今倉山・二十六夜山 〜道志山塊の絶景展望台(前編)〜


 

 (前編)

【山梨県 都留市 平成25年4月28日(日)】
 
 やって来ましたGW。今年は連休中を通じて天気が良いようです。そうなると出かけないわけにはいかんです。初日は家の用事を諸々こなして、今日は山梨県南東部にある今倉山と二十六夜山へ行ってみることにしました。
 今倉山は道志川を挟む東西稜線の西側に位置し、二十六夜山はその支稜線上に位置しています。ちなみに同じ道志山塊にはもう一つ二十六夜山と同名の山があって、今回登る方は「道志二十六夜山」、もう一つの方は「秋山二十六夜山」と呼び分けられているそうです。
 
                       
 
 道志山塊に入るには、相模原市から道志川をさかのぼるという、いわば正面からのアプローチもありますが、今回は西側の都留市街から回り込むルートをとりました。高速道路を使えるので時間的にはこちらが早いのです。
 午前6時、ドリーム号に乗って出発。首都高4号線から中央道に入り、ひたすら西に向かって走ります。ところが調布の先辺りで早くも渋滞につかまってしまいました。どうやら小仏トンネルに故障車があり、そこから約30qつながっているようです。これには多少うんざりはしましたが、こういった渋滞を見越しての6時出発だったので、まあよしとしました。
 大月JCTで河口湖線に入ると都留ICはほどなく。インターを下りてすぐの都留の街はまだ朝の静けさの中でした。市街地を抜けるとすぐに山間の道に。ここをずっと行くと、道坂峠をトンネルで越えて、道志に至ります。

 駐車場

 8時35分、道坂トンネルのすぐ手前にある駐車スペースにドリーム号を停めました。トンネル入口の左手に6、7台止められる駐車場があるのですが、ここは既に満車。その反対側にある空き地にも車を止めることができます。


Kashmir 3D

 今日のルートは、トンネル脇の登山口から峠の鞍部に出て、そこから稜線を北上。今倉山を目指します。今倉山からは西に延びる稜線を歩き、眺望抜群の赤岩へ。その後さらに西に向かい、林道を横断して登り返すと二十六夜山です。帰りは林道を下ってドリーム号のところまで戻ってきます。

 登山口

 装備を整え、ストレッチをして、8時50分に出発。トンネルの左側に登山口があります。この峠道は走り屋に人気があるようで、ときおり爆音をとどろかせて通り過ぎていきます。
 ちなみに休日には8時台と9時台に1本ずつ都留市街からここまで路線バスが走っていて、これで入山する登山客も多いようです。

 まずは峠の鞍部を目指して登っていきます。この辺りは季節が1箇月以上遅いようで、木々はまだこれから芽吹くところ。梢を通して明るい光が地面に降り注いでいます。気持ちいいです。

 アカフタチツボスミレ(?)

 葉の葉脈が濃い紫色をしているこのスミレ。櫛状の托葉があるところを見るとタチツボスミレの仲間ようです。葉脈に沿って紫色になっているところを見るとアカフタチツボスミレではないかと思いますが。スミレは難しいです。

 エイザンスミレ

 葉が細く避けているのはエイザンスミレ。これは分かりやすい特徴です。

 見上げると淡い緑色。こんな景色の中で山歩きができるなんて、ほんと幸せです。

 稜線へ

 9時25分、稜線に出ました。ここは左手に上っていきます。右手に行くとすぐに鞍部で、そこからさらに南に登り返していくと御正体山に至ります。

 稜線の道も明るい、というより眩しいくらいです。この時期、既に紫外線量はかなりのものなので、うっかりしていると日焼けでヒリヒリすることがあります。また、日焼けをすると疲労も大きいので、山歩きの際には日焼け止めは忘れないようにしないと。

 ヒゴスミレ

 エイザンスミレよりさらに葉が細いヒゴスミレ。純白の花弁がスッキリとした感じです。

 ミツバツツジ

 ミツバツツジもこれからです。花弁が輝いていますね。

 南アルプス

 梢の隙間から雪を戴く南アルプスの峰々が望めました。右が荒川岳(3141m)、左が赤石岳(3120m)です。ここから直線距離で70qくらいです。
 北アルプスを飛騨山脈、中央アルプスを木曽山脈というように、南アルプスを赤石山脈といいます。その名の元となったのがこの赤石岳。隣の荒川岳よりも低く(それでも3000m超え)、南アルプス内でも4番目の標高ですが、なぜか山脈の名にこの山の名を冠しています。「赤石」とはその名のとおり赤い石のことで、これは深海に微生物の殻が堆積してできた赤色チャートという岩石のこと。つまり南アルプスは深海の海底が隆起してできた山脈だということです。一方、中央アルプスはほぼ全体が花崗岩でできていて、これは大陸内部の岩石が隆起したもの。また、北アルプスは火山噴火でできた山脈だそうです(中央アルプスと南アルプスには火山はないのだとか。)。それぞれ成り立ちの違う3つの山脈が近接して日本の屋根を構成しているというのも不思議なことですね。

