大町自然観察園 〜下総台地の四季・2月〜
【千葉県 市川市 平成22年2月20日(土)】
下総台地の自然を1年間にわたって観察しようという「定点観察」。今回が2回目です。今年の冬は寒さが厳しく、都心でも数回の積雪がありました。下総台地東部、ここ市川市大町の様子はどうでしょうか。
午後1時、現地に到着。前回に続き今日も風がなく穏やかな観察日和です。
博物館の脇を通り過ぎ、自然観察園に入ってすぐ左手のところにこんもりとした丘があります。今日はまずここに上がってみましょう。
東屋 |
丘の上はスギの木立の中にイロハモミジが植えられている、ちょっとした園地のようになっていました。ここは紅葉の季節が良さそうです。辺りに人の声はなく、日向にシートを敷いて昼寝をしている人が一人っきり。気持ちよさそうでした。
スギ |
一方、スギはというと、すっくと立って、皆凛々しくもありました。ただ赤銅色になった雄花から今にも花粉がこぼれ出できそうです。まあ春が近いってことで、喜ばしいことなのですが。
球果 |
これはスギの球果。マツでいうところのマツボックリのようなもの。
水生植物園 |
丘から下りて水生植物園の畔を歩きます。辺りはまだ冬の里山ですね。
マユミ |
先月はまだ固く締まっていたマユミの冬芽。ちょっとほぐれてきていました。これも春が遠くないって標です。
定点写真 |
先月とほとんど変化のない写真に見えます。変化とすれば、手前の葭がちょっと朽ちてきたくらいでしょうか。
季節の移ろい |
季節が晩冬から早春へと移ろっていくときの風景。こういう時期の野山歩きは楽しいものです。
カルちゃん |
ここのカルガモは人なつっこいこと。ひょっとしてアヒルとの交雑種か?
オランダガラシ |
小さな水路を塞ぐようにびっしりと蔓延ったオランダガラシ。別名クレソンですね。これから春にかけてもっと繁り、色も深い緑色に変わっていきます。
ハンノキ |
先月はまだ固く締まっていたハンノキの雄花。今日は長く伸びていて、もう花粉を出し切っているようでした。
ハンノキ林 |
そのハンノキは湿潤なところを好んで、写真のような林を作ります。ハンノキは成長するのに多くの光を必要とするので、谷の中でもこういった開けたところでよく見かけます。
翡翠 |
おっ! 向こうで碧く輝いているのはカワセミでは? 距離にして約30m。警戒することなく安心して魚を狙っているようです。翡翠(ひすい)と書いて「かわせみ」とも読みますが、まさに翡翠のような輝き。「渓流の宝石」と称されるのもうなずけますね。
カラスウリ |
一転、こちらは侘び寂の世界。枯れたカラスウリです。何ともいえない色合いです。
オオイヌノフグリ |
春も近いですね。土手の斜面にはオオイヌノフグリが敷きつめられたように咲いていました。
湧水 |
谷戸の最奥までやって来ました。高さ5mほどの崖(ハケ)の上は下総台地の台地面です。その崖との際から地下水が湧き出していて、この水が谷戸を潤しているのです。ここの湧水は何箇所かあって、写真のように大切に守られていました。
関東地方南部の地質の特徴として、最上位(地表に最も近いところ)にローム層という火山性の堆積地層があって、その下には水を透過しない粘土層があります。この辺りでは常総粘土層と呼ばれるのがそれで、地面にしみこんだ雨水は、ローム層は透過しますが、粘土層に至るとその面に沿って移動し、崖線の部分などからしみ出してくるのです。
アカガエルの卵塊 |
湧水の近くの浅い池では、アカガエルの卵塊が春を待っていました。一般に産卵から2週間程度で孵化するとのこと。このオタマジャクシたちが出てくる頃はまだ春浅いでしょう。
その池の上の梢にもカワセミが。距離にしてわずか5m。至近距離です。なんともフォトジェニックなカワセミで、図鑑のような写真が撮れました。辺りにはホラ貝のようなレンズを付けたカメラおじさん達も多かったので、撮られる側もいつものことと慣れているのかもしれません。
さあ、そろそろ折り返して、もと来た方に戻りましょう。
メジロ |
こちらはメジロ。何羽かで小さな群れを作って梢を移動していきました。
おっと、ここにも |
なんか今日はカワセミの当たり日のよう。それとも同じ一羽が行く先々に先回りしているのか? それにしても長時間枝先でじっとして、がまん強いこと。「お腹空いたなあ」とか考えながら、餌を捕るチャンスを窺っているのでしょう。もうじき繁殖期が始まります。栄養を蓄えておかなければ。
融け残り |
葭原の中にわずかに残った雪。数日前に降ったものでしょう。降っては解け、晴れてはしぐれ、寒い日と暖かい日とを繰り返しながら、やがて本格的な春を迎えるのです。
浅い春 |
時刻は午後2時半。木々の根元を巡る流れに早春の日差しが乱反射しています。春の足音が聞こえてきそうです。