青梅丘陵 〜山笑う稜線を歩く(前編)〜
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(前編) |
【東京都 青梅市 平成25年4月14日(日)】
4月になりました。異動だの何だの年度初めのバタバタが少し落ち着いてきたところで、週末に近づくとやっぱり山に行きたい虫が騒ぎ始めました。どこかのんびりリフレッシュできるところはないかしらんとガイドブックをめくっていて目についたのは青梅丘陵。ここなら鈍った体をほぐすのにちょうどよさそう。この時期きっと花も咲き始めていると思います。
7時51分新宿発の中央特快に乗って一路西へ(中央線は中野から立川まで一直線なので、「一路」という表現がしっくりきます。)。車内は立っている人がパラパラいる程度の空き具合。休日朝の下り中央特快は奥多摩などの山に向かう人でごった返すのがお決まりですが、今日は運良く座れました。途中、立川、青梅で乗り換えて、目的の軍畑駅に着いたのは9時10分。多くの人がこの駅で降り、1列しかない改札は大渋滞でした。
駅前広場 |
いくつかの登山グループが出発していった後、駅前はようやく落ち着いてきました。この駅は高水三山の登山起点となっているので、そちらに向かうグループも多かったようです。今日はお祭りで山頂では神楽の奉納が行われるのだとか。
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青梅丘陵は多摩川の左岸、川が奥多摩の山地を抜けて平野部に出る直前に位置しています。今日は流下する多摩川に沿うようにして丘陵の稜線を歩き、最後は青梅駅に下りてくるというルートです。
ようやくスタート |
改札が大渋滞だったようにトイレも大渋滞で、それが解消するのに20分以上。yamanekoたちが出発したのは9時40分近くになってからでした。
セリバヒエンソウ |
路傍では薄紫の花が迎えてくれています。これは花冠を燕が飛ぶ姿に見立てたセリバヒエンソウ。「セリバ」はセリの葉に似ているということです。セリバヒエンソウは明治時代に中国から渡来した植物だそうで、関東地方ではよく見かけます。yamanekoの好きな花のうちの一つです。でも、なぜか図鑑にはあまり掲載されていないんですよね。
芽吹き |
車道をゆっくりとさかのぼっていきます。頭上にせり出すように被さってくるイロハモミジ。花も葉も芽吹いたばかりで、自ら発光しているかのように明るく眩しいです。こういうのを目にしただけで脳内ではアルファ波を計測しそうです。
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軍畑駅から約1.5q。10時10分に登山口に到着しました。既にうっすらと汗ばんできて、ここでアウターを脱ぐことに。
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登山口で水分補給をしてから山道に入ります。いきなりの急登です。
ヤマホトトギス |
足元にはヤマホトトギスの若葉。この時期には葉に黒っぽい斑紋があってよく目立ちます。でも、茎が伸び、葉がしっかりしてくるにつれて消えてなくなるんですよね。この斑紋がなかなか渋いのにと残念な感じです。
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木漏れ日を浴びながら稜線を行きます。こんな雰囲気なら植林地の中も楽しいですね。
リョウブ |
こちらはリョウブの若葉。この時期、葉にはうっすらと毛が生えていて、触りごこちがいいです。リョウブは新緑も紅葉も、花も木肌も、眺めていて楽しい木です。
ナメコ? |
森の分解者。これはひょっとしてナメコかな? 若干ぬめり感がないような気もしますが。
ミヤマシキミ |
ミヤマシキミは、スギやヒノキの林床などやや薄暗いところで見かけます。何株かまとまって咲いていると林床が明るくなったようで見事です。
ニオイタチツボスミレ? |
いい感じに光を受けていますね。葉を見るとニオイタチツボスミレのようでもありますが、花の色がちょっと薄いような気も。スミレは似たようなものが多くて難しいです。
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伸び始めたばかりのマムシグサ。軟らかそうですね。
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やがて案内板が現れ、右手に登ると雷電山山頂とありました。この丘のようなところが山頂のようです。左手は山頂をパスして行く巻き道です。
雷電山山頂 |
10時50分、雷電山の山頂に到着しました。ここで小休止です。
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山頂からの眺望は北方向のみ。谷の底に奥多摩工業の採石場が見えました。こんな隠れ里のようなところでお仕事に励んでいる方もいるとは。ご苦労様です。
ミヤマキケマン |
休憩を終えて再び歩き始めます。スギ林の中でスポットライトを浴びるミヤマキケマン。これからもっと背が高くなります。
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こんな感じの登山道が続きます。この辺りは人里に近いので、林業など生活に密着した森になっているのだと思います。
ヤブレガサ |
これはヤブレガサですね。すぼめた傘を開くように葉を広げるのですが、この写真のものは逆に強風に煽られているよう。実際には日の射す方に向いているだけです。
シハイスミレ |
yamanekoがスミレの中で一番好きなのがこのシハイスミレ。シハイとは「支配」でも「賜杯」でもなく「紫背」。名前は葉の裏側が濃い紫色していることによります。
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11時15分、辛垣山(からかいやま)との分岐までやって来ました。左に行くと山頂、右は巻き道です。山頂には中世の青梅地方の豪族三田氏が築いた城の跡があるとのことですが、今日はパス。右の巻き道を行きます。
ヤマブキ |
単調なアップダウンの繰り返しを楽しいものにしてくれるのは、やっぱり花たちです。これは太田道灌が詠んだとされる「七重、八重…」の歌で有名なヤマブキ。黄色の中でも「和」をイメージさせる色です。
ムラサキケマン |
ムラサキケマンは可憐な姿をしていても有毒です。
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11時35分、名郷峠までやって来ました。この辺りで全行程の3分の1くらいでしょうか。小さな祠がありますね。昔から集落の境には他の村から不幸や疫病神が入ってくるのを防いでくれる「塞の神(さいのかみ)」などと呼ばれる祠が祀られていました。今でも探せば各地にたくさん残っています。峠もかつては同様の意味を持つ場所であり、その先はまさに異境の地。そこに祀られる祠は悪いものが入り込まないよう結界の役割を果たしていたと考えられています。
山笑う |
稜線から眺める向かいの山腹。土地所有の境界でしょうか、植林地と自然林とがくっきりと分かれています。自然林の方は新緑に萌え、様々な色を見せていますね。これから初夏に向かい緑が濃くなってしまうまでのほんのわずかな期間にのみ見ることができる姿です。
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11時50分、北側が見渡せる場所に出ました。丸太製の立派なベンチもあります。そのベンチには土地所有者に無断で設置しないよう警告の張り紙がしてありました。眼前の木立も刈り払われていて、どうも眺望を確保するために伐採されたような感じです。うーむ、なんかトラブルの匂いがしますな。
さて、お昼も間近。もう少し歩いてから昼食にしたいと思います。続きは後編で。
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