稲含山 〜信仰を育んだ偉容の山(後編)〜


 

 (後編)

【群馬県 下仁田町 令和4年6月25日(土)】
 
 頂近くにいくつかの社を抱く信仰の山、稲含山での野山歩きの後編です。(前編はこちら
 

 Kashmir3D

 神の池公園の登山口からスタートし、谷側の登山道を歩いて旧秋畑稲含神社までやって来ました。時刻は10時40分です。



 社殿の裏手から更に登山道が延びています。片側は深く切れ込んでいるので、ゆっくり確実に歩いて行きました。

 マイクロワールド

 スギゴケの中から小さなキノコが。高さ1cmほどで、カメラを寄せると別の世界のように見えました。

 分岐点

 3分ほど歩くと右手から登山道が合流してきました。茂垣峠から尾根を伝って登ってくるルートです。ここは左手のフェンスのある方に向かいます。山頂までの標高差は概ね50m。もうひと頑張りです。



 小さな石仏があったので今日の無事をお願いしました。



 急坂を上ることしばし、木立の奥に建物が見えました。さっきの旧秋畑稲含神社の門と同じような建物型の門です。こちらはトタン張りのような外壁でした。

 栗山稲含神社

 門をくぐると栗山稲含神社の本殿が現れました。尾根の先端部が整地され、人は常駐していないもののこちらは現役のよう。この社殿は平成2年建立とのことです。築30年ちょっとか。



 神社で尾根道を折り返すような形で山頂を目指します。あとちょっとです。



 最後のひと登りの先に山頂が開けました。時刻は11時5分です。

 三角点

 山頂は八畳間ほどの広さで、中央に三角点と標識が設置されていました。陽射しを遮るものは何一つありません。
 標識には「平成九年度 稲含山遊歩道整備事業 下仁田町長」と記されたプレートがはめ込まれていました。ここ稲含山の山頂は下仁田町になるのです。一方、稲含神社(旧秋畑稲含神社)は境界上にあり、だからこそ領有権争いが起こったのでしょうね。山頂がどちらになるかはたいした問題ではなかったのかもしれません。

 暑いですが、ここはたっぷりと眺望を楽しみましょう。まずは西方向です(写真にマウスを乗せると山名表示)。遠くには有名どころが目白押しです。浅間山、、蓼科山、八ヶ岳、金峰山などは概ねここから40km前後の距離です。近くに目を移すと、正面手前の烏帽子形の山容は小沢岳、その右手やや奥は鹿岳や物語山になります。

 北方向

 パノラマ写真の右つながる写真がこちら。方向としては北になります。正面の山塊は榛名山。上毛三山の一つです。

 北東方向

 更に右につながる写真。遠くにうっすらと赤城山の山塊が見えています。こちらも上毛三山の一つです。赤城山の裾野は広く、なんでも富士山に次いで日本第2位なんだそうです(どう計測するのか?)。

 那須集落

 東側に目を移すと眼下には那須集落が。あそこから上ってきたのです(車で)。それにしても稲含神社の祭礼や維持作業のたびにあの集落から登ってきたのかと思うと、あらためて信仰の力とはすごいものだと思います。

 昼食

 山頂でひとしきり眺望を楽しんだ後は、照りつける陽射しを避けて栗山稲含神社まで戻ってきました。時刻は11時20分、ちょっと早いですが昼食です。
 出がけにコンビニで買ってきた唐揚げ弁当。ですが、ここで割り箸がないことに気づき、しばし思考停止。最終的に手づかみで食べるという形に落ち着きました。ご飯もです。

 ブナの実

 辺りにブナの実がたくさん落ちていました。クマの好物なんですよね。



 食事を終えたら下山です。

 分岐

 すぐに分岐が現れました。ここを左手に下りていきます。往路は正面からやって来ました。



 分岐から5分ほどでベンチが現れました。その前だけ木立がなく景色を眺められるようになっていました。



 方角としては北北西になります。写真左奥の大きな山は浅間山。正面の最奥は浅間隠山と鼻曲山。その手前にはギザギザ稜線の妙義山です。



 小休止の後、再び下り始めます。
 「て」の字に褶曲した地層がありました。褶曲はもっと大きな規模で起こるものというイメージがありましたが、こんなピンポイントで褶曲が起きるってどういう現象でしょうか。



 長い階段を下っていきます。膝が笑ってしまいそう。

 シソバタツナミ

 シソバタツナミ。「タツナミ」とは「立浪」のことで、花の形が砕ける波頭のようだからです。たまにこんな可愛い花が現れるので、長い下りも苦になりませんね。

 赤鳥居

 12時5分、赤鳥居が現れました。これは下仁田側の人が建てたものでしょうね。

 茂垣峠

 赤鳥居のすぐ先が茂垣峠です。林道が開通するまでは人々はここを越えていたんですね。その林道からここまで車が上がってこられるほどの道が取り付けられています。

 茂垣峠

 yamanekoは昔の峠道の方を歩いて行きます。



 この道を進むと一ノ鳥居のところに出るはずです。この辺りにもコアジサイがたくさん咲いていました。今日はこの花が主役だったようです。

 クモキリソウ

 足下にこんな花も。クモキリソウです。花も緑色なので注意していないと気がつきません。この先もあちこちで顔を見せてくれました。

 一ノ鳥居

 下り坂の先に一の鳥居が見えました。秋畑から登ってきた人は、神社に向かうときは鳥居をくぐって直進し、下仁田に向かうときはこちらに上ってきていたのだと思います。

 林道

 林道が見えました。これを横切って更に下って行きます。

 駐車スペース

 12時30分、無事に登山口に戻ってきました。出発時から車が2台増えていますね。さあ、帰りの準備です。
 靴を履き替えるときに右足のふくらはぎが攣ってカッチカチに硬直。涙が出そうなほど痛かったです。回復するまでに数分を要しました。そのあと念入りに整理体操をしました。

 麓からの稲含山

 ドリーム号Vに乗って林道を下り、県道46号線を富岡ICに向けて走りました。
 上の写真は、富岡市内の蛇宮神社前から望む稲含山(中央やや右手)。数時間前まであのピークにいてこの辺りを眺めていたのです。この偉容とも言える特徴のある山容からすると、麓の人々がなにやら信仰に通じる思いを持ったことは想像に難くありません。農耕と養蚕の神様にあの頂にいてもらって、自分たちの生活を見守ってもらいたいと思ったのでしょうね。
 
 帰りの高速道路、まったく渋滞していませんでした。ありがたや。