生田緑地 〜多摩丘陵の秋静か〜


 

【川崎市 多摩区 平成27年10月18日(日)】
 
 10月も半ばになってすっかり秋めいてきました。今回の野山歩きは、先月に続き、以前定点観察をしていた場所の再訪です。行き先は川崎市にある生田緑地。ここには7年前の平成20年に1年間、毎月1回自然観察に訪れていました。(こちら
 
                       
 
 秋の陽は傾き始めるのが早いので、早めに昼食をとり、ドリーム号で出かけました。町田街道、芝溝街道、津久井道と走り継いで、根岸陸橋から専修大学方面に丘を登っていきます。途中、新百合ケ丘辺りで渋滞もあり、なんだかんだで1時間半くらいかかってしまいました。

 駐車場

 駐車場のゲート前には既に7、8台が入場待ちで並んでいました。ドリーム号もその最後尾へ。途中で諦めて離脱する車もある中、じっと待つこと15分、思ったより早く駐車場に入れました。以前来ていた頃より随分きれいに整備されています。駐車場の片隅に公園の情報を見られるサテライトが作られていたり、トイレとかも新しくなっていました。

 谷戸へ

 駐車場は南北の谷戸を隔てる尾根の上にあり、そこから30mほど行ったところに北側の谷戸に下りていく入り口があります。ちなみに南側の谷戸は日本民家園として整備されています。

 入り口から一気に15mほど下っていきます。こっちの谷戸は公園というより純粋に森です。
 谷戸の最奥部に下りたところで、そのまま下っていく道と谷戸の斜面をトラバース気味に水平移動していく道とに分かれています。ここは斜面の道の方を。谷戸内をぐるっと回って、帰りは正面の道から上がってくるルートにしたいと思います。

 コウヤボウキ

 静かな谷戸。木々の間から差し込む日光でコウヤボウキの花が白く輝いています。

 ハンノキ林

 徐々に谷戸の底に向かって下っていきます。ハンノキの林の中でさっき分かれた道と合流しました。

 シロヨメナ

 日陰に咲くシロヨメナ。写真では随分寒々とした感じですが、実際にはもう少し明るい雰囲気でした。

 イヌタデ

 白い秋の陽の中、イヌタデも残りわずかな花期を静かに過ごしているようでした。

 チカラシバ

 傾斜が緩くなると谷戸の幅も広くなり、ちょっと開けた感じの場所に至ります。チカラシバが勢いよく茂っていますね。ここから谷戸口まではまだ200mくらいはあります。

 昔は谷戸の中まで畑や水田が作られていたでしょう。このカキノキも農家さんが植えたものだと思います。
 谷戸は水の便や平坦地の広さとの兼ね合いで、谷戸の入り口に近い方が水田、中ほどが畑、そして最奥の森に接しているところが柴刈り場、といった区分利用がなされていました。ここの谷戸にも少し畑や水田が残っていて、市民団体の方々が農業体験などの活動をされているようです。

 ツリフネソウ

 ツリフネソウ。もう花の数より実の方が多いですね。この実を触るとスプリングのように跳ねて裂け、辺りに種を撒き散らすので、分かっていてもつい「おおっ」と言ってしまいます。

 ムクノキ

 おっ、これはムクノキですね。もう実が黒く熟しています。見た目、シワシワになっているやつの方が甘く、まるで干し柿のような味と食感です。実の量はわずかですが。

 ここは定点写真を撮っていたところ。両側の木の枝が随分大きく茂ってきているような気がします。8年の月日の流れは…、待てよ、自分も8つも歳を重ねたということか。

 ミゾソバ

 水辺や水田脇のような環境を好む植物。ミゾソバです。背の低い地味な印象の花ですが、小さな花冠をアップで見てみると、透明感のある可憐な姿をしていることが分かります。でも花弁に見える部分は萼だという、よくあるタイプ。

 ツワブキ

 一旦、谷戸口近くまで出てから、以前、戸隠不動があった(平成5年に焼失)丘に上がります。早くもツワブキが花を付けていました。葉は革質で艶があり、名前は「艶蕗」が転じたものとのことです。子供の頃、火傷をするとおばあちゃんがツワブキの葉を貼り付けてくれました。火傷に効く民間薬として重宝されていたんですよね。

 クマノミズキ

 クマノミズキの花序を拾いました。サンゴみたいです。この時期には赤く色付き、花序の根元から取れてよく地面に落ちています。木の枝に付いているときからよく目立っているので、間違うことはありません。

 再び谷戸に下りていきます。もう随分陽が傾いてきましたね。

 ヤブミョウガ

 最初に入ってきた谷戸の入り口を目指して徐々に登っていきます。それにしても静かな森です。 ヤブミョウガの果実。黒く熟してツヤツヤしています。名前にはミョウガと付きますが、ミョウガとは無関係。これでもツユクサの仲間だそうです。

 ヤマハギ

 ヤマハギが実を付けていました。そういえばハギの実をあまりじっくりと見たことがなかったかもしれません。こんなだったか。扁平で果肉も少なそうですが、この実を粉に挽いて粟と一緒に蒸して作ったのが元々のおはぎなのだとか。昔の人は小さな実りでも上手に利用していたんですね。

 谷戸を一回りし、1時間ほどで元の場所に戻ってきました。ちょっと疲れたので茶屋で休憩をしてから帰ることにしました。ここから道に沿って3分くらい下ったところに何件かあったはずです。

 日本民家園

 日本民家園の中にある合掌造りの古民家(五箇村から移築したものだとか)が蕎麦屋になっていて、甘味もあったので、ここで休憩。あんみつで元気を取り戻しました。あと、隣の卓に生後3カ月の赤ちゃんがいて、可愛すぎて癒されました。
 
 復路は府中街道から矢野口で尾根幹線に入るルート。夕方でしたが大した渋滞もなく帰り着くことができました。