野川公園 〜弥生の武蔵野〜
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【東京都 調布市 平成19年3月10日(土)】
あっというまに1ヶ月が過ぎました。3月の野川公園はどんな姿を見せてくれるでしょうか。
ちょうどお昼時に着いたので、まずは買ってきた弁当を広げることに。
梅園 |
梅園には何組もの家族連れがランチタイムを楽しんでいました。yamanekoもその一角のベンチに座って、梅を見ながら腹ごしらえ。でも今日は気温が低く、じっとしていると震えるくらいです。初め暖かかった弁当もすぐに冷たくなってしまいました。
ロウバイ |
先月観察したロウバイをまた見てみました。花が終わったあと花弁が枯れて、花床の部分があらわになっていました。この後この花床が大きくなって、写真左に写っている偽果になります。中には痩(そう)果が入っています。さて、この花床、来月はどうなっているでしょうか。
シダレヤナギの並木 |
園内を横切る東八道路を越えて、野川を渡るといつもの自然観察園です。今日は一目見て分かるほどシダレヤナギの枝先が若草色になっていました。近づいて観察してみるとやっぱり若葉が芽吹いています。今は淡い色合いですがやがてこの葉は細長い線形になって色も濃い緑色になるのです。初夏の頃には涼しげに風にそよぐのでしょう。それにしてもこの写真(右)、枝先が風に吹かれて撮るのに苦労しました。
サンシュユ |
今回最もあでやかだったのはこのサンシュユ。まさに満開といったところでした。サンシュユ自身も、また、周りの木々にもまだ葉が展開していない時期に枝いっぱいに花を付けるので、鮮やかな黄色がひときわ目立ちます。もともと薬用植物として江戸時代中期に中国から渡来したもの。今では庭木や公園樹としてよく利用されています。
ヒサカキ |
小さな壺型の花を鈴なりに付けているのはヒサカキです。ヒサカキには雄花だけを付ける株と、雌花だけを付ける株とがあって、それぞれ雄しべの機能に特化した花、雌しべの機能に特化した花になっています。写真のものは雄花ですね。花冠の中に雄しべがたくさんあるのが分かります。
ヒサカキには独特の臭いがあって、この臭いをくさいという人もいますが、yamanekoにとっては決して嫌いな臭いではありません。里山に春の訪れを知らせてくれる、心がウキウキする香りに感じられます。
イヌノフグリ | イヌノフグリ(左)とオオイヌノフグリ(右) |
長い間会いたいと探していた花にここで出会うことができました。イヌノフグリです。葉も小さければ花も小さい。その大きさは約3ミリほどです。となりに写っているオオイヌノフグリと比較するとその小ささが実感できると思います(オオイヌノフグリの花弁1枚の4分の1くらい)。これだけ小さいとよっぽど気をつけていないと見逃してしまうでしょう。
イヌノフグリは日本産で中部地方以西に広く分布していたそうですが、明治時代に入ってきたオオイヌノフグリやタチイヌノフグリに押されて、今では山間部でなければなかなか出会えなくなっているそうです。ネットで調べても各地に点在しているようですが、やはり限られた狭い地域に生育していると報告されています。分布の単位が小さいとそれぞれが容易に消えてしまうおそれがあり、気になるところです。
「あの鳥は…」 |
小枝の先でじっとしている地味な鳥。がっしりとした嘴が特徴のシメでした。あの嘴で固い木の実を砕いて食べるのです。
フクジュソウ |
先月黄色のパラボラアンテナを広げていたフクジュソウ。今は茎が長く伸び、痩果が丸く集合した状態になっていました。茎葉もボサボサに。あの愛らしいイメージとはずいぶん変わった姿になっていました。
シュンラン |
これぞ春のラン、シュンランです。こんな早春の花が咲いているかと思えば、日当たりの良いところでは早くもウバユリの葉が展開し始めていたり、ラショウモンカズラが花を付けていたり(一株だけですが)と、4月下旬のような一角もありました。何か変な感じです。
春まだ浅…そうなんですが |
いかにも武蔵野といった感じの風景。国分寺崖線からしみ出た地下水が小川となって、また小さな池を作って、野川へと注いでいきます。散策路の脇に腰を下ろして、木々がそうしているように一緒になってしばらく早春の日差しを浴びていました。そんな中、池の上に張り出した枝にカワセミがやってきて、何度か水面にダイブ。上手に小魚をゲットしていました。
あぁ、こうやってぼんやりしている時間は何物にも代え難いものがあります。花粉さえ飛んでいなければ深呼吸でもしてみるのですが。
クサノオウ |
前々回、前回と観察してきた同じクサノオウです。ロゼットの中心から花茎が立ち上がってきています。全体に白い毛が密生していて、だんだんお馴染みの姿に近づいてきました。あと2ヶ月くらいで腰の丈くらいに成長するはずです。
コハコベ | コスミレ |
春の野にごくごく普通に生えているコハコベ。まぁ「King of 雑草」ってところでしょうか。「雑草」という言葉を使うと「そんな名前の植物はない」なんて小言を言われたりしますが、生命力の強さを象徴する言葉で結構好きです。コスミレが落ち葉の布団を押しのけて顔を出しています。眠りから覚めて今まさにのびをしているように見えますね。
春の小川 |
今日、散策路の脇に忽然とヤマネコノメソウが二株ほど咲いていました。日当たりの良い乾燥した場所で、明らかについさっき植えられたように見えます。何でこんなところに?そう思って眺めているとこの公園のボランティアの方がやってきて、ヒガンバナの群落の中で見つけたとのことで、散策路から離れたところにあって来園者の目に触れることがないので散策路脇に移植したと言うのです。もともと林内の湿ったところに生育するヤマネコノメソウ。ヒガンバナの群落の中に自らに合った環境を見つけこれまで生き続けてきたのだと思います。
この自然観察園では多くのボランティアの方が活動しておられて、そのときどきの観察のポイントをプリントにして配布したり、園内で見られる花などの情報を掲示板にこまめに表示するなど、そのホスピタリティには頭が下がる思いです。(今日イヌノフグリを見ることができたのもこの情報のおかげでした。) ただ、どうでしょうか。人の目に触れないところに生きる花ならば触れないままにしておけばよいのでは。こういった植物がここに生育しているということ、そんな環境がまだ保たれているということに意味があるのであって、わざわざ人前に引っぱり出さなくてもよいと思うのです。来園者にはヤマネコノメソウが自生するほど豊かな自然が保たれていることをアピールすれば良いし、移植されたヤマネコノメソウにとってもそのほうが有り難いのではないでしょうか。
春の小川(野川)はさらさらゆくよ…。西日をはね返して野川の水面がキラキラと輝いています。本格的な春に向けて着実に変化していく自然。都会の中にあるこの場所にあっても、その営みはやはり変わることはないようです。
武蔵野台地と野川公園
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