大和三山 〜万葉の野辺・夏の空(後編)〜
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(後編) |
【奈良県 橿原市 平成30年6月24日(日)】
大和三山をレンタサイクルで散策する野山歩き。後編です。(前編はこちら)
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Kashmir 3D |
大和八木駅からスタートして、耳成山、香具山と巡り、3つ目の畝傍山に向かう前に甘樫丘に向かいます。ここからは大和三山を一望できるということです。
甘樫丘 |
12時50分、甘樫丘に到着しました。大化の改新の前にはこの丘の麓に蘇我蝦夷と入鹿の親子が屋敷を構えていたのだそうです。ほえー、大化の改新って。歴史の教科書と現実が結びついた気がしました。
自転車を停めて丘の上に向かいます。暑いです。帽子を忘れてくるというヘマをしたため、照りつける日差しが体力を奪います。
ムクノキ |
これはムクノキの葉ですね。先端が細く尖り、葉の基部の葉脈が直線的に縁に達しているのが特徴です。秋に熟す実が干し柿みたいな味がして美味しいんですよね。
オカトラノオ |
オカトラノオ。おそらく植栽だと思います。花は今年初めて見ました。
キキョウ |
その隣にはキキョウも。キキョウからはなんとなく秋の草原をイメージしますが、実は夏前から花をつけるんですよね。
展望台 |
長い階段を上り展望台に到着。早速大和三山を見てみましょう。
大和三山 |
おお、やはり一目で見渡せますね。ここからだと最も近いのは香具山、次は畝傍山、一番遠くに耳成山、となります。
大和の国の伝説に、畝傍山を妻とすべく香具山と耳成山が争ったというものがあるそうです。まさに三角関係。中大兄皇子(後の天智天皇)の詠んだ和歌にこの伝説を紹介したものがあるそうなので、それ以前から伝えられていたということですね。
畝傍山 |
畝傍山はこの角度から見ると台形をしています。
耳成山 |
耳成山は笠を伏せたような均整のとれた形。
香具山 |
オコジョに出会った香具山。ザ・里山ですね。
飛鳥川 |
ひとしきり眺望を楽しんで、甘樫丘を後にしました。そろそろ昼食をとるところを探さねば。少なくともこの辺りにはなさそうです。
これは農業用水の取水堰でしょうか。何か川べりに木が茂っています。
サワグルミ? |
果穂がたくさんぶら下がっていますね。これはサワグルミでしょうか。それともシナサワグルミ?
丘の北側を流れる飛鳥川に沿って走ります。ちなみに奈良盆地を流れるすべての川は最終的には大和川に収斂し、生駒山地と金剛山地の間から河内平野に下っていきます。
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Kashmir 3D |
こんな感じ。奈良盆地は断層盆地だそうで、断層活動のひずみで弱くなったところの地殻が浸食されて川が流れ出したんでしょうね。奈良盆地から大阪平野に流れ出るところは「亀の瀬」と呼ばれ、地滑り多発地帯だそうです。
津田食堂 |
甘樫丘から西に2約km。近鉄の橿原神宮前駅の近くでひなびた(失礼)食堂を見つけました。津田食堂、かなり年季が入っています。道々、ファミレスなどいくつかあったのですが、あえてこういう店を探して入るのが楽しみでもあります。
定番メニューの中からカツ丼をオーダー。運ばれてきたカツ丼に一箸入れてびっくり!なんと汁がヒタヒタなのです。つゆだくどころか味噌汁ぶっかけ飯の上にカツが乗っている感じ。美味しかったですが、食べながらカツ丼の定義が若干揺らいだような気がしました。
食事を終えて、あらためて畝傍山を目指します。登山道は橿原神宮の北参道の途中にあるので、ここからだともうすぐそこです。
参道入り口に自転車を停めて、玉砂利の上を歩いて行きます。
登山口 |
照りつける日差しにクラクラしつつ登山口に到着。木陰を選んで歩いていきます。
アジサイ |
植栽のアジサイ(韻!)。涼やかですね。つい足を止めて眺めてしまいました。
耳成山、香具山ともにそうでしたが、一般の登山客にはほとんど出会いません。地元の方が日常の暮らしの中で登っている感じです。やはり眺める山なんでしょうね。
途中、木立の切れ間から生駒山地が望めました。ちょっと飛び出ているピークが生駒山です。4月に登りました。
三山の中で最高峰だけあって、それらしい登山道です。
ナツハゼ |
これはナツハゼ。果実はこれから秋に向けて熟していき、漆黒になります。果実酒にするのが定番。そのままいただくと、よっぽど熟していない限り酸っぱいです。
広島にいた頃には山でよく見かけた木ですが、そういえば関東では見かけた記憶がありません。アカマツ林など乾燥した土壌のところを好むということなので、花崗岩土壌の多い中国地方では多いのかもしれません。
畝傍山山頂 |
2時10分、畝傍山の山頂に到着しました。2人ほど先客がいました。山頂は木立に囲まれていますが、日陰があってむしろありがたいです。
金剛山地 |
南西の方角にどっしりとした山が。金剛山(左)と葛城山です。金剛山には先月反対側から登りました。
耳成山 |
北東の方角には耳成山。なんかUFOみたいですね。この山の成り立ちは火山噴火に起因し、浸食の後に今の姿になったと考えられていますが、古墳など人工のもの(または天然の山をベースに加工したもの)との説も一部にあるとのこと。この姿を見ると、確かに古墳にも見えますね。
香具山 |
こちらは香具山。すぐ近くに見えますが東に約3kmほど離れています。独立した山というよりも、背後の竜門山地から続く起伏の先端部といった感じです。
畝傍山口神社 |
山頂には畝傍山口神社の跡がありました。現在はこの山の西麓にあるとのことです。
山頂で一休みしてから下山。何組かの人とすれ違っただけで登山口付近まで下りてきました。ああ、もう夏ですね。
橿原神宮 |
これで大和三山はすべて登ったことになりますが、せっかくここまで来たので、橿原神宮に寄ってみることにしましょう。
広大な境内です。さぞや歴史のある社、かと思いきや、この神社は明治に入ってから有志の請願をきっかけとして造られたものだそうです。ただこの土地の歴史としては、即位前の神武天皇(初代天皇)がこの地に橿原宮を建てたとのことで(橿原神宮HPより)、2600余年に及ぶのだそうです。
外拝殿 |
外拝殿です。例のとおり家内安全と世界平和を祈願しておきました。巫女さんがしずしずと歩いてきたので(写真)、「その方の願い、聞き届けましたぞ」とか言ってくれるかと思ったのですが、そんなことは当然にないわけです。
ネムノキ |
境内の傍にネムノキがあり、ピンク色の花冠を揺らしていました。
背後にはさっき登った畝傍山。その背後には夏の空です。
大和八木駅 |
参拝を終えて、自転車を停めていた場所に戻り、そこから県道を北上。所要15分で大和八木駅に到着しました。今朝電車を降りた時にはどんよりと曇って道路には水たまりもあったのですが、今はそんな様子はみじんもなく、ジリジリと暑いです。
観光交流センターに自転車とビニール合羽を返却して、改札へ。最初にホームに入ってきた大阪上本町行きの電車に乗りました。
大和三山。万葉の面影を辿りつつ、周辺をのんびり散策するには良い山でした。次は高松塚古墳やキトラ古墳の方も巡ってみたいと思います。
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