瑞牆山 〜絶景の岩峰に登る(前編)〜
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(前編) |
【山梨県 北杜市 平成23年6月4日(土)】
「瑞牆山」 読みは「みずがきやま」。難しい文字を用いた名前ですが、百名山の一つであることからも、山好きのうちでは広く知られた山だと思います。累々たる巨岩・奇岩の山としても有名です。今回は、この瑞牆山に行ってみることにしました。
瑞牆山は山梨県北部、長野県との県境にほど近いところに位置し、車では東京から中央道を西進して須玉ICで下り、そこから山中に向かって分け入っていくことになります。山塊としては奥秩父に属しています。
午前5時前に都心を発って、首都高4号線から中央道に入りました。この時間でも結構な車の数です。この日は梅雨の晴れ間であったことと高速料金一律千円の措置がもうじき終わる影響から、各地の高速道路は車が多かったとのことです。でも、この時間さすがに渋滞は発生しておらず、スイスイと走ることができ、須玉ICを7時15分に下りることができました。
瑞牆山 |
高速を下りてからは塩川沿いに延びる県道を峰々の懐までさかのぼっていきます。最奥部の小尾集落を走っているときに突然異様な風景が目に飛び込んできました。思わず道ばたに車を止めて撮ったのが上の写真。あの山、稜線が明らかに普通じゃありません。あれが今日の目的の瑞牆山です。花崗岩を主体とした岩峰とは知っていましたが、その尖鋭さといいスケールといい、実際にこの目で見ると異様というよりもはやこれは禍々しくすらあります。
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期待と不安が混じり合ったまま車を走らせ、7時55分、瑞牆山荘近くの駐車場に到着しました。着いてみると100台規模の無料駐車場は既に満杯で、道路脇にいくつかある駐車スペースにようやく1台分を確保し、ドリーム号を停めることができました。ラッキーでした。
上の写真は駐車場所から見た瑞牆山です。この景色だけでもワクワクしてきますね。はやる気持ちを抑えて、まずはストレッチ。そして装備を整えて出発です。
瑞牆山荘 |
駐車場所から車道を歩いて戻って100mくらい。瑞牆山荘前が実質的なスタート地点になります。
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今日のコースは、瑞牆山荘前から山腹を登っていき、途中から更に稜線に沿って登っていきます。富士見平小屋に出たらそこからは反対側の谷に向かって一旦下り、下りきって 天鳥川を渡ったら今度はひたすら山頂を目指して登っていくことになります。帰りは折り返して同じコースを辿ります。岩場ありロープありで、なかなか登りごたえがありそうです。
スタート地点 |
8時15分、山荘前をスタート。看板に富士見平50分、瑞牆山頂2時間50分とあります。
ここにも多くの人がいますが、この時間既に出発している人もたくさんいると思われます。やはり人気の山ですね。
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森の中は空気が澄み渡っていました。ひんやりとして気持ちいい。何種類かの鳥の声が聞こえてきます。落葉広葉樹の森で、カラマツやカエデのたぐい、ナナカマドもあります。ミズナラも。登山道脇の所々にトウゴクミツバツツジが咲いていました。ちょうど今が盛りのようです。
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人気の山なので登山者も多く、山ガールの人たちと前になり後になりしながら登っていきました。梅雨の晴れ間、「滴るような緑」とはこんな状況のことを言うのでしょうね。息は荒くなってきましたが、気分的には爽やかです。
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8時30分、林道を横切りました。傾斜は更にきつくなります。
イワウチワ? |
これはイワウチワの葉では? 葉がマットな感じなのが気になりますが。そうだとしたらもう花の時期は終わった後ということになりますね。
稜線 |
しばらくゼーゼー言いながら登っていくと、なにやら明るくなってきました。どうやら稜線のようです。
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8時40分、稜線に出ました。まずは水分補給を。おお、カラマツ林越しに瑞牆山の頂上が見えるじゃないですか。でも、間には大きな谷があり、ここからだとまだまだ距離がありそうな感じです。
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しばらく休憩してから、今度は稜線に沿って登っていきます。足下は花崗岩質。したがって松林が優勢になってきています。
ポポポ、ポポポ、 森の中からツツドリの声が。もう夏ですね。
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鮮やかなトウゴクミツバツツジ。
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これはコバイケイソウでしょうか。生き生きとしています。
富士見平小屋 |
8時55分、富士見平小屋に到着しました。さっき休憩したところから標高差にして約100m、瑞牆山荘からだと約300mを登ったことになります。ここは南側に向かってなだらかな傾斜になっていて、その先に富士山方面が見渡せることから「富士見平」の名前が付いたものです。ここにはざっと見渡して50人くらいの人が休憩していました。
