八幡川河口 〜水鳥の楽園いつまでも〜


 

【広島市佐伯区・西区 平成18年1月15日(日)】
 
 年末の寒波もどこへやら、今年の正月三が日は例年にもまして穏やかな日和りでした。初詣で引いたおみくじが今ひとつだったのが気にかかりますが、それも「気を引き締めていけよ」というアドバイスとして受け止めておくことにしました。(何事も前向きに…)
 そんなこんなで松の内も終わり、巷はすっかり通常ペースのリズムに戻ったようです。今日は広島自然観察会の1月の定例観察会。場所は広島市西区と佐伯区の境にある八幡川河口で、テーマは野鳥観察です。それと午後からは近くにある広島市西部リサイクルプラザに移動して、資源ゴミのリサイクルについて勉強してみようという企画になっています。

 水鳥の浜公園

 午前9時50分、「水鳥の浜公園」に集合。この辺りはもともと海だったところで、ずいぶん前から埋立てが進められてきました。八幡川の対岸の西区側は「西部商工センター」として20年以上前に整備され、広島近郊の一大流通基地として機能しています。一方、川の手前側の埋立ては比較的新しく、この公園やマンションが造成されている他はまだ空き地も多いようです。商工センターと廿日市市の木材港を一直線に結ぶ幹線道路が埋立地の真ん中を貫いていて、その道路の南側(海側)は今も埋立て中。その中には大きな池が二つあって、ここに水鳥がたくさん集まってくるのだそうです。

 開会

 今回のリーダーは鳥に詳しい太田さん。彼女は日本野鳥の会広島県支部にも所属しています。今日は野鳥の会の月例探鳥会との共同開催なので、お手伝いする我々スタッフとしては心強い限りです。(ていうか、ほとんど丸投げですが…)
 野鳥の会ではこの場所で25年間にわたって毎月探鳥会を行っているのだそうです。当初はこの辺りは海だったとのことですが、ずいぶん環境も変化したことでしょう。
 開会に際して、野鳥の会の日比野さんからレクチャーがありました。今日の行程、時間割、この時期の観察のポイント、観察のマナー、トイレの場所、危険回避のための注意喚起など、必要にして十分かつ簡潔なアナウンスで、このことからもこの会が練達した運営手法を確立していることがうかがわれます。まさに継続は力なりです。

 八幡川河畔

 公園から土手を越えて八幡川の河畔に移動しました。正面に見えるのは鈴ヶ峰。ここは河口まで100mほどの場所で、完全にコンクリートで護岸されています。
 水鳥は、山中で木々の梢越しに見る鳥とは違って観察する人間との間に障害物がないため、遠く離れることによってその安全を確保するのだそうです。なので倍率が低めの双眼鏡(7倍〜10倍)ではよく観察ができず、どうしても三脚付きの望遠鏡(15倍〜35倍)が必要となります。
 ここでもっとも目立っていたのはヒドリガモ。数羽ずつ寄り合って水面でじっとしていました。全体でみると結構な数です。あと尻尾が水平に長くとがるオナガガモ。このヒドリガモやオナガガモは潜って餌を採ることができないので、干潮になって水深が浅くなるまで水面でのんびりと休んでいるのだそうです。このようなカモを「淡水ガモ(陸ガモ)」と分類するそうです。(伝聞の連発でスミマセン)
 今日の参加者は2団体合同なので7、80人はいそうな勢いです。ここでは明らかに鳥よりも人間様の方が多いようです。

 広島湾

 ひとしきり観察したら河口に向けて移動。商工センターとの間に架かる橋の下をくぐると、もうすぐそこが河口です。
 遠く広島湾越しに年末に登った鉾取連山が見えました。直線距離にして17qあまり。向こうからもここが見えていたことになります。

 人工干潟

 河口に出ると右手に向かって人口干潟が続いています。今は満潮なので砂浜しか見えていませんが、干潮になったら干潟が出現するのでしょう。階段状になった親水護岸が造られていて、ここまでは誰でも立ち入ることができます。(夜間は入れません。)
 砂浜の先に延びる堤防が埋立地の縁にあたり、この内側が探鳥会の場所になるのです。ただし、ここは普段は有刺鉄線で囲まれた立入禁止区域。野鳥の会の月例探鳥会は例外的に立入が許されていて、会が終わったらまた施錠して引き上げるのだそうです。

 埋立て地内の池

 埋立地の堤防に並んで内側を見ると、原っぱの向こうに池が見えます。ここの水は海水ではなく雨水が溜まったものなのだとか。それにしてもここは今も埋立てが進行しているのでしょうか。ずいぶんほったらかしになってるようにも見えますが。ひょっとしたら事業凍結なのかと感じるほどの荒野っぷりです。でも、それが野鳥にとっては好都合なのかも。人間がやってこないくつろぎの場所となっているようです。
 肉眼ではどれもゴマ粒のようにしか見えませんが、望遠鏡の中では水鳥たちの生き生きとした生態を観察することができました。

