御岳山・日の出山 〜寒中のんびり山歩き〜
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【東京都 青梅市 平成23年1月23日(日)】
1月下旬、正月気分はとっくに消え去り、今年の干支も何だったかそろそろ自信がなくなってきています。いやー、それにしても毎日寒い! 大寒を過ぎ立春までのこの時期が最も冷え込むとのこと。気温が下がると空気が乾燥するので、鼻の中はカラカラです。
今回は奥多摩にある御岳山と日の出山をのんびりと歩いて、最後に温泉とビール、という中年男子にはグッとくる山歩きです。メンバーは昨年11月に三頭山を歩いた4人です。
新宿駅7時44分のホリデー快速で中央線を西へ。立川から青梅線に入り御嶽駅で下車。そこからバスに乗り換えてケーブルカーの駅のある滝本駅に向かいます。到着は9時15分です。
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滝本駅からはケーブルカーには乗らず、杉林の中を歩いて上ります。滝本駅の標高は約400m。武蔵御嶽神社のある御岳山の山頂は929mですから、差し引き500mちょっとの登りです(ちなみに、山の名前は「御岳」、神社は「御嶽」です。)。神社にお参りした後は、東に延びる稜線にそって日の出山(902m)に向かい、山頂で眺望を楽しんだ後にそこから谷に向かって急降下。林道に出会った後も更に下り、ふもとのつるつる温泉でゴールです。ふもとといってもそこも谷のどん詰まりですが、標高は約350mまで下がっています。
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滝本駅 |
御嶽駅で下車した人のほとんどは御岳山に向かうようで、バスを1台増便して運行していました。そして滝本駅ではその乗客のほとんどがケーブルカーに乗り継いでいました。さすがにこんな早い時間に乗る人たちは山歩きの人ばかりですが、なにしろ高尾山に次いで今年は御岳山がブレイクするとの話もあるくらいなので、もうちょっと遅い時間になってくるとブーツやパンプスで乗ってくる観光客も多いのだと思います。
登山口 |
9時30分、滝本駅の奥にある鳥居をくぐってスタートです。鳥居の脇には「神代銀杏」という巨大なイチョウが。高さ45m、目通り5.3m。推定樹齢500年だそうです。長生きですね。
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見上げるとスギがいい具合に色づき始めていました。花粉症歴も20年近くになると、スギの雄花もいとおしくなるものです(ヤケです。)。
霜柱 |
足下は杉木立に囲まれてなかなか陽が差し込まないところ。霜柱もカッチカチに固くなっていました。
登山道 |
登山道と言っても車が1台通れるくらいの舗装道路です。山上にはちょっとした集落があって、そこと下界とを結ぶ生活道路でもあるのです。でも斜度もカーブもなかなかのもの。凍結したりしたら怖くてとても運転できません。
シモバシラ |
茎から霜柱が延びているシモバシラ。なんかややこしいですが、これはシモバシラというれっきとしたシソ科の植物です。地中から吸い上げた水分が厳冬の寒さに凍りつき、冬枯れした茎の根元を裂いて、横へ横へと成長するのです。このように氷を成長させる植物はアキチョウジやシロヨメナなど他にも数種あるようですが、このシモバシラはまさに名が体を表している植物です。(花はこちら)
合流 |
10時30分、1時間かけて山上の集落近くまでやってきました。上の写真はケーブルカー終点の御岳山駅からの道との合流点です。右の道がふもとから歩いて登ってくる道、左がケーブルカー駅からの道です。なんでこんな山の上に集落があるのかは、こちら参照。
ビジターセンター |
合流地点からすぐのところにビジターセンターがありました。ここでちょっと休憩です。
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決して広くはありませんが、スタッフも常駐していて、なかなか充実のビジターセンターです。いつも思いますが、この手の施設が活かされるかどうかはひとえにスタッフ次第ですよね。
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急に城下町の路地裏的雰囲気になりました。観光客の人もこの道を通って御嶽神社に向かいます。
ヤマグルマ |
宿坊の塀の中にヤマグルマ。厳寒の中でもよく繁っています。5年前に来たときも気がつきましたが、それだけよく目立っているということでしょう。
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ふもとの御嶽駅あたりでしょうか。木立の切れ目から下界が見えました。ずいぶんと下に見えますね。こんな高さにぽつんと集落がある違和感。不思議な感じです。
神代欅 |
参道脇にある古木。こちらは神代欅だそうです。高さ30m、目通り8.2m。推定樹齢は1千年。なんと平安生まれです。ざくっと1千年といわれるとちょっと眉唾かと考えがちですが、御嶽神社自体が平安時代からあるので、あながち荒唐無稽な話というわけではないですね。
どこ? ここ |
で、山の上にこの賑わい。食堂や土産物店などが軒を連ね、ちょっと驚きです。
北東方向 |
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参道の階段から北東方向の展望が開けていました。手前の大塚山はケーブルカーの駅のある鞍部から延びる尾根にある山。川苔山や本仁田山はJR青梅線が走る谷を挟んでその向こう側に並ぶ山々。最奥の天目山、蕎麦粒山、棒ノ折山は埼玉との都県境の稜線上に位置する山々です。
武蔵御嶽神社 |
11時、山頂にある武蔵御嶽神社に到着しました。結構な人出です。この神社、立派なだけあってその歴史も古いようです(なんと2千年)。創建は第10代崇神天皇の時代。第12代景行天皇の時代に東征してきた日本武尊が、ここの白狼に先導され難を逃れた(どんな災難だったのかは書いてありませんでした。)との言い伝えがあり、古くより関東の霊山として信仰されてきたそうです。崇神天皇は紀元前90年頃の天皇で、大和朝廷を確立した最初の天皇。これより前の天皇は実在しないと考えられています。ちなみに、日本武尊がここに武具を収蔵したことが「武蔵」の名の由来だそうです。鎌倉時代になると有力な武将の信仰を集め、さらに江戸時代には庶民の寺社詣でが盛んになるなど、永く繁栄してきた歴史を持っているようです。
