草津白根山 〜高山植物の楽園(後編)〜


 

 (後編)

【群馬県 草津町 平成22年7月10日(土)】
 
 (前編はこちら
 草津白根山は、約50万年前から大きく見て3回の活動期があったとされていて、現在の山容を概ね造り上げたのは、約35万年前の第2期のことだそうです。35万年前といってもピンとこないので調べてみたら、ネアンデルタール人(我々にはつながっていない絶滅した人類)が登場したのがこの頃だそうです。ますますピンとこなくなってしまいました。


Kashmir 3D

 さあ、折り返しの探勝歩道最高地点まであと少しです。さくさく歩きましょう。

 断崖に咲く

 麓の方から山肌を吹き上がってくる風が、断崖に咲くコマクサを揺らします。見ているだけで涼しく、気持ちいいです。

 コキンレイカ

 まだ蕾ですが、コキンレイカがありました。オミナエシの高山型です。

 探勝歩道最高地点

 12時ちょうど、探勝歩道の最高地点に到着しました。何組かのハイカーたちが車座になって昼食をとっています。 ん?どこからかいい匂いが。山でラーメンを作っている人はよく見かけますが、この匂いは明らかに焼き肉です。すると、バーナーに小さなフライパンを乗せて、肉を焼いている人が。肉とタレを持参したんですね。こっちはコンビニ弁当ですが、空腹が何よりの調味料です。

 から釜

 南側から見た「から釜」。山肌が露出しているところの向こう側からやってきて、写真右下の砂地を経由して、ここまでやって来たのです。この風景を眺めながらの昼食。最高でした。それにしても素晴らしい天気。本当に梅雨の最中か?

 復路へ

 30分ほど休憩して、再スタート。来た道をもどります。

 榛名山

 火砕丘の縁から南東方向に上毛三山のうちの一つ、榛名山の姿が望めました。ここからは直線距離で35qほど離れています。肉眼ではもっと迫って見えていたんですが…。

 赤城山

 東方向には、これも上毛三山のうちの一つ、赤城山(奥の薄い山影)も見えました。こちらは60qほどです。条件が良ければその裾野の左奥に日光白根山も見えるそうで、そうなると群馬県の端と端にある白根山同士が見えるという、ちょっと小ネタ的なことになるのです。

 展望所へ

 さきほど通過した分岐点を、今度は奇岩の方に向かって登ります。登りきると展望所があるとのことです。

 ここにも

 かなり急な勾配ですが、辺りで揺れるコマクサに励まされながら、一歩一歩登ります。

 展望所に上がって一休みしていると、どこからともなくヘリがやって来て、反対側の縁の上でホバリングを始めました。ちょうど樹林帯を抜けた辺りで、午前中に通ってきたところの上空です。どうやら負傷者を救助しているようです。ローター直下の強風でも揺れることもなくあっという間に吊り上げて収容し、まだどこかへ飛んでいってしまいました。その間わずか5分ほど。さすがの手際でした。(見とれていて、展望所の様子を写真に撮ることを忘れていました。方位盤が設置されている他は何もないピークでした。)

 樹林帯へ

 さて、あらためて歩き始めます。今度は樹林帯に入り、鏡池のある火砕丘の縁を通ります。

 マイヅルソウ

 樹林帯に入ると、再びツマトリソウやゴゼンタチバナ、マイヅルソウが現れはじめます。みんな生き生きとしていてきれいです。

 夏の雲

 大きな木が倒れた跡でしょう、ときどきぽっかりと明るい空間が出現します。そこからは夏本番の雲が。

 鏡池

 鏡池です。ここも古い火口跡でしょうね。

 ハクサンチドリ

 草むらでちょっと目を引く紫の花。ハクサンチドリです。花の形が千鳥が飛ぶように見えるからこの名が付いたとのことですが。うーん、そう言われれば…。でも、何で千鳥? 群れ飛ぶように見えるからでしょうか。 ♪いつも群れ飛〜ぶ〜…って、これはカモメか。

 どんどん下る

 鏡池の火砕丘の縁を離れて、山体の東斜面を下ります。

 虫喰われ

 周りの樹木の葉はそうでもないのに、ムシカリの葉だけレース状に虫に食われていました。「虫に食われる」→「むしくわれ」→「ムシカリ」と転訛したという説も。この状況を見るとそれも納得できますね。

 エンレイソウ

 早春に花を咲かせたエンレイソウは、この時期にはもう果実を付けていました。

 イワカガミ

 東側斜面ではイワカガミにたくさん出会いました。場所によって微妙に生育環境が違うんでしょうね。他の樹林帯ではあまり出会いませんでしたから。でも、7月にちょうど見頃だなんて、やっぱり標高2000mを超える高所だからでしょう。

 豪奢

 中にはこんな豪奢なものも。まるでシャンデリアです。

 山頂駅

 ロープウエイの山頂駅が見えてきました。今度は逢ノ峰の東側の麓を巻いて行きます。

 アカモノ

 次から次へと花が出てきますね。これはアカモノ。同じツツジの仲間のコケモモよりも花冠の形が壺形により近いです。広島県北東部の吾妻山ではじめてアカモノの花を見たときには、こんなに可愛い花が園芸種でなく野生にあることにちょっと驚きました。

 レストハウス

 午後3時、駐車場まで戻ってきました。とりあえずレストハウスでアイスでも買いましょう。その後は湯釜の見える所まで登ります。

 ウラジロヨウラク

 ここからは一般の観光客とともに、というか大多数の観光客に混じって散策路を上ります。この道以外に、火口により近いところに至る道もあるようですが、どうやらその日の火山性ガスの噴出加減や風向きの状況で、閉鎖になったり開いたりするようでした。
 途中にもウラジロヨウラクなど、これでもかというほど花が現れます。

 湯釜

 湯釜の火砕丘の隣にある丘まで道が開いていました。上の写真はそこからの眺めです。どうです、エメラルドグリーンの湖水。荒涼とした風景の中の神秘的な湖で、何か西方浄土のような景色です(見たことないけど。)。湯釜の水はph1.0前後だそうで、世界で最も酸性度の高い湖といわれています。

 弓池と湿原

 湯釜から下りてくると、最後に弓池付近の湿原を巡ります。今から100年ほど前にここで水蒸気噴火があったそうで、そのことからも草津白根山ではいつどこで噴火が起こってもおかしくないと考えられているそうです。

 ワタスゲ

 湿原ではそこここにワタスゲが揺れていました。ワタスゲは高層湿原に生える植物です。水面を渡る風に揺れ、見るからに涼しそうです。

 逢ノ峰を望む

 湿原を巡る木道を歩いていると、午前中に登った逢ノ峰が見えました。今日はまずあの山でたくさんの花の出迎えを受けました。その後も本当に花いっぱいの一日でした。

 高原の午後

 湿原の水面が午後の光を乱反射させています。早くも張ってきたふくらはぎの筋肉は、今夜草津温泉の湯につかってほぐすことにしましょう。天気予報では明日は梅雨空に戻るのだとか。今日は梅雨の晴れ間を存分に楽しむことができました。(これも日頃の行いゆえか。)