弁天山 〜浅い春の野辺を行く(後編)〜


 

 (後編)

【東京都 あきる野市 令和3年3月14日(日)】
 
 春まだ浅い野辺の道を行く今回の野山歩き。後編です。(前編はこちら
 

 都立小峰公園

 八坂神社の先に細長い谷戸の地形を利用した「ふれあい広場」がありました。さっきは正面奥に見える尾根から下りてきたことになります。
 広場では3組ほどの家族がお弁当を広げていました。ウメがほぼ満開の状態。一足早いお花見ですね。平安の世では花見は桜ではなく梅だったそうですし。

 都道32号線

 小峰公園からは広い舗装道路を歩いて次の山に向かいます。ちなみに写真の道は武蔵五日市駅からの道です。



 公園から500mほど歩くと登山口のある山の麓が見えてきました。正面の民家の右手から上がっていきます。



 オオイヌノフグリとナズナ。野辺の花の定番ですね。早春の風が細かく揺らす様子が、なんとも愛らしいです。

 里山の道

 昔は山仕事などにも使っていただろう里山の道。こんな道を歩いていると心がほっこりとしてきますね。yamanekoも子どもの頃、こんな里山で遊んでいたのです。



 そうこうしていると、いきなり急登が始まりました。しかも階段の直登で、先が見通せないほど長いです。



 小休止を繰り返し、あえぎながら登ること7分。終わりが見えてきました。

 城山山頂

 12時55分、城山(331m)の山頂に到着しました。きっと近隣に他にも城山があるのでしょう。区別して「網代城山」と呼ばれているようです。「網代」とはこの山の北東麓にある集落の地区名です。眺望はというと…、木立に遮られて今ひとつといったところでしょうか。



 山頂で一息ついたらすぐに次の弁天山に向かいました。急傾斜を下って、鞍部から再び登り返します。

 ヒオドシチョウ

 今回の野山歩きで初めて生き物に出会いました(多分)。ヒオドシチョウでしょう。日光で体温が暖まるのを待っているかのように、じっとしていました。



 鞍部から弁天山に向けての登りに変わりました。直登ではないので斜度は緩やかめです。



 網代地区から弁天山に登る道に出ました。ここで右手前に折れて最後の登りにかかります。



 ほどなく頭上が開けてきました。あとちょっとです。

 弁天山山頂

 13時10分、弁天山(292m)の山頂に到着しました。山頂には大きな岩があちこちに露出していて、平坦なところはほとんどありませんでした。
 山頂からの眺めもかなりのものでしたが、山頂の一段下に位置する突端からの方が更に良さそうです。そちらに移動することにしました。



 その突端はこんなところ。ヤマザクラが一本あり、その先の岩に立つと視界を遮るものは何もありませんでした。


 東側、都心方向の眺望がどーんと開けていました。眼下には秋川沿いの街並みが広がっています。右手奥を望遠で捉えてみると…



 都心のビル群が春霞の向こうに浮かんでいました。スカイツリーも見えていますね。ここからは直線距離で40kmほど離れています。地図で確認すると、その直線上に昭島、更に吉祥寺があるようでした。手前のインターチェンジは圏央道のあきる野ICです。
 城山に砦が造られた中世からタイムスリップしてきた人々がこの風景を目にしたら卒倒するでしょうね。

 筑波山

 北東の方向に目を転じると、遠くに見える山影は筑波山です。こっちは直線距離で95kmほど離れています。

 下山開始

 しばらく眺望を楽しんだ後、下山を開始しました。ここから網代地区に下りて秋川を渡り、武蔵増戸駅に向かうのです。

 ウバユリ

 これはウバユリの若葉ですね。茶一色の山道でその瑞々しさにハッとさせられました。

 貴志嶋神社

 下山途中にある貴志嶋神社に立ち寄ってみました。位置的には弁天山の山頂の直下辺りになります。
 この神社は、かつて志貴島弁財天と呼ばれていた時代があり、それで背後の山を弁天山と言っていたようです。明治時代に至って神仏分離政策により仏教的要素が除かれ、貴志嶋神社となったのだそうです。

 タチツボスミレ

 春ですね。タチツボスミレが咲いていました。



 里に下りてきました。おや、鳥居が見えますね。

 貴志嶋神社参道

 回り込んで正面から見てみると貴志嶋神社の鳥居です。ここから参道になるということでしょう。よく見ると左右の柱に袖柱が付けられていますね。宮島の厳島神社の鳥居と同じ形です。このような様式の鳥居を両部鳥居というのだそうです。



 13時40分、網代地区に下りてきました。静かな集落です。



 集落の中を歩いて秋川に架かる網代橋を目指します。橋を渡ると武蔵増戸駅まではすぐです。
 人一人どころか車一台出会いません。大きな桜の木が枝をほのかに色づいていました。この集落の人はこの桜を眺めて春の訪れを確かめるのでしょうね。この集落のシンボルのような存在なのかもしれません。
 と、なんだかほっこりした気分になっていたら、その後衝撃的な事実が判明しました。なんと、2年前の台風19号で網代橋が倒壊し、現在も通行止めになっていたのです。橋のたもとまで行ってその事実を知り途方に暮れました。あらためて地図を見ると、武蔵増戸駅に行くには大きく迂回し、今朝車で渡った山田大橋を渡らなければならないようです。他に方法はないのでやむを得ませんね。

 アズマイチゲ

 気を取り直して歩いていると、民家の脇の空き地になにげなくアズマイチゲの群落がありました。思わず息をのみ足が止まりました。小さな集落の何の変哲もない風景の中にさりげなく咲いていることに感動しました。早春の短い期間にのみ花を咲かせる妖精のような植物です。

 キバナノアマナ

 すぐ近くにキバナノアマナもありました。似たような環境を好むので、この取り合わせはままあります。
 思いがけない花との出会い。ああ、遠回りも悪いことばかりではなかったようです。

 弁天橋

 集落の外れにある弁天橋を渡ります。この橋は小さな谷を跨ぐもの。下には秋川に注ぐ川が流れています。



 網代橋の中程から秋川の方を眺めると遠くに大きな山田大橋が見えました。これから大きく回り込んで、あの橋を歩いて渡らなければなりません。

 山田大橋

 黙々と歩いて山田大橋にやって来ました。車がビュンビュン走っています。

 秋川

 橋から秋川を覗き込んでみると…結構な高さがありました。右岸に見える道は今朝通ってきた道です。

 武蔵増戸駅

 山田大橋を渡りきり、街の中を歩いてようやく武蔵増戸駅に到着しました。時刻は14時15分です。網代の集落からずっと舗装路を歩いてきたので、トレッキングシューズで足が痛くなりました。
 駅舎に入るとちょうど武蔵五日市駅行きの電車が到着するところでした。急いで改札をくぐりホームに出て、電車に乗り込みました。
 
 発車後、今日歩いた山々の稜線を眺めながら、わずか2、3分で終点の武蔵五日市駅に到着。駅前のコインパーキングに停めていたドリーム号Vの元に戻って、帰り支度をしました。
 このコインパーキングでは、武蔵五日市駅で下車したSuicaの記録を機械に示せば駐車料金の割引があるとのことだったので、今日は予定していたコースを急遽逆回りに変更したのですが、肝心の機械操作がよく分からず、結局割引は受けられなかったようです。残念。でも、弁天山からの絶景をコースの終盤に堪能することができて、逆回りにして結果良かったと思っています。