野冠・宇賀 〜太田川沿いの春探し〜


 

【広島市安佐北区 平成15年4月13日(日)】
 
 4月の定例観察会です。
 場所は安佐北区の野冠(のかずき)地区から宇賀地区にかけての太田川沿い。細い道路を歩きながら林縁の自然観察です。

 野冠橋から宇賀方面(上流)
 を望む


 今回で3年目になる地元の町興しグループ「久地北太田川げんき村」の皆さんとの共催イベントです。
 おかげで参加者も80人くらいには達していたのではないでしょうか。嬉しいのはその多くがJR可部線を利用して来られたこと。この秋の廃線が決まっているだけに少し寂しいですが。

 開会のようす

 野冠公民館の前で開会です。
 観察会ではいつもトイレの確保が重要な課題となりますが、今回は地元の方のご協力により、民家のトイレを含め3カ所を提供していただきました。感謝です。
 
 まず、野冠神社の大きなカゴノキとタブノキを観察。小さな神社ですが昔から大切にされているようで立派な寺社林を形作っていました。

 カテンソウ

 神社の脇の草むらから煙のようなものが、ポッ、ポッ。あちこちから立ちのぼっています。まるでタバコの煙のようです。
 これは、カテンソウが開花するとき、内側に曲がっていた雄しべがはじける勢いで花粉を撒き散らしているのです。ここに春風が吹いてくればずいぶん遠くまで花粉を運ぶことができるでしょう。自然の巧みな技ですね。
 
 そして、いよいよ川沿いの道を宇賀地区に向かって歩きます。
 車の離合も難しいほどの狭い道ですが、地域の生活道路となっているためけっこう往来があります。みんな観察に夢中なのでスタッフは安全確保に十分配慮しなければなりません。

 よーく見てみよう

 4月も半ばになるとたくさんの花たちに出会うことができます。このときのために蓄えたエネルギーを費やして花を開き、次の世代へと命をつなぐ。皆、一生懸命に生きています。

 ヒトリシズカ  イカリソウ

 他にもミヤマカタバミやムラサキケマン、オドリコソウ、木本ではヤマブキ、キブシなどの花が迎えてくれました。


 ミヤコアオイ

 これも立派な花です。ウマノスズクサ科のミヤコアオイ。
 観察会では「採らずに観察」が基本ですが、教材にするときには最小限の範囲で採取することがあります。そのときには「いただきます。」と声に出して。こうすると周囲の人にもその姿勢がうまく伝わるのです。

 ジロボウエンゴサク

 ケシの仲間のジロボウエンゴサク。伊勢地方でこれを次郎坊、スミレを太郎坊と呼んで、子どもがお互いの花の距(花の後ろ側に長く突き出ている部分)を引っかけて遊んだことに由来するのだそうです。

 河原で昼食

 時計の針ははや1時を指しています。目的地について河原で弁当を広げます。
 後ろには可部線の鉄橋が。この河原では夏場、たくさんの人が泳いだりキャンプをしたりしています。去年の夏の「アユ喰おう会」もここで開催されました。

 古い民家が…

 昼食後、古い民家を民芸ギャラリーとして使っているお宅を見学させてもらいました。布を使った楽しい小物とか、素焼きの陶器とか、ここの奥さんのセンスには唸らされます。もともと奥さんの生家だったのだそうで、今は街場の住宅地からご主人と共に通いでやってきて、奥さんは民芸品作り、ご主人は農作業の毎日だそうです。せかせかした都会とは時間の流れ方が違っているような気がしました。

 作品の一つ