御前山 〜緑の稜線をひたすら登る(後編)〜


 

 (後編)

【東京都 奥多摩町 令和4年5月22日(日)】
 
 奥多摩三山の一座、御前山。その頂へと続く稜線の野山歩きの後編です。(前編はこちら
  

 Kashmir3D

 小河内ダムの駐車場を7時30分に出発し、急登にあえぎながら指沢山を越え、ようやく惣岳山までやってきました。時刻は10時20分、かなり筋肉が張ってきています。

 御前山へ

 惣岳山のピークは木立に囲まれた広場になっていましたが、小休止もそこそこに御前山のピークを目指してスタートしました。山頂までは距離にすればあとちょっとです。

 トリカブト

 これはトリカブトの若葉ですね。これだけで種を特定するのは難しいですが、切れ込みが深いのでハコネトリカブトとかかも。



 この辺りから道がぬかるんできました。ズリッとなって膝をついてしまいそうになります。



 しばらく行くとちょっとした峠っぽいところに出ました。あの先で右に折れます。



 この辺りはプレート状の階段になっていました。植生保護のためだろうか。



 傾斜が緩やかになってきました。気持ちのいい山歩きです。



 おっ、木立の先が明るいぞ。山頂のようです。

 御前山山頂

 10時40分、御前山の山頂に到着しました。
 山頂にはざっと20人くらいの人が休憩したり早めの昼食をとったりしていました。みんなほぼノーマスクでしたが、同じグループ内でも賑やかに会話をする人はほぼいませんでした。yamanekoも今日はスタートからノーマスクです。今、政府は「屋外で2m以上の距離がとれればマスク不要、それより近くても会話がなければマスク不要」としています。みんな公のガイドラインに鋭敏に反応しているのかもしれませんね。やっぱりマスクなしで野山を楽しみたいですから。あと、なにより息苦しいし。



 ヒーヒー言いながら登ってきた先で目の当たりにする立派な石標。ハイキングコース感漂うモニュメントに「ああ、万人が楽しめる初級者向けの山ということなのかな」と再認識しました。yamanekoにとっては結構なきつさでしたが。



 山頂は北方向にのみ眺望が開けていました。ただ雲が蓋をしていていどの峰も山頂部は隠されていました。残念。

 三角点

 三等三角点。角が欠けたりしてちょっと傷んでいますね。周りの石積みのようなものは柱石を守るために誰かが寄せたんでしょうね。むしろこっちのほうを立派なものに設置し直した方がよいような…。

Kashmir3D

 ところで、数多の名山が居並ぶ奥多摩にあって、なぜ三頭山、御前山、大岳山が「三山」としての栄誉を得ているのだろうか。
 そもそも奥多摩ってどの範囲を言うのでしょうか。「多摩」というくらいだから、東京都の西部の多摩地域に限るのか(上図の赤線が都県境)。それとも、多摩川の流域のことなのか。そうなると東京都の西端から更に西に広がる地域もふくまれます(青線まで)。今ひとつはっきりしません。それもそのはず、元々「奥多摩」という言葉は登山やハイキングの際に用いる言葉だそうで、その範囲には諸説あるのだそうです。yamanekoとしては、多摩川源流のある笠取山は奥多摩の山といったイメージなので、「降った雨の全部または一部が多摩川に流れ込む山々の範囲」(緑色のラインの内側)が奥多摩と勝手に思っています。
 さて、その中でどうやって三山は選ばれたのか。高さでは東京都最高峰の雲取山ということになるでしょうし、歴史であれは御嶽山でしょう。人気ということであればなんといっても高尾山ですから(高尾山は奥多摩かという議論はあるでしょうが)。決め手はないのですが、地図を見ると、「三山」は奥多摩主脈(多摩川本流と最大支流である秋川とに南北から削り出された尾根)上にあり、その標高トップ3がこの三山なので、このあたりが理由なのではないでしょうか(推測)。

 ミヤマザクラ

 景色を眺めていると、正面の木立に白い花が咲いているのに気がつきました。シュッと縦に伸びたあまり見たことのない樹形だし、もちろん花の様子は肉眼ではよく分かりません。双眼鏡で調べたところ、ミヤマザクラであることが分かりました。サクラというよりも同じバラ科のナシとかリンゴとかの花に似ています。
 多分生で見たのは始めてかもしれません。この花を見られただけで、ここまで登ってきた甲斐がありました。