 アケボノスミレ

 さて、南アルプスを堪能した後は再び登りはじめます。
 鮮やかな赤紫色がよく目を引くアケボノスミレ。葉の展開が遅いのも特徴で、ここで見かけたものはみな葉が出ていませんでした。

 紅葉

 葉を開きつつあるモミジの葉。全体に赤いのは、まだ葉緑素が作られていないから。もともと紫外線から葉を守るために赤い色素を持っているのだそうです。まるで秋の紅葉のような姿です。触ってみたらしわしわで軟らかかったです。

 いくつかの小さなピークを越えて標高を上げていきます。向こうに見えるのが今倉山。まだまだです。

 カラマツ

 カラマツの芽吹き。触るとまだ軟らかくしなやかです。

 ヒトリシズカ

 こちらも芽吹いたばかりのヒトリシズカ。これから開く葉がまだ花を包み込んでいます。白い棒のようなものが雄しべで、花弁はありません。ときどき花弁のない花というのに出会いますが、よく考えると究極的には雄しべと雌しべさえあれば花としての機能を果たせるんですよね。ヒトリシズカは派手な花弁に頼らずに虫を呼べるということでしょうか。

 ワチガイソウ


 この季節、稜線で出会う花々は大ぶりなものはなく、皆小さくて可愛いです。これはワチガイソウ。「ワチガイ」とは「輪違い」という和紋様の一種のことで、分かりやすく言えばアウディのマークです。昔、この花の名前が分からず「○○草」と表記していたところ、○と○とを重ねて書いてしまってそれが輪違い模様に見えたことによるというのですが…、ホントかいな。

 ミツバツチグリ

 パラボラアンテナのようなミツバツチグリの花。陽光を正面から受信しています。

 

 マメザクラ

 根本から株立ちになる桜ってそういえばあまり見かけませんよね。これはマメザクラ。ランプシェードのように枝からぶら下がって咲きます。

 日本人の魂

 おお、日本人の魂、富士山です。ここからだとずいぶん近くに見えます。登山道もくっきりと。(この2日後に世界遺産登録が内定)

 今倉山山頂

 10時35分、今倉山の山頂に到着しました。花を見かけるたびに立ち止まっていたので、1時間半以上かかってしまいました。ここでしばし休憩です。

 山頂は木立に囲まれていましたが、まだ葉が展開していないので陽光が燦々と降り注いでいます。あまりに気持ちいいので記念写真など。

 ブナ

 山頂には写真のような大ブナや大ミズナラが聳えていました。すごい存在感でした。

 次の峰へ

 今倉山山頂では15分ほど休憩。アンパンで栄養補給をしてから出発です。ここからは西に向かって延びる稜線を歩いて行きます。

 ヤブレガサ

 いったん下った鞍部にはヤブレガサご一行様が。この姿、言い得て妙なネーミングですね。ヤブレガサというと、「てめえら人間じゃねえ!叩っ斬ってやる!」ってフレーズが出てきますが、これは萬屋錦之助が演ずるところの「叶刀舟」。中高生の頃よく見ていた「破れ傘刀舟悪人狩り」というドラマです。

 イワボタン

 つい見過ごしてしまいそうな小さな株のイワボタン。”ここにいるよ”と呼びかけてくれた(ような気がした)ので気づくことができました。別名をミヤマネコノメソウといい、数あるネコノメソウの仲間の一員です。

 御座入山

 11時5分、今倉山から15分ほどで次のピークの御座入山に到着。ここはそのまま通過です。

 アブラチャン

 アブラチャンの花が咲いています。この時期に咲いているとは、やはりここは季節の巡りが1箇月以上遅い感じです。種子や木の皮が油分を多く含んでいて生木でもよく燃えるのだとか。だからアブラチャン。「チャン」とはピッチとかコールタールとかのことだそうです。

 絶景!

 御座入山を越えて下り始めたとき、見晴らしのいい岩場に出ました。そこからの眺望が…。

 バーン! こんな感じ。道志山塊の盟主、御正体山の肩越しに富士山の秀麗な姿が。この山はやはり別格としか言いようがないですね。神々しいほどの美しさです。
 
 さて、これから向かう赤岩ではこれに劣らぬ絶景が待っているとか。そしてその先には今日の最終目的地の二十六夜山が(最終目的地は無事に帰った我が家、ですけどね。) 続きは後編で。