 大きい方の池

 妙に背の低い標識がありました。ここが埋め立てられた土地であることを物語っています。そのずっと向こうには宮島の姿が。
 池の中には浮島のようなものが二つ作られていて、その上はたくさんのカワウが占拠していました。カワウは水中に潜って餌を採る必要から、体が浮きにくいように羽には脂分が少ないのだそうです。なので、休憩しようとしても水面に浮かんでいることができず、浮島の上や杭の先端などに停まっているのだそうです。

 「鳥合わせ」

 あっという間にお昼です。人工干潟の親水護岸まで戻ってしめくくりの「鳥合わせ」を行います。探鳥会の後には必ずこの「鳥合わせ」をして、参加者全員で観察した鳥の種類と数を確認しあうのだそうです。種類はともかく数まで数えるとはさすがは野鳥の会です。
 結果は、全部で43種。最も多かったのがヒドリガモで、518羽。次がオオバンで、265羽。次いでオカヨシガモの194羽と続きます。少ないところではミミカイツブリやダイサギの1羽というのも。yamanekoが自らの目で観察した鳥たちは、カンムリカイツブリ、カワウ、マガモ、カルガモ、コガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、ツクシガモ、スズガモ、ミコアイサ、ウミアイサ、オオバン、アオサギ、ミサゴ、トビ、ユリカモメ、セグロカモメの21種でした。
 今、全世界には8千から9千種の鳥がいると言われています。そのうち日本国内で見られるのが約520種。さらにそのうち広島県内で確認されているのが約300種。そしてここ八幡川河口付近でこれまでに確認されているのが150から180種だそうです。100万都市のすぐ近く、工場や倉庫が建ち並ぶ沿岸の埋立地で、日本中で見られる鳥の半分以上を見ることができるということに、正直驚き、そしてそれが貴重なことであるということをあらためて感じました。
 これから埋立てがどうなるかは分かりませんが、わずかに残された水鳥たちの楽園が一日でも長くここにあることを願うばかりです。


 西部リサイクルプラザ

 探鳥会が終わり、いったん解散したのち、広島自然観察会のメンバーだけは橋を渡って商工センター側にあるリサイクルプラザに移動します。
 会議室をお借りしてめいめい昼食を済ませてから午後の部です。
 広報担当の黒木さんからここの事業概要を紹介していただき、その後分かりやすいビデオを見させてもらいました。
 それによると…
 ここ西部リサイクルプラザは、回収された資源ゴミを分別しリサイクルしやすいように再資源化して出荷する施設。平成9年にオープンしたのだそうです。設置は広島市ですが運営は外郭団体の環境事業公社です。ただし、実際の事業は入札によりそっくり民間事業者に任されているようですが。

 再生品販売コーナーも

 広島市では家庭から出されるゴミを可燃ゴミ、ペットボトル、リサイクルプラ、その他のプラ、不燃ゴミ、資源ゴミ、有害ゴミ、大型ゴミの8種類に分けて収集しています。
 可燃ゴミ(生ゴミ、再生のきかない紙くず、木くずなど)は、消却して、その灰を埋立処分します。
 ペットボトルリサイクルプラ(容器包装プラスチック)は、それぞれの再生事業者に引き渡され再生されます。
 その他のプラ(ビデオテープ、CD、プラ製おもちゃ、ビニールひもなど)は焼却処分。
 不燃ゴミ(茶碗、アイロン、ビニールシート、靴など)は埋立処分。
 資源ゴミ(紙、空き缶、布、ガラス瓶など)は、リサイクルプラザで再資源化して再生事業者へ。
 有害ゴミ(蛍光管、乾電池、体温計)は選別施設で選別した後、無害化されます。
 大型ゴミ(家具、寝具、家電製品、自転車など)のうち、家電リサイクル法対象のエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機はリサイクル工場へ。その他は鉄の部分のみ再生し、残りは焼却処分か埋立処分です。

 今日は日曜日なのでラインは止まっていました。ここには3本のラインがあり、稼働しているときには1本あたり15人、計45人が作業にあたっているそうです。
 
 ここ西部リサイクルプラザには、広島市内のうち安佐北区と安佐南区以外の資源ゴミが集まってきます。その量たるや1日に約90トン。それを12種類に分け、それぞれ不純物を取り除き、紙や布は圧縮梱包し、また、スチール缶やアルミ缶はブロック状に圧縮成形し、ガラス瓶は色別に分け、それぞれリサイクルしやすい状態にして出荷するのです。ただ、そうやって再資源化しても、入ってきた資源ゴミの量の10分の1は使えない残りカスとして埋立処分になります。
 そう考えると、燃やしたり埋めたりしなければ処理できないゴミの量がいかに多いかということが分かります。リサイクルだけではにっちもさっちもいかない現実。これはもう出すゴミの量を少なくするしかないようです。


 午後2時、最後のまとめをして解散となりました。その後、事務局メンバーのみ残って来年度の行事計画をたてましたが、時間切れで次回に持ち越しに。
 
 今日ははからずも「埋立」というキーワードで観察会を行うことになりました。
 これが今年最初の「野山歩き」ですが、yamanekoとしてはずいぶん遅い始動となりました。今年もこんな調子でやっていこうと思いますので、よろしくお願いします。