由布岳 〜湯の町の山 秋深く〜
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【平成17年10月9日(日) 大分県由布市】
会社の用事で博多にやってきました。3年ぶりくらいの九州です。で、せっかくここまで来たのですから、どこか九州の野山を歩いて帰りたい。できれば気分がスカーッとなるようなところを。ということで、大分県は由布市(1週間前に庄内町、狭間町、湯布院町が合併して誕生したばかり。)にある由布岳に登ることにしました。今回は会社の後輩も一緒です。
ホテルのロビーに7時集合、と約束していたのですが、目が覚めたのは5分前。大急ぎで支度してバタバタのうちに出発です。天気は上々。まずは太宰府ICを目指します。
九州自動車道は3連休ということもあってか通行量はやや多め。それが鳥栖JCTから大分自動車道に入ると、とたんにのんびりとしてきました。遠くに見える山並みの向こうは日田盆地でしょうか。おそらく盆地を覆い尽くしていた雲海でしょう、山並みの切れ目から洪水があふれ出るように雲が流れ出していました。今日の秋晴れを約束するかのような風景です。
湯布院ICで高速を下りると、そこは湯の町。落ち着いた佇まいをみせる町並みのバックにそびえる由布岳が旅情をかき立ててくれます。どこからか永六輔の「遠くへ行きたい」が聞こえてきそうです。
登山口から (左は飯盛ヶ城) |
登山口は隣の別府市との境界にあたる峠にあります。ガイド本には車数台で満車と記述されていましたが、行ってみると道路の両側に有料駐車場が整備されていて、ざっと見ても200台くらいは駐車できそうです。ナンバーを見ているとおおむね九州一円からですが、なかには遠く関東圏のものも。
由布岳は標高1583mの双耳峰。独立峰としてその存在感はピカイチ(死語)です。ただ、登山口から見る姿は山頂部の二つの峰がかぶってしまい双耳峰には見えません。隣りに見えるのは寄生火山の飯盛ヶ城。由布岳を横綱とするならば露払い的な存在です。それでも1067mもあるんですから立派なものですが。
草原を行く |
10時20分、スタート。まずは目の前の草原を登っていきます。なだらかに見えますが、これがなかなか。昨夜の酒が汗になって全部抜けていくようです。足下にはアキノキリンソウやヨメナが涼しい風に揺れていました。
樹林帯入口 |
10時35分、標高差にして100mほど登ったところで樹林帯に入ります。ここには金網のフェンスがあって、そこの出入口を入ると「由布高原園地案内図」というでっかい看板が迎えてくれました。左に由布岳、右には別府の裏山とでもいうべき鶴見岳の登山道が、あまりにも簡略化して書いてありました。登山道の案内板ならもうちょっとリアルな距離感を追求してもよっかったのでは。
森内の小径 |
由布岳と飯盛ヶ城との間の谷筋を登っていきます。頭上の梢に陽を遮られて少ししっとりとした雰囲気になってきました。まだ傾斜もさほどきつくはないので、気持ちのいい山歩きです。林の奥からヤマガラの声も聞こえてきます。
イナカギク | サラシナショウマ |
イナカギクは別名ヤマシロギク。シラヤマギクとどっちがどっちだか判らなくなりがちです。葉の形や付き方、あと舌状花の多寡が見分けるポイントだそうです。しかしイナカギクだなんて、ベタな名前ですね。
谷筋(といっても水の流れはありませんが)に沿ってサラシナショウマが咲いていました。やや薄暗い中で白い花穂が浮き上がるように目立っていました。今がちょうど盛りだったようです。
ヤマボウシ(果実) |
ヤマボウシの実が赤く熟れていました。さっそく一ついただいてみることに。
んー、言ってみればイチジクの水分を抜いてもさっとさせたような味と食感。でも、お菓子の甘味に慣れた現代人にとっては新鮮な甘味として感じられるのではないでしょうか。ヤマボウシは公園樹としてもよく見かけますが、公園のものはどうも味は今ひとつ。なんか臭みがあるのです。プロパンガス風味とでもいうのでしょうか。(あくまでも個人的な思い込みです。)
合野越 |
11時10分、由布岳と飯盛ヶ城との鞍部「合野越(ごうやごし)」に出ました。ここだけ樹木が刈られていてポッカリと空間が開いています。標高はちょうど1000m。登山口からは250m登ったことになります。ひと休みするにはちょうどよい時間距離にあるポイントで、他の登山グループの人たちも一様にここで休憩していました。
合野越からの飯盛ヶ城 |
目の前には緑の飯盛ヶ城が見えます。春先には山焼きでもするのでしょうか。山頂まで草原が維持されています。主峰が秀麗なら脇に控える峰もまた端正。ほのぼのとした風景です。