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テント泊をしている人もあちこちに。ここは瑞牆山に向かう道と金峰山に向かう道との分岐点にあたるので、ここをベースに両方に登る人もいるのでしょう。
富士見平から |
そして木立の間から朝日に輝く富士山が。この山はどの方角から見ても均整のとれた見事な姿をしているとつくづく思います。
タチツボスミレ |
荒かった息が収まってくると小さな花にも目が行きます。これはタチツボスミレですね。
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9時5分、休憩を終えて出発しました。ここからは登ってきた方とは稜線をはさんで反対側の山腹をトラバース気味に水平移動していきます。ごろごろとした岩があって足下は決して良くはありません。
ずいぶん下の方から水の音が聞こえてきます。これは瑞牆山との間の谷を削り込んだ天鳥川の水音です。
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富士見平小屋までは明るい乾いた山道でしたが、ここは湿気の多い涼しい山道になっています。登山道脇の斜面にも苔がビッシリ。北向きの斜面ということもあるのかもしれません。
ハリブキ |
何もここまで武装しなくても、と言いたくなるようなハリブキの新芽。
隠し砦? |
どーん! 瑞牆山が目の前に迫ってきました。うわぁ、あそこに登るのか。右のピークが山頂。左の直立している岩がクライマーを魅了する「大ヤスリ岩」です。ここからだといったん谷底まで下りて、その後あの壁のようなところを登っていくことになります。
「みずがき」とは、神社の周囲に巡らす垣根のことだそうです。この山は近くの金峰山とともに太古から修験の地であったとのことで、人間を容易には受け入れないような峻厳さをその姿に感じます。ここから先は神域だぞといわんばかりです。
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9時25分、この先の道が途切れました。と思ったら、登山道はここから谷に向かって急降下していました。
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かなりの傾斜の斜面です。おっ、既に登ってくる人たちがいます。おそらく早朝に出発して瑞牆山山頂を踏み、引き返してきて金峰山に向かう人たちでしょう。健脚ですね。
アズマシャクナゲ |
ガイドブックにはこれから先にはアズマシャクナゲが見られるとありました。ほころびかけた蕾には出会いますが、なかなか開いている姿にはお目にかかれません。来週あたりが見頃かもしれませんね。
天鳥川 |
9時30分、標高差50mを一気に下って、天鳥川の河原に到着しました。激しい水音です。
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浸食初期の岩がごろごろとし、川の最上流部という風景です。
桃太郎岩 |
対岸のちょっと開けたところに巨大な岩が鎮座していました。高さ、幅ともちょっとしたビルくらいの大きさがあります(写っている登山者はちょっと手前にいるので比較にはなりません。)。なんか異様にでかいです。しかしまた見事にぱっくりと割れていますね。これが桃太郎岩という名前の由来でしょう。
この岩、いったいいつからここにあるんでしょうか。こんな大きな岩が転がってきて原形を保てているとは考えにくいので、周囲が細かく浸食されていく過程で残ったものかもしれません。割れたときはどんな音がしたんでしょうか。きっと山を震わせるほどの音だったでしょうね。節理の隙間に染みこんだ水分が凍ったり溶けたりして膨張収縮を繰り返し、それで割れたのではないでしょうか。こうやって大きな岩も細かくなっていき、やがては砂礫になるんでしょうね。
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桃太郎岩の脇を登って小さな沢筋にでました。これからは本格的に急な上りになるので、手も使えるようにストックはしまいました。
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振り返ると桃太郎岩の上に立派な木が何本も立っていました。歴史を感じます。
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つるっとした花崗岩の一枚岩をロープを使って登ります。
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登り切るとその先にはしっかりとした木製の階段がありました。沢の流れはけっこう激しいです。
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こんな感じの道が延々と。写真では分かりにくいですが、ずいぶんと仰ぎ見て撮ったもので、なかなかの傾斜です。
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桃太郎岩ほどではないにしろ、巨岩があちこちにありました。太い丸太でつっかえ棒がしてありますが、おそらく実質的な効果はないと思います。
さあ、いよいよきつくなってきました。まだ先は長そうですが、山頂からの眺望を楽しみに頑張ろうと思います。《後編に続く》
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