山野峡 〜涼風を忘れた渓谷 …汗!〜


 

【広島県福山市 平成14年8月25日(日)】
 
 お盆を過ぎていきなり秋風が吹きはじめたので、おや?と思っていたのですが、そうは甘くありませんでした。
 やっぱり残暑のぶり返しが…。
 今月の観察会は渓谷沿いの自然観察なので涼しい風を期待していました。がしかし、風自体あまり吹かず暑い一日でした。

 竜頭滝入り口駐車場に10時集合。
 今回もたくさんの参加者です。

 開会に際して、ここ山野峡の自然環境について加藤代表からレクチャーがありました。(カレンダーの裏を利用した解説図です。)
 広島県の地形の特徴は、中国山地から瀬戸内海沿岸にかけて、おおまかに3段の階段状になっていることです。
 地表は長期間(何万年単位)の浸食作用で準平原になりますが、準平原になりきる前に土地が隆起するとその時点から次の浸食輪廻が始まります。これを何回か繰り返すと数段の平坦面ができるのだそうです。
 広島県では中国山地脊梁部の「高位面」、世羅台地、賀茂台地などが位置する「中位面」、沿岸部の「低位面」という構成になっています。各面の境界部には滝や渓谷が作られ、浸食作用によって櫛の歯の隙間のように上の面に切れ込んでいくのです。
 ここ山野峡は中位面と低位面の境界部に当たり、竜頭滝も中位面の岩盤を削りながら奥へ奥へと進入しつつあります。(といってもこれも何千年単位での時間の流れですが。)

 渓流に沿ってキヨスミイトゴケにとりつかれている木がたくさんありました。ここが霧に覆われる多湿な環境であることがうかがえます。でも、今日はカラッカラ。本来はしっとりしているのでしょうが、触ってみるとまるで干したイワノリのようにパリパリしていました。そういえば周囲の木や草の葉もしおれてだらんと垂れ下がっているものばかり。山全体が乾きに耐えているかのようです。

 タカネハンショウヅル

 「このハンショウヅルは何だろ?」と皆で話していたのですが、どうやらタカネハンショウヅルのようです。ちょっと萼が広がりすぎですか。

 スズムシバナ

 この時期の山野峡ではスズムシバナに会うことができます。朝咲いて午後には閉じてしまうので要注意。(写真は別の日に撮影したもの。)

 アオイカズラ

 アオイカズラはここ山野峡が基準産地だそうです。ツユクサの仲間で、小さな半透明の白い花を付けます。(この写真も。)

 そうこうするうちに竜頭滝に到着。渓谷のどん詰まりにホール状の空間があり周囲を高さ50〜60mの岸壁がぐるりととりまいています。その岸壁をつたい落ちるのが竜頭滝です。
 さて、ここで昼食。弁当を食べながら目の前の岸壁を見上げ、「なるほど、これがまさに境界面か。」と、ちょっと感心。
 

 渓谷沿いには金属ネットの円筒形ゴミ箱が何カ所か設置されていました。景勝地や行楽地のゴミ箱は常にゴミであふれかえっているのが当たり前のようになっていますが、ここでは暑い中地元の方が数往復してゴミを片づけておられました。ご苦労様です。
 自然の中にゴミ箱は似合いませんよね。もちろんゴミは持ち帰りです。「ゴミ箱を置かない→川に投げ込まれる→ゴミ箱のゴミを片付けるより大変」、この流れが、「ゴミ箱を置かない→ゴミを持ち帰る」、になるとよいのですが。

 


 いつも野山で一緒に遊んでもらっているTさんからゴーヤをいただきました。
 なので、ゴーヤの花を。

 やっぱ、キュウリの花に似てます。