| ヤマトリカブト | 
休憩所で水分補給をして、すぐに歩き始めました。どうやら急な登りはここまでだったようで、休憩所から先の道は概ね水平移動でした。
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そうそう、こんな道。こんな気持ちのいい道は大好きです。
| キオン | 
明るい林床にキオンが咲いていました。ようやく花を見る余裕が出てきました。キオンは「黄苑」と書きます。同じキク科にシオン「紫苑」という花もあります。
| 北岳展望デッキ | 
 11時25分、北岳展望デッキに到着しました。トレッキングコース入口から約1時間半。けっこうハードでした。
 展望デッキには先客が2人いました。工具やらトラロープなどの資材を持っています。話を聞いてみると、このトレッキングコースの整備に向かうのだとか。ここは1箇月前にオープンしましたが、まだ完全にはできあがっていないとのこと。今日は急斜面にトラロープを張りに行くのだそうです。今後、急傾斜の道は階段状に整備するのだそうです。お疲れ様です。このトレッキングコースも10年くらい経つと、施工箇所が自然と融合してきていい感じになるでしょうね。
| 眺望は | 
ところで北岳の眺望はというと、すっかり雲が湧いてしまって、ほとんど何も見えませんでした。ようやく少しだけ見えたのが上の写真。右端のピークが鳳凰三山の一角、地蔵岳。そこから左に伸びる稜線は、その先に聳える仙丈ヶ岳まで続いているはずです。北岳は? 上の写真のずっと左側に位置しているはずで、完全に雲の中でした。
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北岳展望デッキから駐車場までは、平坦な歩道が整備されていました。路面は土を堅く押し固めたような舗装がされています。これは駐車場からここまで車椅子でも来られるようにということだそうです。
| キベリタテハ | 
見たことのないチョウが飛んでいました。帰ってから調べてみるとキベリタテハというチョウでした。羽根の外側に黄色の縁取り。そしてその内側に瑠璃色の楕円形の模様が並んでいます。なんだか中世ヨーロッパという感じで、印象的です。
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11時55分、朝の駐車場が見えてきました。右下に見える道が麓から上がってくる車道です。それにしても北岳展望デッキからは結構な距離がありました。傾斜を小さくするために距離を長く取ったのでしょうが、車椅子ではなかなかしんどいかもしれません(ゆっくり行けば大丈夫かも。)。
| 駐車場 | 
この時間、駐車場は8割方埋まっていました。
| 昼食 | 
整理体操もそこそこに、日陰に腰を下ろしてコンビニ弁当を広げました。ザ・コンビニ弁当という見た目ですが、今日の楽しい山歩きを思い出しながら美味しくいただきました。
| 櫛形山遠望 | 
 一休みしてから、帰路につくことに。ドリーム号で再びあの強烈な林道を下っていきました。
 山を下りて、笛吹川の河畔まで来てから櫛形山を振り返ったのが上の写真。夏の午後特有の湿った空気のおかげで、櫛の歯が判然としません。今日は楽しませてくれて、そして無事に下山させてくれてありがとう。そうお礼を言ってから再びドリーム号を走らせました(ちなみに帰りの中央道は予想どおりの渋滞でした。早めに出たつもりだったのに。)。
 
 
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