昇仙峡 〜盛夏の渓谷に涼を求めて〜
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【山梨県 甲府市 平成26年8月3日(日)】
8月、 夏真っ盛りです。細々としたことに追われる日々に、どっか涼しい山にでも行きたいところですがなかなかそうもいかず、今回は気分転換に渓谷歩きにでも行こうということになりました。場所は山梨県の昇仙峡です。前から行こう行こうと言いつつもなぜか先送りにしてきたところです。
午前中に家事を済ませて11時に出発。圏央道高尾山ICから高速に乗り、一路西へ向かって走ります。特に渋滞もなくスイスイと走ることができました。甲府昭和ICで一般道に下りて、そこからは甲府市街地を避けつつ北上。やがて山間部の道となり、午後1時過ぎ、昇仙峡の入り口に着きました。
前方に駐車場を発見。しかも車両通行止の看板も。こんなに人がいないのかと不審に思いつつもガラガラの駐車場にドリーム号を停めて、前の土産物屋で情報収集です。ついでに遅めの昼食も。
冷やしほうとう |
「冷やしほうとう」を食べながらおばちゃんに話を聞くと、ここから渓谷沿いに仙娥滝(昇仙峡の中核)まで延びる道は休日は車両の通行が止められ歩行者専用になるとのこと。1時間ちょっとの距離なので、みなさんここを歩かれますよと勧められました。だったらやはりここに車を置いて行くしかないか(でも、それにしては車が少ないんじゃないのと。)。
で、この道とは別に山中を貫くようにして並走するグリーンラインという2車線道路もあって、多くの人はこの道を車で上り、仙娥滝やその先のロープウエイなどの観光施設があるところに向かうのだと気づいたのは後のことでした。むむむ、あの看板、なかなかしたたかな戦術です。確かに嘘は言ってないし。でもyamaneko達は渓谷を歩くのが目的なのでおばちゃんの勧めに応じて問題はないのですが。
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今日のルートは、まず長潭橋を渡ってすぐに左に折れ、渓谷沿いの舗装路をひたすら歩きます。仙娥滝を越えるとその先にはロープウエイがあって、羅漢寺山の山上にあるパノラマ台とを結んでいます。 今日はそこまでは行ってみたいと思います。長潭橋から仙娥滝(滝上)までの標高差は350m。渓谷歩きにしては結構な標高差です。なお、帰りはバスで。
長潭橋 |
長潭橋(ながとろばし)は昇仙峡入口のシンボル的な存在。「潭」は「ふち」とも読み、淵と同じ意味です。
渓谷入り口 |
時刻は1時50分。ここからが渓谷散策の始まり。橋を渡ってすぐを左折します。今日は通行止め。平日は上りの一方通行だそうです。
想像していたより車道感満載の散策路。というか車道そのものか。
トテ馬車 |
前方からトテ馬車がやってきました。間近で見ると馬はでかいです。ちなみにトテ馬車の「トテ」とは、昔、馬の歩みに合わせて吹いたラッパ(豆腐屋さんのあれ)の音なのだそうです。「トテー、トテ、トテー」
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道が車道だけに川筋からちょっと距離のあるところを通っていて、今ひとつ涼しさを感じられないのが残念。でも時折涼しめの風が吹いてきます。
タマアジサイ |
タマアジサイの可愛い蕾。この中に花になる部分すべてが格納されています。
オニグルミ |
渓畔林の主役、オニグルミ。丸々とした実が重そうにぶら下がっています。
タマアジサイ |
こちらが開花の状態。
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川筋には花崗岩の巨岩がゴロゴロ。
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この道を歩いている人はご覧のとおりほとんどいません。まれにすれ違う程度でした。
センニンソウ |
頭上にはセンニンソウの白い花。
大仏岩 |
道々、オットセイ岩だの豆腐岩だの猿岩だの何かしらに見立てた岩があって、その一つ一つを指すように看板が設置されていました。写真は大仏岩。ずいぶん高いところにありました。
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秋の紅葉も見事でしょうね。そのときはここを歩く人ももっと多いのかも。
ヤブカンゾウ |
ヤブカンゾウにちょっと暑苦しい感じがするのはyamanekoだけか。形が煮えたぎる溶岩のように見えるんです。
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絵になる木、と思ったのですが、写真に撮ると今ひとつ。腕のせいでしょうね、きっと。
カシワバハグマ |
カシワバハグマはまだ堅い蕾。
アブラチャン |
見上げるとアブラチャンの実が。真ん丸です。大きさはピンポン球とパチンコ玉の中間くらい(分かりにくいか)。
サワシバ |
サワシバ。名前のとおり渓流沿いを好んで生えます。果穂はクマシデのそれより長いのが特徴。初めて見たのは三段峡だったか。
リョウブ |
対岸のリョウブ。白い果穂が風に枝ごと揺れて、何だか舞を踊っているようでした。
有明橋 |
橋があったので対岸に渡ってみることに。しばらく行った先でこちら側に戻って来られるようです。
羅漢寺 |
橋を渡って数百m山道を歩くとお寺が現れました。羅漢寺というのだそうです。調べてみると元々は山岳信仰の修験道場で、天台宗のお寺だったそう(創建は平安時代とも)。後の戦国時代に曹洞宗のお寺に改めたのだそうです。歴史の古い寺です。
オオバギボウシ |
羅漢寺の参道をまっすぐ下ると羅漢寺橋という吊り橋が現れ、それを渡るとまた沢沿いの道に戻ることができました。
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羅漢寺からさらに渓谷をさかのぼること約500m。この辺りから現役のお店が現れ始めました(これまで道々いくつか廃業した土産物屋らしき建物が残っていました。)。この上に県営の駐車場があり、そこまで車で来て、ここから上流(仙娥滝方面)に向かって歩く人がそこそこいるということだと思います。
