鶴見緑地 〜冬の公園と夏の高山と〜


 

【大阪市 鶴見区 平成31年1月27日(日)】
 
 年明けそうそうインフルエンザにかかったりして、なかなか野山歩きができずにいました。で、ようやくこの週末はと準備をしていたのですが、なんとこのタイミングでシーズン最強寒波が襲来。近畿中北部はもちろん紀伊半島の低山にまで降雪の予報です。ということなので山は止めにして、鶴見緑地に行ってみることにしました。ここには去年の10月にバーベキューをしに来たことがあります。広い緑地公園で樹木もたくさんあったし、温室もあったので花にも出会えるでしょう。
 
                       
 
 家を昼過ぎに出て地下鉄で移動。谷町四丁目で長堀鶴見緑地線に乗り換えて、ズバリ鶴見緑地駅で下車。小一時間で到着しました。

 鶴見緑地駅

 駅の出口は、よくある狭い階段出口ではなく、地上から広く半円形に掘り込まれたような形になっていました。言ってみれば露天掘りです。休日にもかかわらず閑散としていました。 鶴見緑地は、正式には「花博記念公園鶴見緑地」と言います。もともと一面の田んぼだったところを整備し、昭和47年に鶴見緑地として開園したもので、その後平成2年の国際花と緑の博覧会の会場となり、その閉会後また公園として再整備されたものだそうです。

 ラクウショウ並木

 駅から道を渡るとすぐに緑地の正面入り口。立派な並木が出迎えてくれました。
 この高木はラクウショウ。漢字では「落羽松」と書き、まさに落葉する羽状複葉を言い表した名前です。別名を沼杉ともいい、湿潤な環境を好む樹木です。



 見上げるとこんなものが枝先に。これは種子が出た後の果実で、まあ松ぼっくりのようなものです。

 フウ

 並木道を突っ切ると園の中央にある大池に出ました。この畔を反時計回りに歩いていきます。
 この時期、多くの樹木は葉を落としています。これはフウ。漢字では「楓」と書き、これは「かえで」とも読むのでややこしいです。しかもモミジバフウという近縁の種があり、これはその名のとおり葉がカエデにそっくり。でも葉の付き方をよく見ると、カエデの葉は枝に対生に付きますが、フウもモミジバフウも互生に付くので、まずこの点を確認すると大丈夫です。まあ全体の姿もカエデとは違い、フウは高く直立するのでなんとなく違いは分かりますが。



 フウの果実。とげとげしいです。モミジバフウの実もこれによく似ていて、今のようにカサカサの状態では区別しにくいのですが、フウの方がイガイガが細く、実がまだ青いうちなら比較的その差が分かりやすいです。とはいえ葉があれは一目瞭然。フウの葉は3裂、モミジバフウの葉は5裂なんです。

 ユリノキ

 これはユリノキ。枝に残る果穂が百合の花に似ているということだそう(そんなに似てるかな?)。別名チューリップツリーとも呼ばれ、これは花の形から付けられたものです。



 枝先に残っている果穂は、やがてバラバラにほぐれ、クルクルと回りながら落下します。この笹の葉型のもの一つ一つが果実です。

 ケヤキ

 これはケヤキですが根元か株立ちになっています。植栽ゆえの何か原因があったのかもしれません。通常は太い幹が木の高さの半分くらいまであってその上部で枝が展開します。竹箒を逆さまに建てたような姿が自然のものです。



 ケヤキの落葉は枝先の数枚がまとまって落ちるのが特徴。これは落下の際に風の抵抗を高め、より遠くに着地しようという戦略のようにも見えます。ケヤキは葉の付け根に小さな実を付けています。この実がばらけて落ちるのならほとんど真下に落ちるだけですが、葉とともに、しかも何枚かとともに落ちるのであれば、葉が十分に帆の役割を果たすということです。

