開田高原 〜山深い木曽路のその奥へ(後編)〜


 

 (後編)

【長野県 木曽町 令和5年7月31日(月)】
 
 開田高原での野山歩き。後編です。(中編はこちら
 

 Kashmir 3D

 ロープウエイで御嶽山の7合目まで上がってきて、飯森高原駅の周辺で高山植物を観察しました。時刻は11時30分です。

 黒沢口

 ここ黒沢口から登山道に入り、300m先の行場山荘まで行って戻ってきます。
 御嶽山には、黒沢口、王滝口、開田口、小坂口と主な登山口が4つあります。当然、それぞれから山頂を目指す道が延びているわけですが、山頂部は火口から概ね500m以内が立入が規制されていました。それが一昨日から一部緩和され、最高峰の剣ヶ峰に立つことができるようになったようです。10月11日までの時限措置とのことです。

 イチヤクソウ

 登山道に入ってすぐ、イチヤクソウに出会いました。足下の下り斜面にあり、花も下を向いて咲いているので後ろ姿しか見ることができませんでしたが、やっぱりテンションが上がります。



 登山道にはチップが敷き詰められていて歩きやすいです。登山道と言うより散策路ですね。

 タケシマラン

 これはタケシマランですね。葉腋から長い花柄が出て赤い実をぶら下げています。ちなみにこの花もランの名を持っていますが、ユリ科です。

 シャクジョウソウ

 おっ、シャクジョウソウが。葉緑素を持たない腐生植物で、目立たないのでうっかり見逃しそうになります。シャクジョウとは修行僧が持つ錫杖のこと。確かに杖の先に金属製の輪のようなものがいくつも付いていますね。それに似ているということでしょう。

 ヒメウスノキ

 これはヒメウスノキの実ですね。大きさは草丈ほどしかないですが、立派な樹木です。

 マイヅルソウ

 この時期のマイヅルソウの実はマーブル模様。熟すと深紅に輝く宝石のようになります。

 丁字路

 丁字路に行き当たりました。黒沢口登山道としてはここを右折して登っていきます。左は麓に下る道。ここは右へ。

 モミジカラマツ

 これは相当悩みましたが、モミジカラマツで間違いないと思います。もう果実ができていて、それが特徴のあるキツネノボタンの果実に似ていたので、キンポウゲ科に絞って調べ、葉の形、花柄の様子なども確認して判断しました。花が咲いていれば一発で分かるのですが。でも、こういう調べて答えにたどり着く過程も面白いです。

 クロウスゴ

 これもちょっと悩みましたが、クロウスゴ。果実が少し萎み気味だったので、初めは別のものと思ってしまいました。

 ゴゼンタチバナ

 一株だけ残ってくれていたゴゼンタチバナ。この花を見ると高い山に来たんだなと実感します。白い花弁のようなものは総苞片で、花冠の中心に見えるのが花。もう花弁は落ちてしまっています。

 行場山荘

 丁字路からほどなく、行場山荘が見えました。たくさんの登山客が休憩していて、その多くが白い装束でした。さすがは信仰の山ですね。

 ミヤマホツツジ

 ミヤマホツツジ。ホツツジの高山型で、雌しべの先がL字形に曲がるのが特徴です。他にも、花の色(ホツツジはやや薄桃色がかる)や葉の形などにも違いがあります。



 ロープウエイの駅に向かって戻ります。

 イチヤクソウ

 ちょうど目の高さに生えているイチヤクソウを見つけました。往きには気がつきませんでした。花冠の中もしっかり観察することができて、満足。

 飯森高原駅

 12時35分、登山口まで戻ってきました。飯森高原駅、こちら側から見ると倉庫ですね。

 オンタデ?

 再び高山植物園へ。これはオンタデでしょう。漢字では「御蓼」。オンタデの「御」は御嶽山の御で、これはこの植物が御嶽山で初めて発見されたことによるものだそうです。

 ホソバノキソチドリ

 この工芸品のようなものはホソバノキソチドリ。何だか複雑な形をしていますね。1個の花に注目してみると、長い距が目立ちます。あと、背萼片と側花弁が手のひらで包むようにずい柱を囲んでいるのが分かります。クリオネみたいな姿ですね。
 名前に「木曽」の字がありますが、これはキソチドリが木曽地方で初めて見つかったことでこの名を冠し、その葉の細いバージョンのホソバノキソチドリに引き継いだものです。

 モウセンゴケ

 モウセンゴケ。長い花茎の先端に白く可憐な花を付けますが、その花茎の根元には粘液で虫を捕らえる葉を広げています。恐ろしや。



 山頂方向を見上げると…、やっぱり雲の中でした。

 オヤマリンドウ

 オヤマリンドウ。今日は陽が差していないのでこの姿です。ただ、陽が差してもそんなには開きません。
 ところで、オヤマは「御山」と書きますが、これは御嶽山のことか?

 シナノオトギリ

 これはシナノオトギリでしょうか。図鑑では、葉の縁に黒点があるとか花弁に黒線があるとか萼の縁に黒点はないとか他のオトギリソウの仲間との相違点が挙げられていましたが、そのいくつかは確認できました。

 ヤマブキショウマ

 ヤマブキショウマです。雄株と雌株があり、雄株の方がたくさん花が付きます。これは雌株かな。

 ウド

 これはウドですね。「独活の大木」のウドです。タケニグサとかイタドリとか他にも大きくなる草本はたくさんあるのに、ウドにとっては迷惑な言われようです。



 さて、ロープウエイの駅まで戻ってきました。駅に併設されているレストランで昼食をとってから下りることにします。
 やっぱり今日は雲が晴れませんでしたね。

 ノコギリソウ

 ロープウエイで鹿ノ瀬駅まで下りてきて、その周辺を散策。
 これはノコギリソウ。葉がチェーンソーのようなギザギザになっているのが名の由来です。

 カワラナデシコ

 秋の七草のうちの一つ、カワラナデシコ。

 キキョウ

 キキョウも秋の七草のメンバーです。

 鹿ノ瀬駅

 往生際が悪くロープウエイを下りてからも辺りをウロウロしていましたが、妻に促されて駐車場に向かいました。今日の泊まりは麓の木曽温泉。おんたけロープウエイと同じ会社が運営している温泉旅館で、最近はやりのグランピング施設もあるようですが、yamanekoは普通に建物内の部屋にチェックインです。
 
 翌日、木曽路の西端に位置する妻籠宿と馬籠宿を観て、今回の長野の旅を終えました。