覚円峰 |
左手に現れたのは覚円峰と呼ばれる岩峰。これこそ昇仙峡のランドマークです。水面からほぼ垂直に180mの高さがあるそうです。仙人が昇っていく姿は見えませんか。
余談ですが、このての岩壁を見ると、昔見た「まんが日本昔ばなし」の1シーンをいつも思い出します。妙に記憶に残るストーリーで、「日本昔ばなし 崖」で検索するとこの話に関する質問と答えがたくさんヒットしました。みんなどこか心に引っかかる話だったのでしょう。
金渓館の桟敷 |
傾斜がだんだんきつくなって、どうにも暑くてたまらないので、茶屋で休憩することに。ソフトクリームを注文して一息つきました。渓谷に向いて縁台のような席が並んでいて、涼しい風が吹き上げてきます。やれやれ、生き返るわ。
時刻は3時10分、出発から既に1時間20分が経っていますが、終点はまだもうちょっと先のようです。
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この辺りから急に人が多くなってきましたが、きっとこれはこの先にある仙娥滝の方から流れてきた観光客でしょう(前のカップルは渓谷入り口からyamaneko達と前後しながら歩いてきていました(この先のロープウエイも帰りのバスも一緒でした。))。
ノリウツギ |
水面に飛び出すようなノリウツギ。このように法面(のりめん)に生えているからノリウツギかと思えばそうではなく、皮から粘液を取り和紙を漉く際の糊にしたからだそうです。意外とストレートなネーミング。
ウワミズザクラ |
ウワミズザクラの果実が熟し始めています。鮮やかですね。
仙娥滝 |
さっきからドウドウと腹にこたえるような滝の音が。そして前方に現れたのが仙娥滝。断層にできた滝で、落差は約30mだそうです。覚円峰から仙娥滝までが昇仙峡の核心部です。
滝を登ると |
仙娥滝を右手に見ながら石段を登ると、急に土産物屋が並ぶ場所に出ました。水晶とかの鉱物を推した店が多かったです。昇仙峡からさらに谷を遡って行くと金峰山の手前に水晶峠というところがあり、昔からここで水晶などを採掘していたのだそうで、近世になって地元の人が林業のかたわら水晶掘りをして昇仙峡の土産物屋に卸すようになったのだそうです。ちなみに、現在では専門の業者がブラジルなどから大量に買い付けてきたものが店頭に並んでいることが多いのだとか。なるほど。
ロープウエイ乗り場 |
商店街を抜けると「ほうとう会館」とか「影絵の森美術館」とかがあって、観光客のマイカーや大型バスがそこそこ停まっていました。yamaneko達はその先にあるロープウエイ乗り場に向かいます。
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ロープウエイは20分間隔で運行。終点のパノラマ台までは約5分で到着します。ちなみにロープウエイは往きも帰りも満員状態でした。
荒川ダムと能泉湖 |
上るにつれ荒川ダムと能泉湖が見えてきました。晴れていればずっと奥に金峰山の稜線も望めるのだそうです(ガイドのお姉さん弁)。
パノラマ台駅 |
あっという間にパノラマ台駅に到着。
浮き富士 |
展望デッキから見下ろす甲府の市街地。左手の白い雲の帯の上に富士山の山体が見えているのが分かるでしょうか。雲の上に姿を見せる富士山のことを「浮き富士」というのだそうです。ここのデッキも浮き富士広場という名前が付いていました。
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八雲神社(左:拝殿、右:本殿) |
山頂の広場には八雲神社という社がありました。拝殿の奥に石造りの本殿。由緒を読むと、祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)と櫛稲田姫命(くしなだひめのみこと)の夫婦。約4百年前に石の祠が建立され、以来、夫婦和合と武運の神として在郷の人々の信仰を集めてきたのだそうです。確かに石の祠には風雪に耐えてきた歴史を感じます。ちなみに拝殿の方は昭和43年の建立だそうです(それでももう50年近くか)。
ヤマホタルブクロ |
おっ、これはヤマホタルブクロ。久しぶりに見ました。普通のホタルブクロは萼片の切れ込みのところが舌のような形にめくれ上がっているのに対し、ヤマホタルブクロはぷっくり膨らんでいます。覚えてしまえば見分けは簡単。
ヤマナシ |
断崖からせり出すようにヤマナシが実っていました。ナシの野生種です。ヤマナシは大昔に渡来したもののようで、人里近くにしか自生しないとのこと。こんな山のてっぺんにあるということは、誰かが植えたのかもしれません。ところで、これ、山梨のヤマナシです。(いや別に…。)
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しばらく散策した後に再びロープウエイで下ります。帰りはバスでグリーンラインを一気に。影絵の森美術館前にバス停があるようです。
グリーンラインができたのは昭和47年。平成9年には無料化されたそうで、この道が整備されたことにより、観光客は途中をすっ飛ばして渓谷の奥にある景勝地に行ってしまうようになったということでしょう。それまでは渓谷の入り口から川沿いに歩いて行かなければならなかったのでしょうから、途中にあった廃業していた土産物屋などもその影響を受けたということだと思います。立地で明暗がくっきりと分かれた形です。
帰りのバスは16時22分発。20分弱で渓谷入り口のバス停に到着しました(バスはそのまま甲府駅まで)。料金は430円なり。そして4時45分、待機していたドリーム号に乗り換えて東京を目指し帰途につきました。
帰りの中央道はやはり激混み。小仏トンネルを先頭に30q。毎度のこととはいえうんざりです。なんとか道路を2階建てにできないでしょうか。それでも町田に引っ越してからは八王子より都心側の渋滞とは無関係になったので、少しはましですが。
家に着いたのは9時でした。(疲)
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