破風山 秩父盆地の展望台(前編)〜〜


 

 (前編)

【埼玉県 皆野町 令和元年11月10日(日)】
 
 11月に入って爽やかな秋晴れの日が続いています。今年は紅葉も遅いようで、しかも先月は雨ばっかりでしたから、遅ればせながらこれから秋本番を楽しみたいと思います。
  今回の野山歩きは秩父盆地の北側に位置する破風山。山頂からの眺めが素晴らしいとのことなので、一汗かきに行ってみることにしました。温泉もあるので、下山後の楽しみもあります。ちなみに「破風」の読みは「はふ」ではなく「はっぷ」だそうです。

 
                       
 
 午前7時半、ドリーム号で出発。晴天の土曜日ですが、下道も高速道路も渋滞はありませんでした。 花園ICで関越自動車道を下り、国道140号線を秩父方面へ。途中から皆野寄居有料道路に入って近道をしました。ところでこの有料道路、ETCやカード決済は不可で、ブースに係員が入って現金をやり取りする方式でした。懐かしいというか、未だにというか。夜中はどうしているんでしょうか。
 有料道路を出た後、河岸段丘を下り、荒川を渡ってまた段丘を登り返してしばらく行くと、皆野町の下日野沢というところに至ります。ここが今日の拠点。「満願の湯」という温泉施設があり、その奥に登山者用の駐車場がありました。ざっと20台くらいは停められるでしょうか。ちゃんとしたトイレもあって、地元の方のホスピタリティを感じました。

 Kashmir 3D

 今日のコースは、まず林道を歩き、一段高いところにある風戸(ふっと)集落を目指します。その集落の最奥から山道に入り、稜線に出たらそこからは尾根沿いに登っていきます。山頂を踏んだ後は反対側の尾根道を下り、札立峠から北側の谷筋へ。水潜寺の先で日野沢川沿いに出たら、そこからはスタート地点まで車道を歩いて戻ってきます。

 出発

 9時50分、準備体操をしてからスタートです。老人保健施設を右手に見ながら歩いて行きました。空気はそれほど冷えてはいません。



 すぐに林道に突き当たり、そこを左折して坂道を登ります。



  この先には集落があるので道はちゃんと車が通れるくらいには整備されていますが、ちょっと薄暗く寂しい感じでした。

 風戸集落入り口

  道は大きく蛇行しながら高度を上げていき、やがて開けて段々畑が現れました。この辺りから風戸集落です。

 八王子様

 集落の入り口辺りに「八王子様」という小さな社があったので、手を合わせ、お邪魔してますということと、今日一日怪我なく遊ばせてくださいということをお願いしました。実際のご利益は別として、よそ者が地元の方の生活圏で無遠慮な振る舞いをしてはならない、といった自戒も込めて意識してやるようにしています。良識人を気取るつもりはありませんが、実際山に行くと謙虚になるのは不思議です。自分が弱い存在だということを肌で感じるからでしょうね。
 ちなみに八王子様というのは八王子権現(午頭天王の8人の御子神)のことのようです。

 ビワ

 ビワの花序が蕾を付けていました。冬に咲く花です。このビワのような実が生る樹木があるということが集落の特徴で、既に家屋が消滅したような集落跡でも、このような樹木の存在でかつてそこに集落があったことが分かったりします。

 ムカゴ

  こちらはヤマノイモのムカゴ。これは自然のものでしょうね。葉が対生に付くので、よく似たオニドコロとの見分けも簡単です。



 登ってきたところを振り返るとこんな感じ。この時間、日当たりは良いですが、東向きに開けた場所なので午後には陰るのが早いのではないでしょうか。
 ここまでに人が住んでいる民家はまだ1軒。電線が通っているところを見ると、この上にも何件かあるのでしょう。

 ツルウメモドキ

 ツルウメモドキの実が熟し、開裂し始めています。完全に開くと中から濃い朱色の種子が出てきて、見た目にも可愛いので、蔓と一緒にリースの材料にされることも多いです。

 チャノキ

  放置され野生化しつつあるチャノキ。そう、お茶の木の花です。これも人の生活の痕跡を示す植物として分かりやすいです。

 オニグルミ

 また一段上がるとオニグルミの木が現れました、この辺りが風戸集落の中心でしょうか。ただ、家屋は点在していますが空き家も多いようでした。



  更に上っていくと土蔵が。漆喰が剥げ落ちている感じも渋くて、いい雰囲気ですね。

 コセンダングサ

 道端にコセンダングサが。痩果の先端の角みたいな部分には下向きに棘が生えていて、これが人や動物にくっつきます。いわゆる「ひっつき虫」の一つですね。センダングサより小型ということで「コ(小)センダングサ」とのことですが、特段センダングサより小ぶりということはありません。



