生駒山 〜足早に過ぎる春を楽しむ(前編)〜


 

  (前編)

【大阪府 東大阪市 平成30年4月21日(土)】
 
 大阪に引っ越してきて3週間。家の中もようやく片付いてきました。今年は春の一番良い数週間を引っ越しのバタバタの中で過ごしてしまったので、遅ればせながらこのタイミングで春真っ盛りを楽しむことにしました。目的地は生駒山。家の近所からも見える山です。
 
                       
 
 大阪平野の東側には、奈良盆地との境をなす山地が南北に走って連います。その中ほどを大和川が分断し、南側を葛城山地、北側は生駒山地と呼ばれています。生駒山はその生駒山地の主峰。標高は642mで、山上に何基もの電波塔があるのが遠くからでもよく見えます。
 午前8時前、まずは自転車でJR久宝寺駅へ。20分ほどで到着し、ここからおおさか東線で河内永和駅へ。そこで近鉄奈良線に乗り換えて、生駒山の麓の石切駅で下車しました。近鉄奈良線は石切駅の数駅前辺りから山腹に沿ってどんどん高度を上げていき、ここ石切駅を過ぎたところで長いトンネルに入って、3..5km先で奈良盆地に顔を出します。

 石切駅

 9時40分、石切駅に到着。この週末の天気は全国的に夏日の予報でした。既に梅雨入り前のような陽射しが降り注いでいます。出発の準備をしていると、地元の消防署の人が啓発活動をしていて、「山火事防止」のメッセージがプリントされたウエットティッシュをくれました。ハンカチを忘れて行ったyamanekoとしては大助かりでした。

 Kashmir 3D

  今日のルートは、石切駅から住宅地を抜け、「くさかコース」を辿って稜線に向かい、稜線直下を並走する「生駒縦走歩道」へ。山頂部には入園無料の遊園地があり、その中を抜けて山頂へ。下山は摂河泉展望コースを辿って額田駅に下ります。額田駅は石切駅の一つ手前の駅になります。

 石切駅前

 9時50分、装備を整えてスタート。輝くような青空です。 まずは住宅地を山に向かって進みます。道の進行方向右側には駐輪場がずらっと。見るとほとんどが原付バイクです。なるほど、山の斜面にある駅なので、自転車で来るというわけにはいかないんですね。

 大阪平野

 左手の視界が開けました。この辺りの標高は約100mで、大阪平野が一望できています。写真右側には梅田界隈の高層ビル郡が、また左端にはアベノハルカスも見えています。夜景も綺麗でしょうね。

 しばらく行くとやがて家並みは途切れ、急に山っぽくなってきました。道はまっすぐ登っています。

 登山口

 久しぶりの山歩きに息が上がり始めた頃、左手に登山口が現れました。ん、何やら注意書きが。奥多摩とかなら「熊に注意」なんでしょうが、ここは「イノシシに注意」でした。イラストのイノシシはなかなか好戦的に描かれていて面白かったです。

 シャガ

 山道に入って一段と傾斜が増しました。シャガの花に癒されます。

 常緑樹の森を登っていきます。少しずつ坂道に慣れてきました。勘が戻ってきたみたいです。

 カマツカ

 この白い花はカマツカですね。若い葉は細かい鋸歯のある縁が褐色がかっていてよく目立ちます。材は硬くて、鎌の柄に用いたことが名の由来だとか。別名に「ウシコロシ」という物騒なものも。

 モチツツジ

 暗い茂みをバックに浮かび上がるツツジ。 葉の両面と縁に毛が密生していています。モチツヅジでしょう。「モチ」とは鳥黐(とりもち)のこと。新芽や若葉、萼などに粘りがあることからこの名がついたといいうことです。

 ウワミズザクラ

 おおっ? 足下にウワミズザクラの花が。引いてよく見てみると、頭上の大きな枝がその付け根から折れていて、枝の先端部が地面近くに垂れ下がっていたものでした。この木のほとんどの花はもう花期を終えていましたが、かろうじてつながっている枝の先には栄養が届きにくかったのか、今がちょうど花の盛りになっていました。

 登山道には標識が整備されていて、迷うことはまずありません。今歩いている道は「くさかルート」という道です。石切駅の北側には「日下」(くさか)という地名があるので、そこからのネーミングでしょう。

 見上げると輝くような青空。初夏と見紛うほどです。

 コバノガマズミ

 登山道沿いでは様々な花が次から次へと現れてyamanekoを迎えてくれます。これはコバノガマズミですね。小さく繊細な花がたくさん寄り集まっています。

 シロダモ

 うなだれているように見えるのはシロダモの若葉。まさに展開中です。触るとこの時期だけビロードの触感があって、しかも黄金の輝き。でも来月くらいには毛はきれいに落ちてしまって、写真下の葉のように硬くテカテカになるのです。葉としてはこれが完成形です。

 ニオイタチツボスミレ

 むむ、これはニオイタチツボスミレか。(若干自信なし。)

 ツリバナ

 天然のモビール。ツリバナです。この花の写真を撮るときはだいたいこういうアングルになります。

 木漏れ日が気持ちいい。むしろ初夏のような感じで、少し汗ばむくらいです。ここ半月の慌ただしさをすっかり忘れられるほどリラックスできますね。

 ムラサキケマン

 ムラサキケマンも早くも盛りを過ぎた感じ。その中でまだフレッシュなものを。

 ハクサンハタザオ?

 うーん、これはハクサンハタザオ? それともシコクハタザオか?

 やがて東屋が現れました。この先に開けた場所があってそこを「こぶしの谷」というのだそうです。この陽気なのでコブシの花はとうの昔に散ってしまったのでしょうね。

 こぶしの谷

 ここがそのこぶしの谷。いくつかの登山道がここで交差していました。

 明るい園地を上っていきます。頭上が開けてきたところを見ると、もうじき稜線に出るようです。

 カキドオシ

 カキドオシ。みんな「気をつけ」で整列していますね。

 キランソウ

 見かけるとつい「キラーン!」と言ってしまう、これはキランソウ。ちなみに漢字では「金瘡小草」と書くのだそうです。

 クサイチゴ

 カキドオシ、キランソウとともに地面に近いところで咲くクサイチゴ。「クサ(草)」と名が付いていますがれっきとした木なんですよね、これが。

 頭上から「ピリリーチョッ、ピリリーチョッ、ピリリーチョッ」と澄んだ鳴き声が。これはキビタキのものです。探してみると、いました。遠くから渡ってきて、この森を選んだんでしょうね。それともまだ渡りの途中か。

 11時10分、管理道に出ました。ここからは生駒縦走歩道(途中まではこの管理道)を山頂に向かって歩きます。

 管理道

 地図を見ると、この管理道は稜線の20mくらい下を稜線に沿うように伸びています。舗装はされていますがやや痛んでいる様子。現在、生駒山を訪れる多くの人は車で上がってくるだろうことを考えると、登山道でもなく車道でもないこの道を使う人はそう多くはないと思います。

 ニワトコ

 ニワトコが早くも実を付けていました。この木は昔から人との関わりが深かったようで、葉を食用にしたり(体質によって下痢などの症状が出るようなので注意)煎じて解熱や利尿の薬にしたり、また、実は果実酒にしたりと、様々に利用してきたようです。民俗的には魔除けに用いたりしてい地方もあるのだとか。
 
 さて、生駒山への山歩きはまだまだ続きます。ここまで多くの花々に出会えてハッピー! この先は後編で。