日の出山 |
最後の階段を上って振り返るとこの風景。正面にこれから向かう日の出山が見えています。
日の出山山頂 |
双眼鏡で覗いてみると、おお、人がいる、ってそりゃいるわな。結構開けた山頂のようです。
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同行のMさんは、行く先々の寺社仏閣で御朱印を書いてもらうのが趣味のようで、この日もザックから立派な御朱印帳を取り出して、社務所で書いてもらっていました。渋い趣味です。この御朱印集め、今で言うところのスタンプラリーのような要素があり、ハマる人がいるのもうなずけます。確かに書いてもらった御朱印を見るとかっこよかったです。(こんなサイトも「御朱印マニア」)
この神社、yamanekoの故郷と意外なつながりがあったようです。江戸時代の初期、この神社の大規模改築を行ったのが大久保石見守長安。yamanekoの故郷には石見銀山があり、江戸時代には幕府直轄の天領でしたが、そこの初代代官をしていたのがこの大久保長安だったのです。石見銀山遺構には長安が開発した「大久保間歩」(間歩とは坑道のこと)が現存しています。
日の出山へ |
11時30分、日の出山に向かって歩き始めました。上の写真は途中にあった民宿入り口の案内板。「右 日の出山道」とあり、その下に「五日市 八王子 横浜を経て欧米方面」とありました。まあ、確かにそうではありますが…。
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スギとヒノキが混植されている中をスタスタと歩いて行きます。今でこそみんなケーブルカーで登ってきますが、創建以来、この道がメインの参道だったのだと思います。
フクロウ |
道の脇に休耕地が現れました。その向こうには雑木林。 むむ? 何か視線を感じる…。 おおっ、ありゃフクロウじゃないか? 距離50m。双眼鏡で見ると間違いなくフクロウです。こんな明るいときに見かけるとは。おおよその大きさは50pくらい。でかいです。なんでこっちを見ているんだろう? 御嶽神社のお使いか?
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フクロウで一盛り上がりしてから、再び歩き出しました。しばらく行くと鳥居が。どうやらここまでが御嶽神社の神域だったようです(やっぱりさっきのフクロウは御嶽神社の見張り番だ。)。
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鳥居から一転上り坂になり、そこから15分ほどで日の出山の山頂直下に到着しました。ここからは階段です。
山頂 |
12時10分、日の出山の山頂に着きました。結構広いです。
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360度の展望。特に東側には関東平野が一望できます。このパノラマだと名前に恥じない日の出が拝めると思います。霞んではいましたが都心の高層ビル群やスカイツリーもちゃんと見えました。
北西方向 |
北西方向の展望です。手前左のピークが御岳山。山頂の樹木が少しまばらになっているところです。正面の大きな山は鷹巣山(1737m)。その右肩奥には雲取山(2017m)が見えています。
南方向 |
南の方角には関東山地の辺縁部分が。裏高尾や陣馬山、ずっと向こうには大山や丹沢山系が見えています。広大です。
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みなさん弁当を食べていますね。yamanekoたちも昼食としましょう。こんな景色を見ながらですから、おいしくないわけがありません。ただ、おにぎりもお茶も冷たくて、体が冷えてしまいました。
下山開始 |
食事も眺望も十分に楽しんだ後、12時45分、つるつる温泉に向かって下山開始です。温泉とビールが待っています。
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パノラマを正面に見ながら尾根道を下っていきます。下りが続くのでついつい足取りが速まりますが、意識的に歩幅を小さくして歩かなければ、足下がズリッと。
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スギの伐採地に下りてきました。この辺りの植林地はよく管理されていて、このように区画を区切って伐採されているようです。
やせ尾根 |
結構狭いやせ尾根です。道幅は1mちょっと。その両側はかなりの急傾斜で遙か下まで落ち込んでいました。両側に木が生えているからなんてことはありませんが、これがなかったら背筋がヒューでしょうね。
林道と合流 |
1時25分、林道に合流しました。ここからまた舗装路です。
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谷間には日差しはなく、しんしんと冷えていました。この川に流れ込む小さな流れなどはあちこちで凍っていました。午後2時前でこの寒さですから、一日中氷が溶けないんでしょうね。
つるつる温泉 |
1時40分、待望のつるつる温泉に到着しました。ものすごい山の中なのに、大きくて立派な施設です。ちょっとしたスパリゾートといった雰囲気。中にはレストランあり、マッサージ店ありで、ゆっくりと過ごせる施設でした。
さっそく温泉につかって疲れを取ります。そして風呂上がりにはビール。至福の時です。今日の山歩きを振り返りながら、楽しい時間を過ごしました。
ここは路線バスの終点になっていて、ここからバスに乗れば、JR五日市線の武蔵五日市駅まで直通で行くことができます。3時45分発のバスで駅に向かい、そこからは新宿まで乗り換えなしで約1時間。あっという間でした。もっともアルコールが入ってウトウトしていたからなのかもしれませんが。
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