北本自然観察公園 〜荒川中流の春・5月〜
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【埼玉県 北本市 平成23年5月14日(土)】
街角の緑がずいぶん濃くなってきました。日射しは輝き、薫風が頬をなでる清々しい季節です。
さて、5月の北本自然観察公園はどんな感じでしょうか。
首都高5号池袋線から外環道を跨いで埼玉大宮線へ。与野ICで高速を下りて新大宮バイパスを北上します。途中ちょっと渋滞している区間もありましたが、都心から約1時間15分で現地駐車場に到着しました。まあまあのペースです。
定点写真(北側の谷地) |
駐車場から道路を渡って自然観察公園へ。今月も、まずはふれあい橋からの定点写真から。北に延びる谷地の様子です。今月は茶色の部分がほとんどなくなりましたね。日差しの強さに比例して木陰のコントラストもくっきりとしてきています。ギョギョシギョギョシ。オオヨシキリでしょうか、葦原の方から賑やかな鳴き声が聞こえてきます。
観察会開始 |
橋を渡るとすぐに自然学習センターが見えてきます。午後2時、その玄関前で定例の自然観察会が始まりました。
まず最初に観察会での注意事項。野外での危険な生き物についての話がありました。スズメバチは近づいてきても決して振り払ったりしないこと。攻撃されていると勘違いするそうです。次に蛾の幼虫。ほとんどの毛虫は毒を持っていませんが、希に有毒のものに遭遇することも。葉裏などをめくるときには要注意です。最後にマムシです。園内にもいるそうですが、今では出会う方がある意味ラッキーと言えるほど数が少なくなっていて、埼玉県レッドデータでは荒川以西で準絶滅危惧種に指定されているのだそうです。
今日のテーマは「昆虫の観察」です。最初に飼育箱の蓋にぶら下がる蝶のサナギを見せてもらいました。これはアカボシゴマダラという種で、中国から入ってきた外来種だそうです。日本の冬の寒さにも耐え、園内で繁殖している様子。この辺りにもともといた在来種のゴマダラチョウと競合するので、見つけたら野に帰すことなく駆除するのだそうです。
エノキ | ゴマダラチョウ |
近くのエノキの葉にそのゴマダラチョウの幼虫がいました。毎日ごちそうの上に乗っかって過ごしているようなもので、丸々と太っています。エノキの葉は虫にとっては美味しいのか、この蝶の他にもオオムラサキ(国蝶)など多くの蝶の食草になっているそうです。
クララ |
クララの花穂。まだ蕾の段階です。いかにも洋風な名前ですが、口にするとクラクラするほど苦いということから名が付いたものだとか。葉を噛んでみると確かに苦いです。でも蓼食う虫も何とやらで、このクララを好んで食べる(というかクララしか食べない)虫がいるとのこと。それはオオルリシジミという蝶で、この蝶は長野県北部と阿蘇にしか見られない蝶だそうです。クララ自体の分布はそれほど狭くはないので、別の要因で減ってきているのでしょう。昔は東北地方でも普通に見られたそうですから。
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玄関前を後にして、高尾の池の方へ下りていきます。今日はざっと20人くらいの参加です。
ヒメクロオトシブミ |
ノイバラの葉が短い葉巻のようにくるくると巻かれています。オトシブミの仕業ですね。この葉巻の造り主はヒメクロオトシブミという名の虫だそうです。葉巻のサイズが長さ8o位なので、造り主のサイズも小さいです。それにしても「オトシブミ(落とし文)」とは何とも味のある名前ですが、これは江戸時代に人に気づかれないよう手紙を渡す手段として、文をそっと落として相手に拾ってもらうことをしていたそうで、これを「落とし文」といい、この虫が巻いた葉が枝の下に落ちている様子を「落とし文」に例えたのだそうです。秀逸ですね。
ジョウカイボン |
ふと下を見ると茶色の甲虫がいました。ぱっと見、カミキリムシかヒラタムシのようですが、ジョウカイボンというれっきとした別科の虫だそうです。変わった名前だなと思い調べてみると、漢字では「浄海坊」と書き、これは平清盛の法名なのだそうです。以前、この虫はその姿からカミキリムシモドキと混同されていて、このカミキリムシモドキを触ると火傷のような炎症を起こすことから、熱病に苦しんだ平清盛に例えたという説が有力なのだそうです。昔の人の豊かな想像力には感服です。
ハリエンジュ |
高尾の池の畔に立つハリエンジュの下までやってきました。辺りに甘い香りが漂っていて、クマバチなどもやってきています。蜂蜜の元となる花は各種ありますが、国内ではこのハリエンジュからの蜂蜜が最も多く生産されていているそうです。
花を見てみるとマメ科に特有の蝶形花です。花穂が垂れ下がっている姿はフジにも似ますが、フジの花穂ほど長くはありません。ちなみにハリエンジュは別名をニセアカシアともいいますが、オーストラリアに多く生育する本家のアカシアとは全く無縁で、姿も似ていないとのこと。アカシアはどっちかというとネムノキに近い種類だそうです。
ウキヤガラ |
高尾の池の水際に背の高い植物が。見るからにカヤツリグサの仲間です。茎を触ってみると稜が3つありました。これはウキヤガラという植物で、写真は花粉をたっぷりと付けた雄花です。ちょっと触るとボワッと花粉が舞いました。花粉症に悩まされている者としては、反射的に引いてしまいますね。
エゴツルクビオトシブミ |
池を横断して反対側の土手に上がりました。エゴノキが葉を茂らせていて、そこにもオトシブミが。さっきのよりサイズが大きく、長さは3pくらいはあります。これの造り主はエゴツルクビオトシブミという虫だそうです。この葉巻は雌一匹だけで作るそうで、それは大変な作業なのだそうです。人間に置き換えると20畳分の紙で折り紙をするようなものだそうです。しかし折り曲げるときとかどうやっているのでしょうか。人間のような手もないのに。顎の力が超強力だとか?