 舗装路のどん詰まりまで上がってきました。ガイドブックでは、ここが集落最奥の民家であり、その脇から登山道に入る旨の説明があったので、民家(既に無人のようでした)の庭先まで行ってしまいましたが、どうもここではないよう。



 実際には民家の手前に分岐があり、そこから民家を巻くようにして登山道が伸びていました。(気がつかなかったのは自分だけ?)



 その分岐の前に眺望の開けた広場と東屋がありました。集落の最上部に設けられた展望広場で、ピクニックなどにちょうど良いような場所でした。春に花見などしても楽しいでしょうね。

 宝登山

 正面には宝登山。見えているのは南西側斜面になります。中腹はゴルフ場として開発されていますね。
 んっ?山頂の右下の段になったところに何やら建物がありますが…。



 双眼鏡で見るとこんな感じ(実際には望遠レンズで撮影)。スマホで調べてみると、どうやら宝登山ロープウェイの山頂駅舎のようでした。こちらとは反対側の長瀞から昇ってくるロープウェイです。

 登山口

 あらためて登山道に向かいます。入り口にカウンターが設置されていました。



 見ると、交通量調査などで使われている、ノブを押し込むとカウンターを刻む式のものでした。結構な数値になっていたので、月単位とかで集計しているのかもしれません。yamanekoもカチッと押して進みました。



 登山道の出だしは日差しの届かない森の中の小径です。



 片側が岩で道幅が取れない箇所には木橋が架けられていました。ありがたいです。



 頭上を見上げると梢の奥に青空が。みんな仲良く空間をシェアし合って日光を受けているんですね。

 マルバウツギ

 再び歩き始めます。これはマルバウツギの実ですね。この辺りには株が結構ありました。

 稜線へ

 登山道のカウンターから10分ほどで稜線に出ました。ここを右手に折れ尾根沿いの道をずっと行くと破風山の山頂に至ります。



  これまでの道とは違い明るい雰囲気です。晩秋の陽だまり野山歩き。心身に溜まった日頃のウサが浄化されていくようです。

 ダンコウバイ

 陽を透かすダンコウバイの葉。自ら発光しているみたいです。早春の芽吹きからこれまで一生懸命栄養を作り続けてきた葉っぱ。この後、最後のお洒落に自らを黄色く染め上げ、そして冬前に枝を離れて行きます。



 稜線は緩い弧を描くように延びています。傾斜は決してきつくはありません。ところどころこういった階段も。地元の方が整備しているのでしょうか。

 ヌルデ

 今回の野山歩きは紅葉への期待もあったのですが、少なくともここまではそんな気配はほとんどありませんでした。もう11月も半ばになろうとしているのに。
 そんな中、ここでヌルデが紅葉していました。ありがとう!



 木立が切れているところがありました。南東方向の眺めです。正面は、東秩父村の南端、秩父市との境に位置する丸山だと思います。

 分岐

 11時過ぎ、分岐に到着しました。ここを左手に下って行くと山の中腹にある桜ヶ谷という集落に至ります。yamanekoは直進で階段を上って行きます。

 猿岩

 登山道脇に大きな岩があり、先行していたグループがワイワイ言っていました。仲間が登攀中とのこと。この岩は猿岩というそうで、見たところ高さは7、8mくらい。どこから見たら猿に似ているかは分かりませんでした。yamanekoは登るのは遠慮して、このグループを追い抜いて行きました。



 道はなお上って行きます。森の中が明るいので気分も軽く、休み休み登っていけば苦しくはありません。

 ダンコウバイ

 こちらのダンコウバイはもうだいぶん黄色く色づいていますね。ダンコウバイは常緑樹の多いクスノキの仲間ですが、冬前に落葉します。漢字では「檀香梅」と書き、檀香とは香木のビャクダンのことだそうです。そういえば余り香りを感じたことはありませんでしたが…、調べてみると種子に強い香気があるとのこと。



 やや平坦で小広い場所に出ました。地形図からは山頂直下にある平坦な箇所であることが分かります。
 時刻は11時15分。ここから山頂まではあと一登りでしょう。(続きは後編で。)