大町自然観察園 〜下総台地の四季・6月〜
【千葉県 市川市 平成22年6月12日(土)】
今年はどうも梅雨入りが遅れているようで、6月ももう半ばに差しかかろうとしているのに、今日も梅雨入り前に特有の眩い日差しが降りそそいでいます。
さてさて今月の長田谷津はどんな感じでしょうか。
自然観察園入口 |
日向と日陰とのコントラストが強くてなんか白っぽい写真になっていますが、入口はこんな感じです。もうじき日陰が恋しくなる季節になりますね。
ドクダミ |
そんな野山でこの時期元気だったのはドクダミ。純白の総苞片を広げて自己主張していました。中央に飛び出した部分が花の集合体で、1個の雌しべと3個の雄しべとを1つの花として、それが密集している構造を持っています。
超青臭い臭気とそのインパクトのある名前から、この花自体が毒を持っているかのように思われがちですが、その名は「毒・痛み」から「ドクダミ」へと転訛したもの。毒や痛みに効く薬草ということで、お茶にして飲んだり、炎症などには葉をすりつぶして塗ったりしたのだそうです。
丘の上 |
入口左手の丘に上がってみたら、緑が一段と濃くなっていました。草丈も伸びています。
ハエドクソウ |
今日はいきなり「毒」が続きますが、こちらはハエドクソウ。根を煮詰めて蠅取り紙に塗ってある薬を作ったのだそうです。平成の御代になって「蠅取り紙」を知っている人も少なくなっているのではないでしょうか。使った後が面倒なんです、あれは。
もう夏と言ってよいでしょう。そんな風景になってきました。
ヤマハギ |
ハギ(萩)といえば秋の野をイメージしますが、こんな時期から咲いているんですね。
ホタルブクロ |
以前から、ホタルブクロに蛍を入れて花を通してその灯りを見てみたいと思いつつ、未だに実現していません。実際にやったことがある人がいたからこそ、この名があるんですよね。
よく似た花にヤマホタルブクロというのがありますが、ホタルブクロの方は萼片の切れ込み部分がウサギの耳のようにめくれているので、両者はすぐに見分けがつきます。
バラ園 |
バラ園は今がちょうど見頃。様々な種類のバラが咲き競っていました。
定点写真 |
アシの丈がちょっと伸びましたね。でも手前の部分と水路の畦の部分に刈り取られた跡が。ああ、きっと草刈機がここから入って、水路脇の草刈りをしたんでしょうね。
アオダイショウ |
と、足元を見るとぶっとい蛇が。頭の方は小橋の隙間に入っていて全体を見ることはできませんでしたが、これはアオダイショウですね。太さは500円玉くらい。長さは推定1.5mくらいありました。鱗がきれいで、妻は指でツツーっと触っていました。ここの自然ではネズミなどを捕食し、猛禽類に補食される生態系上の位置を占めていると思われます。かなり上位の方ですね。
コモチマンネングサ |
マンネングサと名が付く花はどれもよく似ていて分かりにくいです。コモチマンネングサは葉腋にムカゴができて、これが地面に落ちて繁殖していくのだそうです。ムカゴができるので「子持ち」なんですね。
イヌザクラ |
イヌザクラはもう実を結んでいました。
ミズキ |
ミズキの葉が隆々と繁っています。太い枝がしなだれるほどに。
夏は来ぬ |
さわさわさわ…。谷地を吹き渡る風がアシの葉先を撫でてゆきます。
スイカズラ |
スイカズラは少し盛りを過ぎたでしょうか。何ともいえない甘い匂いが歩く足を止めさせる、そんな魅力を持った花です。
野草はやっぱり野にあってこそ、そんなあたりまえのことを再確認させてくれるような風景です。このドクダミたちももうじき梅雨の雨に潤されることでしょう。
ニワトコ |
ニワトコの実は早くも赤く熟していました。赤いのは鳥に向けてのアピールでしょうね。
湧水 |
長田谷津の最奥までやって来ました。下総台地の崖線からちょろちょろと水が湧いています。
ウシガエル |
ウシガエルの重低音の鳴き声があちこちから聞こえてきます。ノドを膨らませて「ブオー、ブオー」と。食用として養殖していたのが逃げ出して野生化し、あちこちで生態系を破壊しつつあるのだそうです。成体もでかければ、オタマジャクシも巨大。初めて見る人は必ず気味悪がると思います。なにしろ長さ15pくらいもありますから。
少し陽が傾いてきたでしょうか。緑がより濃くなったような気がします。
オオカナダモ |
観賞植物園(熱帯温室のある建物)の前庭の池に咲いていたオオカナダモの花。この植物も実験用として移入したものが野に出て大繁殖したものだそうですが、幸いにも関東地方では野生化していないものだそうです。こんなところで展示していて大丈夫でしょうかね。
イボタノキ |
イボタノキの花はちょっと独特の質感をしていて、いうなれば素焼きの焼き物のようなざらついた感じの表面をしています。
イボタは「水蝋」と書くそうで、この木に寄生するイボタロウムシの分泌する蝋を加熱して溶かし、それを水で冷やして固めたことから「水蝋」という漢字を充てたようです。音としてのイボタは、この蝋を塗るとイボが取れるという俗信があったから。イボが取れる蝋が採れる木だから「水蝋」という字を充ててイボタノキとし、その蝋を作る虫をイボタロウムシと呼んだという順序ですね。「イボ太郎虫」ではないです。
大町自然観察園の長田谷津。ここの観察も6回目で、早くも1年の半分を終えました。予報では週明けには梅雨入りするだろうとのこと。来月にここを訪れる頃もまだ梅雨のまっただ中でしょうね。生き物たちもますます元気な姿を見せてくれるでしょう。