裏高尾 〜喧噪の先に里山の春を探す〜
![]() |
【東京都 八王子市 平成28年3月21日(月)】
三寒四温とはよく言ったもので、薄着になったり着込んだりしているうちにいつの間にか春の声を聞くようになっていました。花粉の飛散もピークを迎えています。こんな時に外で過ごしたりすると大変なことになるのですが、野山が賑わい始めるこの時期に家でじっとしているわけにもいきません。なまった体をほぐす意味も兼ねて裏高尾を歩いてみることにしました。裏高尾とは高尾山から陣馬山を結ぶ山稜のことで、歩きやすい尾根道にいくつかのエスケープルートが整備されています。
いつものとおり出発に手間どり、ちょっと遅めの午前10時に出発しました。公共交通機関を使うと電車を4つ乗り継がなければならず、直線距離で近い割には面倒くさいので、車で向かうことに。渋滞がなければ30分で高尾山口に到着します。
高尾山を訪れる多くの人は電車を利用しますが、表玄関の高尾山口周辺には民営の駐車場も点在しています。中でも国道20号沿いに高尾山自動車交通安全祈祷殿というところがあり、その前の駐車場が一日500円とお得。長時間駐車する山歩きにはもってこいのところです。
![]() Kashmir 3D |
今日のコースは、高尾山口からケーブルカーを使い稜線へ。薬王院を経て、まずは高尾山の山頂を目指します。そこから先が裏高尾で、アップダウンを繰り返しながら稜線の道を北上。城山を過ぎ、小仏峠で稜線を離れて東の谷に下っていきます。下りきるとバス路線の終点があるので、そこからバスに乗り高尾駅へ。京王線で一駅乗って高尾山口に戻ってくるというものです。
商店街 |
10時50分、駐車場をスタートしました。ケーブルカー駅までの商店街はいつ来ても賑わっています。観光客が特に多いのは紅葉の11月、初詣の1月、新緑の5月で、2月3月は年間で最も少ない時期なんだそうですが。去年、駅横に日帰り温泉がオープンしてまた魅力が増したかもしれません。今日あたり下山後に温泉に浸かると気持ちいいでしょうね。
ケーブルカー |
今回は楽をさせてもらってケーブルカー利用です。もちろん満杯で発車。これは「もみじ号」で、ケーブルの反対側に緑色の「あおば号」が運行しています。
中間地点付近。急な勾配がこの先で更に急になっているのが分かります。最大勾配は31度でこれは日本一だそうです。
駅を降りると繁華街のような感じ。さすがは年間で250万人が訪れる三つ星観光地ですね。 さて、まずは山頂を目指して歩き始めます。時刻は11時35分です。
ヤマルリソウ |
大勢の観光客と一緒に参道を歩いていきます。早速ヤマルリソウを見つけました。直径1cmほどの小さな花。自然が作り出す淡い色は美しいですね。 同じ個体で薄桃色から薄青色に変化していくのだそうです。
薬王院 |
薬王院の伽藍の中に入ると一層人が多くなりました(写真ではそうでもないですが、実際には「祭りか?」と思うくらい。)。ああ、早く裏高尾エリアに入りたい。
天狗注意 |
天狗注意の標識はご愛嬌。天狗は飯縄大権現の眷属(随身)だそうですが、ここ高尾山では天狗そのものも信仰の対象となっているとのこと。むしろご本尊よりフィーチャーされているようにも感じられます。
大本堂 |
大本堂。薬師如来と飯綱権現を祀っているそうです。
ミツマタ |
ミツマタが満開です。豪華絢爛といったところ。シャンデリアみたいですね。
本社 |
大本堂から石段を登ると鳥居が現れ、その奥に本社(権現堂)が。こちらは神社です。大本堂とは異なり、派手な色で彩色されています。お寺の中に神社があるというのは、明治になるまではごく普通のことだったそうです。いわゆる神仏習合ですね。
高尾山山頂 |
12時25分、山頂(599m)に到着しました。これまでに増して人でごった返しています。
東方向 |
ちょうど我が家の方角の眺望が開けていました。そういえばベランダから高尾山が見えるんだった。写真中央から右が相模台地、左が多摩丘陵になります。
南西方向 |
こちらは富士山方向。あいにく霊峰の姿は拝めませんでした。 山頂ではたくさんのグループが昼食をとっていました。その脇をすり抜け裏高尾への入り口に向かいます。
裏高尾入口 |
今日は久しぶりに妻も同行。去年の扇山(9月)以来でしょうか。
ナワシログミ |
グミが実っています。春に実るグミといえばナワシログミですが、それにしても早すぎるような。
裏高尾の尾根道に入ると人の数が急激に減ります。ようやくホッとしました。まずは急に下り、高尾山山頂直下を周回する道(5号路)との十字路にいたりました。ここは直進です。ちなみに高尾山には1号路から6号路までの自然観察路が整備されています。
もみじ台 |
十字路から登り返すとすぐに茶屋が見えてきました。もみじ台というピークにある細田屋という茶屋でした。ここで昼食をとっている人も多かったです。
茶屋からはまた下りになります。