さて、息が整ったところで再出発です。
いよいよ主峰へ |
さあここから由布岳の山腹をジグザグに登っていきます。それでも初めは木立の中です。先ほどまでの谷筋の道と違うのは、ソフトボール大の石がごろごろと転がっていること。これが結構歩きにくいのですが。
目を楽しませてくれるのは木漏れ日が描くマーブル模様。木立の間を抜けてくる風がまた心地いいです。
眺望が開けた |
いったいどのくらいの折り返しをしたでしょうか。周囲の樹木が低くなり、眺望が開けてきました。さっき合野越で見上げた飯盛ヶ城が眼下にあります。正面の山塊は雨乞岳(左)と城ヶ岳(右)。写真には写っていませんがはるか向こうには久住連山の姿も望むことができました。
日差しを遮るものはなく、秋晴れの陽光を全身に浴びながら登っていきます。麓から終始吹き上げてくる涼やかな風が体を冷やしてくれます。
タンナトリカブト | ホソバノヤマハハコ |
今日は天気も良く、ファミリーや熟年夫婦、ツアー客などたくさんの登山客が訪れています。立ち止まって休むたびに抜いて抜かれてお互いが前後しながら登っていきます。
湯布院の町 |
12時、遠く湯布院の町の方から正午を告げるチャイムの音が聞こえてきました。やっぱり昼食は山頂で食べたいので、とりあえずここでは休憩のみとすることに。それにしてもずいぶん登ってきました。広島県の最高峰は恐羅漢山の1346m。もうその高さは超えていると思います。
天に向かって (ほぼ真上を見ています) |
振り返って山側を見上げてみると、迫りくる急傾斜の山腹におもわずのけ反りそう。その先でツインピークスが青空に浮かぶ天上世界のように聳えていました。
このあたりから道はジグザグから直登に変わりました。いよいよ山頂部が近づいてきたことが分かります。もうひとがんばりです。
「マタエ」へ |
12時30分、ガレ場を登り切ると「マタエ」と呼ばれる分岐点に到着。ちょうどお昼時なのでたくさんの人が座り込んで休んでいました。ここから左へ行くとスリルのある鎖場を経て西峰の山頂へ。右へ行くと15分ほどで東峰の山頂です。ここはやっぱりスリルを避けて東峰に登ることにあっさりと決定。お互い高いところは苦手な方です。
「マタエ」から東峰方向を望む |
さあ、山頂に向けて再び歩き始めます。道はいよいよ急になりほとんど手を使いながら登っていきます。石を蹴り落とさないように気をつけなければ。
西峰へ向かう鎖場 (土が露出している所がマタエ) |
振り返ると、マタエから西峰に向かう道が見えました。鎖場のあるところです。
背筋がスッとしたところで、また前進。そして12時45分、ようやく山頂が見えてきました。あと少しです。
山頂が見えてきた |
いよいよ山頂です。スタートから2時間30分。道草をしながら登った割には早かったです。
山頂は何段かになっていて最上部は広さ8畳ほど。ごつごつした大きな岩が折り重なり、その隙間に丈の低い灌木が生えています。
何組ものグループが山頂の標識とともに記念撮影をしていました。
下界 |
麓の方を見やるとあたかも「下界」といった風情。なんとも気分爽快です。
左は西峰。右は東峰から連なる小ピーク |
由布岳の山頂は西峰と東峰とがありその間には凹んだ火口部があります。その縁を巡るお鉢巡りをする人もたくさんいました。山頂からの眺めは360度。とはいっても、西の方角は西峰に遮られて東峰から望むことはできません。
山頂の端の断崖に腰掛けて昼食としました。こんなシチュエーションで食べるご飯は、たとえそれが105円のコンビニむすびであっても最高のごちそうとなりえますよね。食後はただひたすらボーッとして心を開放です。
肋骨雲 |
13時30分、下山を始めます。もっとゆっくりしたいところですが、広島まで帰ることを考えるとそろそろ下り始めなければ。
ヤマラッキョウ | コバノガマズミ |
帰りは来た道を戻ります。
ただひたすら足下を見て、転ばないよう、くじかないようゆっくりと下りていきました。それでも1時間30分ほどで駐車場まで戻ってくることができました。
駐車場 |
15時15分、駐車場に到着。車はもう半分以上がいなくなっていました。
今日は自分も後輩もケガなく、楽しい山歩きとすることができました。あとは近くの温泉で疲れを癒して、ロングドライブにそなえるだけです。
露天風呂からの由布岳 |
温泉の後、17時湯布院発、23時広島着。長かったぁ。
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