八幡高原 〜湿原めぐり 花めぐり〜
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【広島県芸北町 平成15年7月5日(土)】
今年の梅雨はもしかしてカラ梅雨なんでしょうか?
梅雨入り後、しっかりと雨が降った日は数えるくらいしかありません。今のところ晴れた日は2日しかないので、梅雨前線自体は居座っているのでしょうが、活動が弱いのかもしれません。
どうやら今日もそんな一日だったようです。
今日は久しぶりに芸北町の八幡湿原へ。
まずは戸河内町の道の駅「来夢(らいむ)とごうち」で腹ごしらえ。
この道の駅には、小さな物産館やレストラン、露店の花屋などがありますが、もっぱら利用するのはトイレのみ。道をはさんだ反対側にある団子屋やコロッケ屋、コンビニなんかをよく利用します。
今日は4軒並んだ一番右にあるコロッケ屋でコロッケを2個買い(掻き揚げ1個サービス)、それを持って3軒目のラーメン屋へ。コロッケをおかずにオリジナル掻き揚げラーメンを昼食としました。
空はどんよりとして今にも降り出しそうな感じです。
虫木峠を越え、深入山のふもとを巡り、やがて八幡高原に入ってきました。
八幡湿原は、西中国山地の脊梁部、島根県との県境に近い標高800m前後の八幡高原に点在する湿原の総称です。古代、この場所には大きな湖があったそうですが、この高原の南に位置する臥龍山の山腹が滑り、湖は埋まってしまったと考えられています。そして多くの湿原が形成されましたが、長い年月をかけて徐々に陸地化が進み、今ではかつての湖の周辺部に当たる位置に「尾崎谷湿原」、「長者原湿原」、「千町原湿原」などの中間湿原が残るのみとなっています。
ちなみに現地の解説板には「日本の湿原分布のほぼ南限にあたる」との記述があります。九州にもたくさん「○○湿原」という地名があるので「おや?」と思っていたのですが、どうやら「湿原」とは狭義には高層湿原と中間湿原とを指すものらしく、これらは冷涼な地域でなければ発達しないのだそうです。
トキソウ |
まずは長者原湿原へ。
路傍の小さな湿地にトキソウをみつけました。この時期になってもまだ咲いているというのは、やはりこの辺りが冷涼であるということなのでしょうか。
この花冠の造形の見事さにはいつも見とれてしまいます。
クサレダマ |
また別の湿地へ。ここではクサレダマに逢いました。
「腐れ玉」ではなく「草蓮玉」です。ようやく咲き始めたところで、これからたくさん咲くでしょう。
尾崎谷湿原 |
次に尾崎谷湿原へ。湿原手前の小さな駐車場に車を止めると、とうとう雨が落ちてきました。
車の中で眠ること30分。雨は上がり雲間から薄日が差してきています。「待てば海路の日和あり」ですね。
ハンカイソウ |
高さ1.5mほどの立派なハンカイソウが咲いていました。まだつぼみも多く、これからが盛りでしょう。
ハンカイソウとは、その雄々しい姿を中国前漢時代の武将「樊○(口へんに會)」に見立てて名付けたものだそうです。
ビッチュウフウロ |
ビッチュウフウロです。湿原周辺のフウロソウの仲間は、地方によって様々な種に分かれているそうで、このビッチュウフウロはその名のとおり備中(岡山県西部)を中心とした地域の湿原に見られることから名付けられたそうです。
薄ピンクの花弁に濃紫色の網目模様が印象的です。
ハス |
池になっているところにはハスが咲いていました。
ハスの花は朝開いて、しばらくすると閉じてしまいます。これを3日繰り返し、4日目に花弁が散るのだそうです。
「ハス」の名は「蜂巣」から。ハスの何が蜂の巣なのかはご存じのとおりです。
アサザ |
水面から5pほど花茎を出してアサザの花たちが直立しています。見ている間には虫がやって来た様子はなかったのですが、やはり虫媒花なのでしょうか。
ウツボグサ |
鮮やかな紫色はウツボグサ。この花の花穂もよく見るとおもしろい形をしています。シソ科の植物なので唇形花をたくさん付けています。
名前は、海のギャング(「ギャング」ってのも死語ですが)といわれるウツボではなく、花穂の形が矢を入れる「靫(うつぼ)」に似ているところから付けられました。ところで靫ってどんな形だったっけ。
ヒレハリソウ |
ヒレハリソウの花を見ていたら、花弁の先端がわずかにめくれていることに気が付きました。ラッパのように開くわけでもなく、微妙なめくれ加減だなと思っていたら…
ハナバチがやって来て、その意味が分かりました。わずかにめくれているところに足をかけて身体を固定し、花冠の中に頭を突っ込んでいます。なーるほど。
さあ、次は千町原湿原に向かいます。
その前に二川キャンプ場に寄ってみたのですが。
コウホネ |
なんと熊出没のため閉鎖されていました。ここは前から熊が出るといわれていましたが、とうとう閉鎖ですか。キャンパーの出した生ゴミなどが熊を呼んだのではないでしょうか。
池にはちょうどコウホネがきれいに咲いていました。他にはユウスゲやノハナショウブも。当然人っ子ひとりいないので、静寂の中での観察です。
千町原湿原に着いた頃、また雨がパラパラと。でも、傘をさすまでの強い雨ではありません。
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オカトラノオ |
オカトラノオの花畑にヒョウモンチョウの仲間が集まっています。しゃがんで視線を花穂の高さまで下げて見ると、本当に「純白の花畑を乱舞する蝶たち」といった世界が広がっています。ちょっとメルヘンすぎるか。
スイカズラ |
林縁に茂るスイカズラはバックの黒によく映えます。薄ピンクあり、白あり、黄色ありで、なかなか華やかです。はじめは白や薄ピンクなのですが、しだいに黄色に変わっていくのだそうです。何か意味があるのだろうか。
クララ |
草原部分にはクララが花盛り。漢字で書くと「眩草」 なんでも根汁を舐めると目が眩むほど苦いからだとか。このことは牛や馬もよく知っているようで、牧草地でも食べられることなく繁殖しています。
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カラコギカエデ |
カラコギカエデが翼果をたくさん付けていました。
寒冷地の湿原などに多い木で、近畿以西ではまれなのだそうです。葉はウリカエデのそれに似ていますが、こちらの方が裂片の切れ込みが深いようです。
しかし今日は行くところ行くところ本当にさまざまな花と出会いました。一人での花めぐりでもこれだけの花に出会うとほんと退屈しません。
時計を見るともう夕方。さあ、そろそろ帰るとするか。
帰りには加計町の「よしお」に寄って鯛焼きを1個購入。そして、広島の郊外まで戻ってきたところでバッティングセンターへ。吉和、芸北、戸河内方面へ出かけたときにはこのパターンが定番となってきました。
先日、まだつぼみだったコクランがその後どうなったか見に行きました。
広島市内の有名な寺の裏山にひっそりと咲いています。ただヤブ蚊が多いのには閉口してしまいます。
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