赤城自然園 〜再び緑輝く山麓へ(前編)〜


 

 (前編)

【群馬県 渋川市 平成28年4月23日(土)】
 
 今年、野山では花の開花時期が早まっている、そんな声をよく耳にします。確かに自分自身でもそんなふうに感じてはいました。先日、久しぶりに群馬県の赤城自然園に行って春の花を堪能したいと話が出たときに、妻曰く「今年は早そうだから今頃がちょうどいいんじゃないの」。前回は4年前の5月5日に訪れ、天気も含めベストなタイミングだったこともあり、いまだに「あの時はよかったねー。」と思い出話をするほどに。それからすると2週間も早いタイミングとなります。咲いてすぐに散る花などは数日ずれただけで残念な思いをすることになるので、この2週間というのはどうなんだろうかとも思いましたが、こういうことに関する妻のカンはなかなか侮れないものがあるので、ダメ元で行ってみようかということになりました。
 
                       
 
 午前8時出発、の予定がいつもどおり遅れて、出発したのは9時近くに。高尾山ICから圏央道に入り、鶴ヶ島JCTで関越道へ。途中、上里SAで弁当を調達してから目的地近くの赤城ICを目指しました。高速道路を降りてからは、引き返す形で一般道を10分ほど。森に中にある赤城自然園の駐車場に到着しました。出発時には今にも降り出しそうな空模様だったのに、こちらは青空が広がっていました。

 駐車場

 時刻は11時10分、この時間でもまだ駐車場に空きがありました。ちなみにここ以にも広い駐車場が2箇所あります。

 シャクナゲ

 車を降りてみると後ろにいきなり満開のシャクナゲが。厳密に言うとここは園外なんですが。ひょっとしたら今日来たというのはタイミング的に間違っていなかったのかも、と期待が膨らみます。

 総合案内所

 総合案内所に入口ゲートがあります。入園料は1千円。4年前と変わっていませんでした。セゾンカードかUCカードを提示すると半額になるのも同じでした。 さて、これからゆっくりと散策しましょう。入園者もさほど多くはないようですし。
 赤城自然園はセゾンガーデン、四季の森、自然生態園の3つのエリアからなっています(赤城自然園HP)。セゾンガーデンは庭園の要素が濃く、園芸種が中心。四季の森と自然生態園は野生種が中心です。とはいえ自然のままではなく、自然に近い形に植栽されているのだとは思いますが。

 カタクリ

 まずはセゾンガーデンから。おお、まだカタクリがたくさん咲いています。多摩地方ではもう半月前にはすっかり姿を消したのですが、ここではまだ盛りのようです。

 フイリゲンジスミレ

 葉が特徴的なスミレ。フイリゲンジスミレだそうです。ゲンジスミレは日本に自生する種だそうですが、フイリゲンジスミレは大陸原産だとか。

 ヒカゲツツジ

 薄黄色いツツジ。ヒカゲツツジです。こんなに日当たりの良いところでいいのかとも思いましたが、必ずしも日陰に生えるわけではないそうです。

 ヤマブキソウ

 どんどん花が出て来ます。これはヤマブキソウですね。本家のヤマブキは花弁が5枚、こちらは4枚です。

 フッキソウ

 漢字で書くと「富貴草」。縁起か良いですね。高さ20cmほどで、しかも「草」と名が付きながら、これでもれっきとした樹木です。

 ???

 うーむ、これは…。花を見るとセリバオウレンのような感じですが、花の付き方がクリスマスツリーのよう。外来種ですかね。

 新緑が眩しいくらい。ここでは花も若葉も一気に活動を始めたようです。昔から人々が春を待ちわびるのは、こういう風景を目にするからなんでしょうね。

 シャクナゲ

 白花のシャクナゲ。詳しい名前は不明。きれいに咲いています。

 アカヤシオ?