 昼食のコンビニおにぎりを食べたり、ストレッチをしたりしているうちに、上空の雲が切れ始めました。青空が覗いています。



 峰々の頂を隠していた雲が少しずつ取れてきました。多摩川を挟んで北側の山塊。正面最奥が天目山になると思います。



 山頂も急に明るくなってきました。



 山頂では1時間ほどのんびりとして、11時40分、下山開始です。ここまでで雲が完全に消えることはありませんでした。



 木製階段を下ります。山頂で休憩している間に筋肉が硬くなってしまい、ロボットみたいな下り方になっていたと思います。

 ナガバノスミレサイシン

 この特徴的な葉はナガバノスミレサイシンのもの。往きには気がつきませんでした。



 サクサクと下って行きます。歩幅は意識して小さめに。



 栃寄集落に下って行く道との分岐。ここは直進です。

 惣岳山

 11時55分、惣岳山に到着。やっぱり下りは早いです。



 惣岳山を過ぎると急傾斜が待っています。足を滑らしたらマジで遙か下まで転がって行きそうです。歩幅は更に小さく小さく。HONDAのアシモのように中腰で下って行くので大腿四頭筋がガッチガチです。



 急坂を下りきるとコバイケイソウの群落。ちょっとホッとしました。

 スノキ

 この葉はスノキですね。葉の縁が赤褐色に縁取られています。葉を噛むと酸味があるので「酢の木」です。

 岩の砦

 12時10分、岩の砦まで下ってきました。惣岳山からわずか15分。

 コバノガマズミ

 ここで小休止。なにか面白いものはないかと見回してみると、ありました。これはコバノガマズミの花序です。咲いているのはまだ数個。これから咲いていく段階ですね。



 岩の砦を過ぎてからもちょくちょく急坂が現れます。



 ここは斜面の道です。滑らないように気をつけて。



 木漏れ日の下、今日の山歩きを思い出したりしながら、満ち足りた気持ちで歩いていました。

 指沢山

 おっ、指沢山の展望台です。時刻は12時45分。岩の砦からは35分でした。

 奥多摩湖

 奥多摩湖がくっきりと見えます。正面のピークは倉戸山(1169m)。ここより240mほど高いはずですが、見下ろしているような感覚になるのは不思議ですね。

 ダム脇

 ダム脇の施設群。写真右端に余水吐のゲートが見えています。その左の建物は「水と緑のふれあい館」。更に左には駐車場が。ドリーム号Vはあそこで待ってくれています。

 初夏の空

 見上げるとすっかり青空になっています。初夏の空です。



 さあダムに向かって最後の急坂にとりかかります。斜面に対して体を横向きにして、半歩ずつ下って行きました。



 下りきると今度はヤセ尾根です。



 登山口への分岐が現れました。ここで稜線を離れて右に下って行くのですが、直進してちょっと階段を登ると展望台があるとのことなので、行ってみることにしました。



 ちょっとした広場になっています。



 ダムの堤体が眼下に望める展望台でした。満々と湛えられた水。堤体には相当な水圧がかかっているでしょうね。それを支えるこの辺りの岩盤にも。

 登山口

 1時40分、登山口まで下りてきました。下山開始からここまで2時間ちょうど。膝が痛いですが、怪我もなくなにより。



 堤体を渡る前にストレッチをしておきました。すでに体中がガチガチになっていましたから。



 2時ちょうど、駐車場まで帰ってきました。ここで今日の野山歩きは終了です。御前山を振り返ると、おお、どっしりとした姿をきれいに見せてくれています。今日はありがとうねー。
 
 今回は久しぶりに登山らしい登山をすることができました。まだそんなには体力は落ちていないなと少し自信を取り戻した感じです。充実感と共に帰途につきました。


 

2016.12.31撮影

 ところで、自宅の近所にある都立小山内裏公園から奥多摩三山が一望にできていることに気がつきました。ここから見ると確かに三山はそれなりに個性的で、見るものに訴求する何かがあるように感じます(気のせいか)。