山ではすれ違う人と「こんにちは」って挨拶するのがルールというかマナーというか不文律のようになっていますが、この言葉を口にするとなんとなくしんどさが軽減するような気がします。山での「こんにちは」は「頑張りましょう」という意味も少なからずあるということでしょう。なので急な登りで息があがっているようなときこそ挨拶するようにしています。
やがて正面に城山の電波塔が見えてきました。今日の昼食はあそこの茶屋でとることにしています。なので弁当は持ってきていません。
ヤマザクラ |
ヤマザクラの花芽。少しほころび始めているでしょうか。もみじ台からこの先の一丁平にかけては「千本桜」と呼ばれる桜並木になっていて、あと半月もしたら花見をしながら歩くことができるようになると思います。
ヒヨドリ |
春を迎え、ヒヨドリの声にもハリが出てきたように感じます。
一丁平 |
小さなピークの手前にやや開けたところがありました。ここが一丁平です。ここも花見スポットで、たくさんのヤマザクラがありました。トイレなどの休憩施設も整っています。
展望台 |
一丁平の先のピークは展望台になっていました。
ここからは南方向の眺望が開けていました。丹沢主脈と呼ばれる塔ノ岳から主峰蛭ヶ岳を経て焼山に至る南北方向の稜線、また、丹沢主稜と呼ばれる蛭ヶ岳から檜洞丸、大室山と続く東西方向の稜線が一望です。
ここの展望台には立派な東屋がありました。
アブラチャン |
これはアブラチャンか。ダンコウバイとよく似ていますが、短いながらも花柄があるのが相違点です。
ヒノキの植林地脇を歩いていきます。腹が減ってきたけど、茶屋はまだかいな。
山頂近し |
一丁平から何度目かの上りの末に城山の山頂が見えてきました。ようやく昼食にありつけます。
城山山頂 |
13時30分、城山山頂(670m)に到着しました。お昼時を過ぎているのでテーブルはガラ空きでした。
東方向 |
お腹は空いているのですが、まずは眺望を楽しんでから。左奥が都心の方向になります。高尾山は右手の山で、今日はあそこから歩いてきたことになります。
昼食 |
昼食はなめこ汁とカレーライス。ビールも飲みたいところですが、ぐっと我慢です。
食後、辺りを散策。一見サクラかなと思って近づいてみると、どうも立ち姿といい木肌といい、サクラではないよう。何だろう。ウメの仲間でしょうか。樹皮の様子(縦に裂け目)とかを考え合わせるとアンズかも。
この木だけが周囲に樹木に先んじて満開になっていました。
山頂で40分ほど休憩してから、小仏峠に向けて出発しました。ここから標高差にして120mほど下ります。
渋滞の中央道 |
けっこうな傾斜の道を歩くこと10分、ちょっと開けたところに出ました。ここが小仏峠かと勘違いしがちですが、峠はここからもう一段下ったところになります。ここからは西の方角、すなわち相模湖方面の景色が望めました。眼下には中央道。相模湖ICの手前辺りですね。この時間すでに上りの渋滞が始まっています。みんな車内ではうんざりしているでしょうね。
小仏峠 |
先ほどの広場から下って本当の小仏峠に下りてきました。ここで小休止です。景信山の方から下りてきた人もいて、20人くらいが休憩していました。
さあ、ここからは東の谷に向かって下っていきます。
ネコノメソウ |
これまでの尾根道とは異なり谷筋は環境が湿潤なせいか、植物の種類が増えたような気がします。これはネコノメソウ。
モミジイチゴ |
モミジイチゴが花を付け始めています。
タチツボスミレ |
高尾山はスミレの山と呼ばれるくらいにスミレの種類が多いところ。これはタチツボスミレでいいんでしょうね。春の使者です。
スギ林のつづら折れを下っていきます。
ユリワサビ |
足元には小さなユリワサビ。可愛い花です。アブラナ科なので花弁は4個。
ヨゴレネコノメ |
おっと、つい見逃してしまうところでした。上手に辺りに同化しているのはヨゴレネコノメ。ちょっとかわいそうな名前ですね。
ボタンネコノメ |
こっちはボタンネコノメですね。
小仏峠から下ること30分。舗装道路が見えてきました。登山道はここでおしまいのようです。
アブラチャン |
舗装道路になっても結構下っていきます。ここにもアブラチャンがいっぱい。沢沿いを好む樹木ですから。
フサザクラ |
あとフサザクラもたくさんのありました。個体によって開花の状態が異なり、まだ開き始めのものから、満開状態のものまで、様々でした。これも沢に沿ってたくさん生えていました。
小仏バス停 |
15時40分、バス停に到着しました。今日は休日ということもあって2台待っています。
運の良いことに乗り込んだらすぐに発車時刻に。しかもこれまた運良く座れました。
途中のバス停で乗り込んで来る人もたくさんいて、すぐに車内は通勤ラッシュ並みの混み具合になりました。おそらく連なって走っているもう一台も同様だったと思います。このバスで高尾駅まで行き、一駅ほど京王線に乗って高尾山口駅へ。そこからは歩いても駐車場まではすぐです。
今日は花粉飛散ピークの中、野山歩きを楽しみました。この代償は強烈な鼻詰まりとなって表れるんだろうな(それでもやっぱり出かけてしまいます。)。
![]() ![]() |