 これはアカヤシオだと思うのですが。色がちょっと淡いですかね。

 芝生広場

 芝生広場。吹き渡る風も輝いているようです。この奥が四季の森になります。

 シラネアオイ

 四季の森の奥の方にあるシラネアオイの育成地に行ってみました。これまたちょうど盛りの時期のようです。ひらひらとした花弁(萼片)が優雅ですね。天然でこんなふうなところに出会ったらすごいでしょうね。実際には林床の下草が茂っているようなところに咲きますが、森の斜面が一面こんなだったら歓喜してしまいそうです。

 キクザキイチゲ

 これは…、キクザキイチゲですね。あまりにたくさんの花が迎えてくれるので、なんだか気が急いてしまっています。「ここはいったん落ち着こう。」と自分に言い聞かせながら、それでもキョロキョロしてしまいます。

 クリンソウ

 花穂が伸び始めのクリンソウ。次から次へといろんな花が出てきます。

 イカリソウ

 イカリソウ。まさに碇のような姿をしています。

 オオバナノエンレイソウ

 なんかアンバランスなエンレイソウ。オオバナノエンレイソウです。てっきり外来種かと思っていましたが、北海道や本州北部に自生しているのだそうです。

 木々はまだ葉が展開し始めたばかりの状況なので、林床まで明るい光が差し込んでいます。

 シロバナエンレイソウ

 こちらは普通のシロバナエンレイソウ。花と葉のバランスはこんなものか、もっと葉が大きいくらいです。ところで、寒冷地のものが花が大きいというのは、虫が少ないとかでそれほど受粉が難しいということなんでしょうか。

 ラショウモンカズラ

 ラショウモンカズラです。まだこれから伸びようとしているところですね。本来はもっと茂みに生えている印象がありますが。
 ここで気がついたのですが、辺りの風景は自然なのにどこに行っても下草がきれいに刈られているところが違和感だったんだと。

 アカマツ広場

 アカマツ広場にベンチがあったので、ここで昼食とすることにしました。

 ご当地弁当

 往きの上里SAでお気に入りの十勝夕張弁当を調達しようとしたのですが、もう取り扱いを止めたのか売ってなかったので、ご当地群馬の弁当を購入。奥が豚肉、手前が鶏肉の弁当です。美味でした。豚肉弁当の方は肉の下にも肉が敷いてありました。

 ???

 昼食後、散策を再開。うーん、このスミレ、まだ葉もしっかり伸びていないですが、何だろう。

 オオバキスミレ

 こちらはオオバキスミレ。葉が青々としていて、生命感を感じます。

 フデリンドウ

 フデリンドウもあちこちに顔を出していました。枯色の中に鮮やかなパステルブルーが印象的です。

 クマガイソウ

 以前、練馬の牧野翁の記念館に行ったとき、どっかの子供がこの花の名札を「熊が居そう」と読んで周りを笑わせた(実話)、その名もクマガイソウ。本来の由来は源氏の武将、熊谷直実から来ているとのことです。写真のものは開花間もないもので、これから花茎を10cmほど伸ばします。

 カタクリ

 園内のいたるところにカタクリが。自然の状態では適地にまとまって生える(逆にそれ以外では育つことができない)ので、こんな風にあっちこっちにパラパラと生えているというのは普通はないのだと思います。

 ハルトラノオ

 小指ほどの小さなハルトラノオ。一つ一つの花は数mmの大きさ。花弁のように見えるのは萼片だそうです。

 ランヨウアオイ?

 ななふし橋を渡って自然生態園へ。これはランヨウアオイか。目立たない花が隠れるように咲いていました。

 ヒゴスミレ

 この細く裂ける葉はヒゴスミレ。スミレの仲間はいっこうに区別がつかないyamanekoですが、このスミレは例外です。

 ヤマシャクヤク

 日当たりの良いところに出ると、そこはヤマシャクヤクの楽園でした。この花の盛りを見るチャンスはわずか数日間。そういった意味では今日ここを訪れたのはベストなタイミングだったと言えそうです。



 さて、赤城自然園での花巡りはまだまだ続きます。(後編へ)