六義園 〜春隣りの日本庭園〜
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【東京都 文京区 平成26年2月22日(土)】
今月は記録的な大雪が2週連続でやって来て、都心にもまだあちこちに雪が残っています。特に2回目の雪は湿った重たい雪で、各地でカーポートやビニールハウスの倒壊の被害が出ているようです。
さて、とうの昔に立春は過ぎたとはいえ、一向に気温は上がらず寒い毎日。どこか春を感じられるところはないかと、文京区の六義園に行ってみました。長く東京に住んでいますが、訪れるのは初めてです。
高田馬場から山手線(外回り)に乗って駒込駅で下車。駅からは本郷通りを南に下り、約5分で正面入口に到着しました。
六義園入口 |
入口の門をくぐると案内板が。今日は先日の雪が残っているとのことで、園路が一部通行止めになっていました。こんなところにも雪の影響が。どうやら敷地の外周部がダメのようで、園の中心にある池を周回する道はOKでした。
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入園料は300円なり。園内は人影もまばらで静かです。
ユズリハ |
これはユズリハの冬芽。葉柄だけでなく冬芽も赤いんですね。 あの冬芽から新しい葉が伸びると、後の代に譲るように古い葉が落ちてしまうことから「譲り葉」。代々家が栄えるという意味につながり、おめでたい木とされています。
枝垂れ桜 |
大きな枝垂れ桜。存在感があります。昭和30年代に植栽されたもので、樹齢は6、70年だそうです。例年ソメイヨシノより早く咲くとのことなので、あと一月あまりで見事な姿を見せてくれるでしょう。今日は人も疎らですが、花を付け始めると多くの人がこの桜の周りに集まってくるんでしょうね。日本人は桜の花が大好きですから。「願わくば花の下にて…」 この歌を詠んだ西行ほどに心深い人間でなくとも、桜を慕う心をみんな持っているのだと思います。
冬芽 |
今年の冬は特に寒いですから、きっと開花は早いと思います。見事に咲いてみんなを歓ばせてくれよ。
心泉亭 |
木立の向こうに和風の建物が。案内図によるとこの建物は「心泉亭」といい、集会所として貸し出しているとのこと。茶会などに使われているようです。
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池の畔までやって来ました。都心の庭園とは思えないロケーションです。
六義園は、将軍綱吉の側用人だった柳沢吉保が造営した回遊式の庭園。これ全部自宅の庭です。四季の移ろいを感じながらこの庭を散策する。どれだけの富豪なんだ、いったい。
ところで「六義」とは。解説によると漢詩に関係する言葉のようでしたが、その方面には(にも)疎いので今ひとつよく理解できませんでした。どうやら中国の詩経に納められている詩を六つに分類しているその分類名のことのようです。この庭の主は詩にも造詣が深かったそうです。
ムクドリ |
頭上の枝でまったりとしているムクドリ。色の濃い方が雄、淡いほうが雌です。微妙な距離感ですが出会ったばかりでしょうか。
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池の対岸には茶屋があるようです。その横には雪吊りが。今年はその真価を発揮したでしょうね。
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全身菰巻きのこの植物(?)の正体は何だろう。寒さに弱い南方系のものなんでしょうね。ソテツとか。よく見ると地面まで菰で覆われています。
アセビ |
さすがに花には出会わないだろうと思っていましたが、アセビの蕾が色づいていて開花直前でした。春が近いんですね。もともと花冠は壺型なので大きく開くことはないものの、鈴なりに開花すると、それは華やかな姿になります。
吹上茶屋 |
池の対岸にある吹上茶屋までやって来ました。ちょっと休憩です。
甘酒 |
陽の当たっている場所を選んで緋毛氈の敷台に腰掛けます。ほどなくあつあつの甘酒が運ばれてきて、お椀を両手で包むように持ち上げると、じんわりと暖かさが伝わってきました。やけどに注意しつつズズズ…とすすると、今度は体の中からホンワカと。
寒牡丹? |
茶屋の前にあった霜よけの覆い。この姿はぱっと見寒牡丹かなと思いましたが、よく見ると葉がまったく違うじゃないですか。おそらくカラタチバナだと思います。花は夏に咲くんですが。それにしてもなぜぽつんと一株だけ?
フクジュソウ |
おお、フクジュソウが咲いてる。早春の花ですね。フクジュソウといえば雪を割って咲いている写真が定番ですが、yamanekoは野山でそんなシチュエーションに出会ったことはありません。寒冷地では一般的なのかな。
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茶屋の裏手には紅梅が満開でした。敷台に腰掛けてのんびりと見上げます。
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園路を進むと今度は満開の白梅が。そういえば2月も下旬。これが当たり前の季節の姿なんですよね。
藤代峠から |
池の畔から小山の上に上がってきました。ここからだと園の大部分が見渡せます。六義園は紀州の和歌の浦(万葉集や古今和歌集などによく出てくるあれ)の景勝を模して造営された庭園で、ここにはその和歌浦を見下ろす藤代峠(現在の藤白峠)の名が付けられていました。
それにしても見事な庭園。外国人ばかりでなく純日本人から見ても「The 日本庭園」ですね。
元禄時代に造られたこの庭園は、再三の江戸の大火にも被害に遭うことなく明治を迎えたそうですが、幕勢の衰えに呼応するように園内は荒れたままになっていたとのことです。それを明治になって岩崎弥太郎が買い取り、整備して今に至っているのだそうです。その間、関東大震災にも東京大空襲の際にも奇跡的に被害を免れたのいうのですから、六義園、結構なパワースポットなのかもしれません。
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早春の光を受けて輝くような梅の花。力が入って丸まった背中にふっと暖かい空気が流れ込んだような温もりを感じました。
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園内をゆっくりと巡って約2時間。もとの場所に戻ってきました。門の向こうには普通の東京の街があります。
さて、ここからは、いったん駒込駅に戻って地下鉄南北線に乗り換え、港区の白金台へ。洒落たショッピングを楽しむとかいうのではなく、単なる散髪です。昔住んでいた頃からずっと通っている床屋さんがあるんです(そこのおかみさん、先日の雪の日に滑って転んで今鋏を持てないんだとか。あらら。)。
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