筑波実験植物園 〜これぞキング・オブ・植物園〜
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【茨城県 つくば市 平成21年9月27日(日)】
北に筑波山を仰ぎ、西に鬼怒の流れを聞き、東に霞ヶ浦の広きを望む。なんてどっかの校歌のようですが、筑波研究学園都市は茨城県南部のそんな自然豊かな場所に造られた一大サイエンスシティです。昭和30年代、首都機能一部移転の候補地として整備が進められ、中央省庁こそ移転しませんでしたが、多くの国立研究機関が移転し、これに伴って民間企業も集積するようになったところです。40歳代くらいの人なら昭和60年にここで開催された「つくば万博」を覚えている人も多いですよね。
今日は、この研究学園都市にある筑波実験植物園に行ってみようということになりました。ここは上野にある科博の附属施設。「自然教育園」の姉妹施設です。
首都高の中央環状線から6号三郷線を経由し、そのまま常磐自動車道へ。埼玉県、千葉県をかすめて茨城県に入ると最寄りの桜土浦ICはまもなくです。インターを下りるときれいに区画された街並みが続き、その中の街路樹に縁取られた道を5分ほど北上すると、到着です。
トチノキ(左)とマロニエ(右) |
入口の教育棟にはパネル展示や図鑑などがあり、今見頃の植物の紹介などもありました。ひととおり見てから、建物を通りぬけるように園内に入ります。自動ドアの向こうにはちょうど色づき始めたトチノキが。
セコイアの並木 |
巨樹で有名なセコイア。世界一のものは高さ115.5mだそうです。どのくらいの大きさなのかちょっと想像がつきませんね。ここの並木の高さは24mだとか。それでも見上げるような高さです(実際見上げます。)。
キンモクセイ |
「温帯資源植物」というエリアにやってきました。
キンモクセイは工業的な芳香。そういえば通勤経路に立派なキンモクセイの垣根があって、毎年10月はじめにその存在を主張しています。ずっと嗅いでいたら頭痛くなりそうですが、通りすがりに匂ってくる香りはちょっと嬉しいです。
シナマンサク |
シナマンサクの枝には果実が。今、まだ緑色をしている葉は冬には枯葉のようになりますが、それでも落葉することなく、そのまま早春の花の時期まで枝に残っています。ちょうど枯れ木に花が咲いたような感じになります。
サンシュユ |
こちらはサンシュユの実。シナマンサクの実は細毛が密生していて若干むさ苦しいのに対し、サンシュユの実は明るく華やかですね。でも、美味しかったという話はあまり聞きません。(食べられるのか?)
キササゲ |
キササゲは木偏に「秋」と書きます。このサイトのロゴにも使わせてもらっています。思いのほか大きな木ですね。花は優雅ですよ。
中央広場 |
いったん中央広場に出て、ここから熱帯資源植物温室、サバンナ温室、熱帯雨林温室、水生植物温室と、温室の4軒ハシゴをします。熱帯の花々の造形には驚かされるばかり。コメントできるものが皆無なので、ひたすら写真で紹介していきたいと思います。
プレクトランツス・ヒリアルディアエ |
アキチョウジの親分。花冠の長さは7、8pありました。
パッシフロラ・シトリナ |
トケイソウの仲間だそうです。
シコンノボタンの一種 |
熱帯アメリカの花。種名は明らかではありませんでした。
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ピンクのゴムべらのようなものの縁に紫色の花が付いています。いったいどこまでが花なのか。
ペンタス |
アカネの仲間。熱帯アフリカ東海岸に分布しているそうです。
スタンホペア・イェニシアナ |
肉厚な花弁が南国のランを感じさせます。
プシコプシス・フェルステーギアナ |
ランの仲間は特に不可解な形をしていますね。この姿は国内に分布するトケンランに通ずるところがあります。
リプサリス属の一種 |
サボテンの仲間だそうですが、丸いのが針の変化したものなのか、花なのか、花の後の果実なのか?
親子 |
本日の同行者。妻と娘。
エキスナンツス・トリコロル |
イワタバコの仲間。インド、中国南部からニューギニアにかけて分布しているそうです。イワタバコに比べて背筋がピンとしていますね。
ブルージンジャー |
ジンジャーと名が付いていますが、ショウガ科ではなくてヤブミョウガとおなじくツユクサ科だそうです。そういえば葉がヤブミョウガっぽいですね。
スタンホペア・グワウェオレンス |
チョウの姿を真似て本物を呼ぼうとしているのか?
