達磨山 〜曇天で結果オーライ(後編)〜


 

 (後編)

【静岡県 伊豆市・沼津市 令和3年7月31日(土)】
 
 西伊豆の達磨山での野山歩き。後編です。(前編はこちら
 

 Kashmir3D

 だるま高原レストハウスをスタートして西伊豆の主稜線に向かい、金冠山に登った後、戸田峠まで下りてきました。これから主稜線を南下し、達磨山を目指します。



 戸田峠では特段休憩することなく、主稜線上の山道に入っていきました。陽射しはなく空気も湿っていて少しひんやりするせいか、本来なら朝夕に鳴くヒグラシが盛んに鳴いていました。あの切ない鳴き声を聞くと遠い子どもの頃の記憶がよみがえってきます。



 鮮やかな朱色のこのキノコ。ウチワタケか。



 稜線の右側は急峻な地形で、戸田に向かって深い谷になっています。

 戸田

 ちょうど戸田の町を見下ろせるところがありました。あの辺りは晴れているようです(というか山の上だけに雲がある。)。戸田はかつて戸田村であって、平成17年に沼津市に編入・合併になったのだそうです。



 小達磨山に向かって階段を登っていきます。どっと噴き出す汗、汗、…。



 振り返るとさっき登った金冠山が望めました。山頂部にスポットで陽が差しています。(写真にマウスを乗せるとルートを表示)

 北東方向

 もう少し引いて見ると、金冠山と戸田の位置関係が分かります。
 伊豆が本州に衝突した今から約60万年前、この辺りに大型の達磨火山が形成されたそうです。その後その巨大な火山が大きく浸食されてカルデラ地形となり、その縁に残ったのが現在の達磨山や金冠山なのだそうです(達磨山の南側にある古稀山や伽藍山も同様。)。もちろん当時の達磨火山の火口は今は跡形もないという具合です。

 Kashmir3D

 このカルデラ地形の外側ぐるりが達磨火山の裾野だったと考えると、相当大きな山です(円はイメージ)。標高もそこそこあったでしょう。(写真にマウスを乗せると山名を表示)

 小達磨山

 10時25分、小達磨山のピークに到着しました。眺望は全くなく、ピークらしい広場もありませんでした。かろうじて標識によってここが小達磨山の山頂であることが分かるといった状態でした。

 目的地

 小達磨山のピークから少し下ると梢の向こうに目的地、達磨山の姿が望めました。いかにも眺望が良さそうな山です。



 一旦目的地が見えると、このような小ピークを越えるにも力が湧いてくるというもの。ガシガシ登っていきます。

 達磨山

 やがて周囲が開けました。なかなかどっしりとした山です。達磨山の名は、山容を達磨大師が胡座をかいている姿に見立てて付けられたといいます。うーむ、達磨さんというより布袋さんのような感じではありますが。



 モコモコとした植生はアセビですね。有毒植物なのでシカが食べ残して、結果こういう状況になるのだと思います。
 こうやって見ると達磨山の山腹はほぼササ原で立木がありません。これが炎天下での山登りだったら相当きついかもしれません。



 車道に出ました。この道は西伊豆スカイライン。ツーリングの聖地ですね。ここから100m弱車道を歩きます。

 駿河湾

 道路脇からは駿河湾が望めます。戸田の港の沖に対岸の「三保の松原」が見えました。(写真にマウスを乗せると矢印を表示) 矢印のところが三保の松原の砂嘴です。案外近いんですね。



 さあ、あらためて達磨山直下の登山口に到着しました。ここからひたすら階段を登ります。

 タケカレハ

 階段の途中でこの毛虫をたくさん見かけました。大きさは10cmほど。図鑑で調べたところタケカレハという蛾の幼虫でした。食草はササ類とのことで、まさにこの環境で見かけるのも頷けます。ちなみに刺毛に毒があるそうです。



 登っても登ってもまだ先に階段が続いています。小休止する間隔もだんだん短くなっていきます。体力も年相応に衰えてきているんでしょうね、残念ながら。



 振り返ると小達磨山が。その向こうに金冠山があるはずですが、ここからは見えません。
 太古、写真左手のちょうど雲が湧いている辺りに達磨火山の山体が聳えていたのではないでしょうか。

 達磨山山頂

 何事にも終わりはあるものです。長い階段を登り切り、達磨山の山頂に到着しました。時刻は10時55分です。スタートから2時間5分かかったことになります。
 山頂には3人の先客(おじいちゃんとお母さんと息子さんといったグループ)がいて、食事中でした。話を聞いてみると、おじいちゃんらしき人は神奈川から、他の二人は静岡からやって来たとのこと。普段は離れて暮らしているということですね。仲の良さそうな3人組でした。

 南方向

 さて、山頂からの眺望です。南方向には主稜線が続いています。写真右手のなだらかなピークが古稀山。その奥に伽藍山が続いているはずです。

 北東方向

 こちらは北東方向。中伊豆と呼ばれる辺りになります。明らかに晴れていますね。やはり雲は本当に主稜線上のみに覆い被さっていることが分かります。

 西方向

 こちらは西方向。今はなき達磨火山が浸食された谷の先に戸田の町が見えています。



 山頂のスペースは金冠山のそれよりずいぶんと小さく、あまり多くの人が滞在できる感じではありませんでした。なので、お菓子でパワーを充填して、下山を開始しました。



 カクカクする膝に注意しながら下ることしばし。車道のところまでやって来ました。やはりこの曇天は今日の野山歩きには幸いしていると考えるべきでしょう。これが晴天だったら間違いなく暑さでヘロヘロになっていたはずです。(とプラス思考で。)
 ここからは西伊豆スカイラインを歩いて戻ります。来た道を戻るより遠回りになりますが、車道だとアップダウンはなく終始緩やかに下って行く道となります。

 ヘクソカズラ

 路傍の花をいくつか。
 これはヘクソカズラですね。ツル性の植物で、他の植物やフェンスなどの人工物に絡みついているのをよく見かけますが、こんな風に吊り下がってる姿はなかなか風情があります。

 リョウブ

 こちらはリョウブ。この花序はこれから満開に向かうところですね。花の付き方がやや疎で涼やかな感じがします。

 タマアジサイ

 タマアジサイの花序がほころび始めています。ピンポン球より一回り小さいサイズの蕾の中に花序の全てが格納されていることに感動。いったいどのように折りたたまれているのでしょうか。

 戸田峠

 車道を歩き始めて35分、戸田峠が見えてきました。ここまでずっとラジコでオリンピックの競泳の実況を聞きながら歩いていたので、あっという間でした。さあ、ドリーム号Vが待っている駐車場まであとちょっとです。

 だるま高原レストハウス

 12時10分、ゴールです。なんとこの晴天。何か狐につままれたような感じです。稜線上を除いてずっと晴れていたんでしょうね。

 展望台

 駐車場の先の展望台に行ってみました。それにしても別の日のことのようです。



 その展望がこちら。…うむ、金冠山からのそれとほぼ同様ですな。両方とも脳内ストレージに記憶しておきましょう。
 
 今日は晴天を求めて伊豆にやって来て、もくろみどおり晴天であったにもかかわらず、結局ずっと雲の下を歩いていたというなんかおかしな野山歩きでした。
 舗装路歩きで固くなった筋肉を整理体操でほぐし、シャツを着替えて帰途につきました。
 
 




 修善寺に下りて行く途中に蕎麦屋さんを発見。ここで昼食をとることにしました。
 お勧めの十割蕎麦、ひんやりとしてとても美味。これで元気が戻ってきました。