黒檜山 〜深まる秋を感じに(前編)〜


 

 (前編)

【群馬県 前橋市 平成23年10月9日(日)】
 
 土曜日。遅く起きだしてきてベランダに出ると見事に晴れ渡った秋の空です。ううう…、本当は今日山に行くはずだったのだが…(頭いてて…)、…そうか、昨日仕事終わってから急遽飲みに行ったんだよな。飲み屋から山の延期を申し入れるメールしたっけ、妻に。 
 
                       
 
 で、日曜日。体調を万全に整えて、午前5時に出発です。関越道をひたすら北上し、前橋ICで一般道へ。今日は群馬県の赤城山へ向かいます。
 天気予報を確認してみると、赤城山の北西にある沼田市で「晴れ」、南東にある桐生市で「曇り」。うーむ、南よりの風なら山頂からの眺望は期待薄かも。昨日はお日様マーク一色だったのですが、まあ飲みに行った自分が悪いということで。 

 大沼

 赤城山は山頂部にカルデラを持ち、そこに大沼、小沼という二つの湖があります。湖の周辺は観光地として開発されていて、そこまで車で上がることができます。
 8時5分、山頂部に到着。駐車場にはまだ車の影もまばらです。大沼の水面には霧がかかって幻想的でしたが、ちょっとトイレに行っている間に上の写真のように晴れてしまいました。霧の湖水を撮りたかったのですが。

 黒檜山

 駐車場から見た黒檜山。赤城山は山頂部を取り囲むようにしていくつかの峰が並んでいて、今日登る黒檜山もそのうちの一つ。標高は1828mで、これらの中では最も高い、赤城山の主峰と言える山です。


Kashmir 3D

 今回のコースは、駐車場から大沼沿いに車道を歩き、まずは登山口へ。そこから山肌をまっすぐ登って黒檜山の山頂に向かいます。その後稜線を下って鞍部から駒ヶ岳に登り返し、またまっすぐに下るという、足腰にはなかなかきついもの。同じコースを15年前に当時小学生だった子どもたちと登ったのですが、そのときはまだ若かったので何ともありませんでした。さすがに今はそうはいかないでしょうね。

 地蔵岳

 8時30分、装備を整えてスタート。天候はまずまずです。大沼の東岸の車道を歩いて行きます。湖水をはさんで反対側にある地蔵岳が鏡のような水面に映り込んでいます。光の加減でしょうか、映っている方がよりくっきりと見えています。

 登山口

 8時45分、登山口に到着しました。車道からいきなり登りはじめる形です。

 

 いきなりの急登。しかも足下には形や大きさが不規則な岩(安山岩)が転がっています。大昔に赤城山が噴出したものです。
 赤城山は、日本に110座ある活火山のうちの一つで、同じ場所で何度も噴火を繰り返して現在の形になったと考えられています。約50万年前には標高2500mくらいに達したと考えられていて、その後20万年前くらいまでの間に火砕流や山体崩壊などによって1500mくらいまで低くなり、同時に広くなだらかな山麓を作ったのだそうです。後に山頂部に溶岩ドームが形成されてまた背が伸び、更にそこが陥没してカルデラができあがったそうで、ここまでで今から約4万5千年前までの出来事。最後の噴火は約3万年前で、激しい噴火に伴って大量の軽石を噴出し、東側の桐生市方面に降り積もらせました。これが有名な鹿沼土です。ところで簡単に「万年」とか言っていますが、それぞれの出来事は人間の時間感覚からすると途方もなく離れています。もっとも地球の時間からすると短期間に活発に活動していた(今もしている?)ということでしょうが。
 なお、気象庁は「活火山」の定義を、今から1万年前までの間に噴火した実績のある火山としています。赤城山の場合、鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」の中に赤城山が噴火したともとれる記述があり、気象庁はこれを根拠に活火山としているとのことです。でも、噴出物などの物的証拠はないそうです。

 

 朝の光が森の中に差し込んで、周囲を明るくしています。こういう森は好きですね。

 

 山肌を登ること20分、やがて明るい稜線が見えてきました。確かあそこまで行くとカルデラ内の風景が望めるはずです。

 

 そしてこれがその風景。大沼が目の前に広がっています。南側(写真左側)の鳥居峠を越えて雲が流れ込んできていて、その影響か全体に白々とした風景になっています。
 正面には地蔵岳。標高は1674mで黒檜山より150mほど低い山です。10数年前まで地蔵岳にロープウエイがあったそうで、前回黒檜山に登ったときにはここから見えていたはずですが、今となってはまったく記憶に残っていません。

 赤城神社

 眼下の半島のような部分には赤城神社があります。ご神体はこの赤城山自体だそうでです。

 

 ひとしきり展望を楽しんだら再び登りはじめます。傾斜は更にきつくなり、それとともに紅葉がいい感じになってきました。

 

 おお、なかなか渋い趣。この葉っぱはツツジ科ですね。ベニサラサドウダンか?
 紅葉と言えばモミジやカエデを思い浮かべがちですが、実はツツジの仲間も鮮やかに紅葉するものが多いです。木全体が燃えるように赤くなるドウダンツツジはモミジにまったくひけをとりませんよね。とはいえ、ツツジの仲間はどちらかというと名脇役的な紅葉が主体で、例えばスノキやナツハゼ、ネジキは「和」の風情を感じさせるツウ好みな紅葉になります。

 

 足下に気をつけながら、一歩、一歩。

 

 ゼーゼー言いながら登っていると、またビューポイントが。確かにさっきより高くなっています。あいかわらず南側から雲が流れてきていますね。

 

 振り返ると、これが黒檜山。ここからだとまだまだです。

 

 深まりゆく秋。里より一足先に錦の季節が訪れています。

 

 条件反射的にピースサインをする人。(昭和の写真か。)

 

 山頂に近づくと土の質が変わってきました。これまでは黒っぽい火山灰土でしたが、全体にかなり赤いです。おそらく最終噴火の噴出物でしょう。

 

 傾斜が少し緩やかになってきました。空が真っ白ですが、どうも山頂の周囲は雲に覆われているようです。

 

 10時30分、ようやく山頂部の稜線に出ました。道はここで左右に分岐して、左に50mほどで山頂。右は駒ヶ岳方面です。

 

 ここではもちろん左に道をとって黒檜山の山頂へ、藪の中を進みます。道ははっきりしているので安心です。

 ナナカマド

 ナナカマドの実も色づいています。秋ですなあ。

 黒檜山山頂

 そして10時35分、黒檜山の山頂に到着です。ざっと30人くらいはいるでしょうか。はやくも弁当を広げている人たちもいます。
 それにしても晴れていたら見事なパノラマのはずなんですが。ここからの展望を楽しむために20万分の1の地勢図を4枚も持ってきたのに。残念です。

 

 じっとしていると薄ら寒いし、することもないし、所在なさげに立ち尽くす妻。昼ご飯にはまだ早いので、このまま駒ヶ岳を目指すことにしました。
 さあ、駒ヶ岳に向けてGO! 《後編に続く》