霧降高原 〜夏の高原・花三昧(前編)〜


 

 (前編)

【栃木県 日光市 平成29年7月15日(土)】
 
 梅雨まっただ中。とはいえ関東では今年の梅雨は少雨のようです。今日も天気予報はギラギラの晴天。涼しいところにでも行こうということで、夏の花を求めて日光の霧降高原に行ってみることにしました。
 
                       
 
 まずは圏央道に乗り、久喜白岡JCTから東北道に入って北上。栃木県の宇都宮ICから日光宇都宮道路に分岐して、終点の一つ手前、日光ICで下道に下りました。そこからは少しだけ市街地を通り、県道169号線に入って霧降高原を目指しました。


 Kashmir 3D

 霧降高原は、キスゲ平を中心として、夏にはゼンテイカ(ニッコウキスゲ)が咲き誇り、冬場はスキー客で賑わう場所だったそうです。そのスキーリフトに乗って高原の花々を楽しめたようですが、何年か前にスキー場が廃止になり、その後リフトも撤去されています。今ではリフトの軌道跡に「天空回廊」という長い階段が設置されていて、そこを歩きながらキスゲ平の花々を楽しむことができるようになっています。ただ、この階段、標高差240m、全部で1445段もあり、終点の小丸山までなかなかハードな道のりとなっています。

 キスゲ平駐車場

 で、キスゲ平の下の駐車場に着いたらこの天気。麓は晴天なんですが、どうやら標高を上げて雲の底に近づいたようです。予定では輝くような晴天の下での野山歩きだったのですが、まあ涼しいので良しとしましょう。
 時刻は11時ちょうど。ストレッチをして歩き始めました。

 クモキリソウ

 いきなり駐車場脇で出逢ったクモキリソウ。この先への期待感が否が応でも高まります。花は、反り返っているのが唇弁で、萼片と側花弁は細い筒状になっているのが分かります。仲間にはジガバチソウやスズムシソウなど、花が昆虫に見えるものがあるとのこと。でもまだお目にかかったことはありません。

 高原ハウス

 高原ハウスの先に見える小高い山が小丸山。その山腹がキスゲ平と呼ばれているエリアです。ちなみに写真で見えている丘は小丸山のすそ野で、山頂は見えていません。ここから山頂までの標高差は250mほどあります。



 観光客のほとんどは高原ハウス前から伸びる「天空回廊」と呼ばれる階段を登るのですが、yamanekoたちは昔からの登山道を上ります。こちらは林間コースです。 

 シモツケ

 バラ科のシモツケ。可愛らしい花です。漢字では「下野」と書き、これは下野国(しもつけのくに)に生えていたことによるものとか。その下野とはまさにここ栃木県です。



 案の定、この道を歩いている人はほとんどいません。静かな野山歩きが楽しめます。

 ニガナ

 ニガナはキクの仲間ですが、中心に筒状花はなく、舌状花が6個あるのみ。花びら1枚が一つの花なんですよね。

 アキアカネ

 林床は花は少ないですが、興味の対象は花だけではありません。これはアキアカネ。いわゆる赤とんぼです。アキアカネは夏場は高地に移動して過ごすそうなので、言ってみれば避暑に来ているということですね。

 ウグイス

 近くの梢でウグイスが鳴いています。力強い鳴き方です。ウグイスはだいたい藪の中や森の奥で鳴いていることが多く、ウグイスを写真に収めたのはこれが初めてでした。

 ムシカリ

 ムシカリが実を付けています。秋に向けて赤く熟していきます。

 分岐

 11時40分、分岐が現れました。ここを右に折れると丸山に続く道。yamaneko達は左に折れて草原に向かいます。

 ゲート

 草原に入るところには鹿除けのゲートが。回転ドアのようなしっかりした構造で、草原を取り囲むネットも破れなく設置されていました。ここはゼンテイカの群落が有名な場所。いわば重要な観光資源です。それを鹿に食い荒らされないよう万全の対策が取られているようでした。



 草原に出るとこんな感じ。広々としていて、もともとスキーのゲレンデだったところです。左手の階段は高原ハウスの前から伸びている天空回廊。天空回廊は全部で1445段あり、この辺りがちょうど中間地点辺りになります。
 眼下に見える大山(1158m)には陽が差しているよう。方角としては東方向です。



 振り返って山頂方向を見上げる。小丸山のピークはここからでは臨めません。写真ではまばらに見えますが、実際にはたくさんのゼンテイカが咲いています。

 ゼンテイカ

 ここからは草原の花々を紹介。今日の主役、ゼンテイカです。一日花ですが、まだ生き生きとしていますね。

 ハナチダケサシ

 ユキノシタ科のハナチダケサシ。花序はモジャモジャしていますが、近づいてよく見ると花弁の一つ一つがへら形をしていて、華やかです。

 クルマユリ

 緑色の草原の中で濃い朱色がよく目立っているクルマユリ。

 ノリウツギ

 高さ2〜5mになるノリウツギも草原では50cm程度。これでも立派な樹木です。

 コメツツジ

 一般にツツジと聞いて思い浮かべる花のサイズからはかなり小さいコメツツジ。花冠の経は1.5cmくらいです。

 クガイソウ

 すっと伸びた剣のようなクガイソウ。以前はゴマノハグサ科でしたが今ではオオバコ科だそうです。まだAPG体系での分類がメジャーになる前の図鑑で花を覚えてきたので、いまひとつしっくりきません。

 

 端正な姿のゼンテイカ。色は夕張メロンのようです。



 そのゼンテイカが斜面を埋めています。これは観光客も押しかけるはずです。

 クルマユリ

 草原からすっと茎を伸ばして、花冠をシャンデリアのように付けています。上下逆向きですが。

 ヨツバヒヨドリ

 ヒヨドリバナの仲間、ヨツバヒヨドリ。4個の葉を輪生させるからヨツバヒヨドリです。



 頭花はまだ蕾のものがほとんど。

 ミヤマニガイチゴ

 ミヤマニガイチゴ。低山に生えるニガイチゴに比して、葉が大きく、鋭く尖っているところが違います。

 ヤハズハンノキ

 ヤハズハンノキの葉は先端がハート型に凹んでいるのが特徴。植物の葉でこの形のものは珍しいのだそうです。



 時刻は12時10分。ずいぶん上がってきました。大山の方は相変わらず晴れているようです。
 ここまででもずいぶんたくさんの花と出会えました。この先も楽しみです。(後編に続く)