ムラサキシキブ | イチモンジカメノコハムシ |
ムラサキシキブの葉が穴だらけになっています。これはイチモンジカメノコハムシという甲虫の仕業。その姿は甲の部分が半透明で、しかも葉にペタッと張り付くような盾状。鳥に発見されにくいようにということでしょうか。でも穴の空いたムラサキシキブの葉を裏返すと比較的簡単に見つけられるということで、人間様には通用しませんね。
ウスバカゲロウの幼虫 |
林縁の木の根元にアリジゴクの巣を見つけました。ご存じウスバカゲロウの幼虫が過ごす巣です。アリが滑り落ちてくれるのをひたすら待つわけで、なんとも気長な話です。アリジゴクは2年間この姿で過ごし、その間は一切排泄をせず、羽化するときに宿便を1回出す、という説明を何度か聞いたことがあり、この日の説明もそうでしたが、去年、小学生が夏休みの自由研究でアリジゴクが黄色い液体を出すことを突き止めたとのニュースを読んだ記憶があります。その後どうなったのでしょうか。
定点写真(高尾の池) |
高尾の池を南から望むいつものビューポイントにやって来ました。対岸の緑が濃くなってきましたね。ちょっと前まで茶色一色だったのに。
オニヤンマの幼虫 |
東屋の先にある小さな流れ。ここには毎年オニヤンマが飛び交うそうで、その幼虫であるヤゴを探すことに。極小の角のようなものだけを砂上に出していて、そのほかの体は全部砂の中。なのでどこにいるのかまったく分かりませんでした。オニヤンマのヤゴは体長5p前後。4、5年は砂の中で過ごすのだそうです。
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さて、ここからはもと来た道を引き返します。指導員の方の話によると今年は植物の開花も虫の出現も例年より1週間くらい遅いのだとか。冬が寒かったからだろうとのことでした。
コウホネ |
帰りは八つ橋を渡ります。橋のたもとには10畳敷きくらいの広さでコウホネの群落がありました。スイレンの仲間ですが、花弁はスイレンのように外向きに広がらず、どちらかというと内向きに丸くなっています。コウホネとは変わった名前ですよね。漢字では「河骨」と書きます。これは地下茎が太く横に伸び、背骨のように見えるからだそうです。
ヨコヅナサシガメ |
これは脱皮直後のヨコヅナサシガメですね。体が軟らかいうちは写真のように鮮やかな朱色をしていますが、しばらくすると本来のモノトーンの体(写真右下。ちょっと手ブレ。)になるそうです。この虫はうっかり触ると刺されるので注意が必要です。
この虫が関東地方で見られるようになったのは平成以降だそうで、もともとは昭和初期に東南アジアから九州に渡ってきたものなのだそうです。
クマバチ |
さっきのハリエンジュのところまで戻ってきました。指導員の方が花から花へ飛び回っていたクマバチを捕まえて見せてくれました。まず、捕虫網に入っている状態でクマバチの顔面を確認します。顔面に白い模様があるのがオス。オスは刺さないので安心して触ることができるのだそうです。顔面が黒一色のものはメスで、こちらは刺されないように注意しなければなりません。yamanekoもつまんでみましたが、重さはほとんど感じられず、力を加減しなければ潰してしまいそうな感じでした。
シマヘビ |
あっという間に1時間が経過し、自然学習センターまで戻ってきました。総移動距離は400mくらいでしょうか。それでもあれこれと見どころがあり、楽しい時間を過ごせました。
写真は館内で飼育されているシマヘビの一部白化個体。以前より体の模様がくっきりとしてきたような。目の色もより黒くなったような気がします。今年の夏は節電モードで変温動物のヘビ君にも厳しい季節になるのかも。でもそもそも野外で生活するのが普通なのだから大丈夫か。
ナミテントウ |
観察会終了後、もう一度園内をぶらっと散策しました。気のついたものを何点か。
きれいな光沢のナミテントウ。柔らかな若葉によく似合っています。
クワ |
これはクワの実。まだ青い果実です。何かの虫コブみたいですね。
エノキハトガリタマフシ |
こちらは本物の虫コブ。エノキハトガリタマフシです。「エノキの葉にできる尖った球状のフシ(虫コブ)」というネーミングですね。中にはエノキトガリタマバエが1匹入っていて、普通は虫コブごと地面に落下するのだそうですが、写真のものは葉に付いたままの状態で出て行ったようです。
梅雨近し? |
ウメの実が熟しつつありました。沖縄ではすでに梅雨入りしたのだとか。関東地方は梅雨入りまでにあと半月くらいはあるでしょうね。次回のここに訪れるときにはしっとりと梅雨入りしているかもしれません。降るべきときに降る雨は生き物たちにとっても恵みとなるでしょうね。
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