グロッバ属の一種 |
これもショウガの仲間だそうです。
ボタンクサギ |
いったん温室の外に。牡丹のような樹形で花は確かにクサギのもの。中国南部に分布しているそうです。
デンドロビウム・ゴウルディ |
デンドロビウムはラン科の一属で、日本ではセッコクなどがこの仲間だそうです。
デンドロビウム・タンゲリヌム |
「奇抜」のインフレーションが起こっているのか、どんどん不可解な形になっています。
コウシュンカズラ |
国内では沖縄に分布しているそうです。キントラノオ科というあまり馴染みのない科に属しています。コウシュンとは「恒春」と書くそうで、いつも春のような気候のところに生えるということかもしれません。
サクラランの一種 |
ガガイモの仲間。サクラランの一種だそうです。ぼんぼり状に付く花っていうのは、みんな可愛いですね。
ムニンセンニンソウ |
これは純国産。小笠原の固有種だそうで、よく見かけるセンニンソウに比してかなり大型でした。雄しべ状のもの(花弁が変化したもの)も派手に広がっていました。
ドリティス・プルケリマ |
東南アジアに分布しているそうです。周りの花々に比べるとノーマル感があります。十分に可憐なんですが。
ビフレナリア・アウレオフルヴァ |
南米はブラジルに分布する、どこかユリっぽい花。でもランです。
エンキクリア・コクレアタ |
こちらは中米から南米北部。何かに擬態しているのか?
エンキクリア・ラディアタ |
同じ「エンキクリア」だから、一つ上のものと仲間なんでしょう。印象はずいぶん違いますが。
ヒメノカリス |
ヒガンバナの仲間。骨だけになったビニール傘のようですね。カリブの辺縁、西インド諸島に分布しているそうです。
コプシア・アルボレア |
こちらは東南アジアのインドネシアに分布するキョウチクトウの仲間。奇抜な花を見てきた中で、ちょっとホッとする造形です。
ファレノプシス・エクエストリス |
フィリピンから台湾にかけて生息。属名の「ファレノプシス」とは「蛾のような」という意味で、胡蝶蘭も同属だそうです。
ブルボフィルム・オリエンタレ |
ブルボフィルム属はみな着生ランだそうです。タイ原産。
デンドロキルム・マグヌム |
デンドロキルム属も着生ラン。こちらはフィリピン原産です。
ブルボフィルム・オルトグロッスム |
おっとこちらもブルボフィルム属。って、何が何属だかよく分かりませんが。
ハベナリア・メドゥーサ |
サギソウの極細バージョンのようです。もう多少のことでは驚きません。
デンドロビウム・スマイリアエ |
造花といわれても何の違和感もありませんが、これ。デンドロビウムということは、これも着生ランですか?
オヒルギ |
水生温室にやって来ました。オヒルギの花と果実です。オヒルギの種子は「胎生種子」といって、親木にぶら下がった状態の果実の中で発芽し、根を伸ばして、その姿のまま落下して干潟に突き刺さるというメカニズムをもっています。波にさらわれないようにするための工夫ですね。
ウオーターポピー |
別名ミズヒナゲシ。南米原産だそうです。日常で目にしていそうでよく見るとあまり馴染みのない形をしています。
温室を後に |
温室を後にして屋外の山地草原エリアへ。一気に現実の季節感です。
ミズアオイ |
池の畔に秋の花を見つけました。気品を感じるミズアオイの花。でも儚い一日花です。
ハチジョウギボウシ |
初めて見るギボウシ。ハチジョウギボウシだそうです。八丈島に特産し、八丈富士など標高の高いところに生育しているそうです。
ハマカンゾウ |
海岸近くに生えるハマカンゾウが筑波山麓で咲いているなんて。
ハマアザミ |
こちらも海浜植物のハナアザミ。筑波山麓ですが。
イワダレソウ |
しつこいようですが山麓です。イワダレソウが咲いていますけど。
水生植物区画 |
陽も傾いてきてちょっと寂しい雰囲気。広大なサイエンスシティのまっただ中ですが、この感じがこの辺り本来の雰囲気なのかもしれません。
ワレモコウ |
吾も亦紅なり、ワレモコウ。野辺の秋ですな。
ナンテンハギ |
小葉がナンテンの葉に似ているところからナンテンハギの名が付けられたとのこと。
ゴンズイ |
こちらの名前は、木の材質が悪くて魚のゴンズイのように役に立たないということからだそうですが、役に立たないものの代表にされたゴンズイの立場って。他にいろいろあっただろうに。
キリンソウ |
アキノキリンソウはキク科ですが、ただのキリンソウはベンケイソウ科。どうりで肉厚の葉をしています。
マルバノキ |
マルバノキが紅葉し始めています。赤一色の紅葉も綺麗ですが、緑の葉が混じっているのも風情がありますね。
夕日 |
まあ、ずらずらと花の写真を並べてしまいましたが、さすがは科博の植物園だけあってものすごい種類の植物がありました。今日巡ったのは園内のうちのほんのわずか。春から初夏にかけての花の時期には園内に一体どのくらいの花があふれるのか。クラクラしそうです。
閉園時刻が近づいてきました。入口の教育棟が夕日に照らされています。
今日はこの辺で帰途に。今度は別の季節に訪れてみたいと思います。
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