 アキニレ

 冬晴れの空に葉を落とした樹木の枝がよく映えます。これはアキニレ。材が硬く、様々な器具材として用いられた木です。



 葉が落ちても枝に残る翼果。一つ一つは一円玉を一回り小さくしたくらいの大きさです。

 大池

 大池の周りを半周して丘の上までやって来ました。奥にラクウショウの並木が見えます。梅田からわずか数キロのところにこんな緑地があるとは。驚きを感じます。

 ネムノキ

 ネムノキですが、よく見かけるものとは樹形が少し違うような。公園だから他の木と干渉にないようスマートに剪定されているのかもしれません。
 この木は日暮れとともに羽状の葉を閉じることで知られていますが、今はその葉もありません。



 エンドウ豆のような果実。葉は落ちても果実はけっこう枝に残ります。

 咲くやこの花館

 大池の周りを4分の3周したところに大きな温室施設が。「咲くやこの花館」です。花博のパビリオンとして建てられたものです。晴れているとはいえそろそろ冷えてきたので、中に入ります。
 館内では「POPなキノコ展」というのをやっていて、結構な人の入りでした。みんなここに暖を取りに来たのでは。

 高山植物エリア

 yamanekoは熱帯植物エリアは素通りして高山植物エリアへ(温室だというのに)。かなり涼しい温度設定でしたが、それでも外より暖かかったです。なにしろ夏の高山の気温ですから。

 リュウキンカ

 おお、リュウキンカが咲いている。茎が立ち上がっていますが、これが名前の由来で、漢字では「立金花」。金は花冠の黄色のことですね。

 ヒメシャクナゲ

 寒冷地の湿原に生えるヒメシャクナゲ。尾瀬で初めて出会ったのが印象に残っています。いわゆるシャクナゲが人の背丈の2倍ほどにもなる中高木なのに対し、このヒメシャクナゲはせいぜい20センチ程度。ヒメにもほどがあるというものです。でも草ではなく樹木なんですよね。

 コケモモ

 コケモモの小さな白い花。果実は赤く熟し、ジャムなどに加工されます。寒さには強く、マイナス40度でも大丈夫なんだとか。

 オオバナノエンレイソウ

 普通のエンレイソウより明らかに大きな花冠を付けるオオバナノエンレイソウ。 普通のエンレイソウの花冠はこのオオバナの花弁1個の半分ほどしかありません。
 この花は北海道や本州北部で見られるそうです。同じ白い花冠のシロバナエンレイソウ(花冠の大きさは普通のやつとほぼ同じ。)はもっと南方でも出会うことができます。エンレイソウはユリ科と覚えていましたが、APG体系ではメランチウム科だそうです。何だ、メランチウムって?

 ミチノクコザクラ

 ミチノクコザクラは岩木山(青森県)の固有種。雪解け跡の湿ったところに群生するそうです。サクラソウの仲間は変種など細かく分かれるので、なかなか違いが分かりません。

 ユキワリコザクラ

 ユキワリコザクラもサクラソウの仲間。こちらは中部地方以北と分布域も広いです。日当たりの良い岩場や崩壊地に生えるそうです。

 コマクサ

 夏の高山の定番、コマクサです。砂礫地を好み、その荒れた風景の中で風に細かく揺れる姿が可憐です。草津白根山を訪れた際に、地元の中学生たちの手で守られている群生地があって、見事だったのを覚えています。

 ヤマブキソウ

 ヤマブキソウは別に高山でなくても、自然豊かな山間地では生えています。 八王子の片倉城址には谷一面に群生していて、5月には谷が黄色に染まるのですが、知る人ぞ知るでしょうね。ぱっと見、ヤマブキの花に似ていますが、ヤマブキの花弁は5個。ヤマブキソウは花弁は4個です。

 オオヒラウスユキソウ

 日本にはキク科ウスユキソウ属の植物は5種2変種があるそうです。このオオヒラウスユキソウもそのうちの一つで、北海道の大平山と崕山(きりぎしやま)にのみ分布するのだとか。ハヤチネウスユキソウとともにエーデルワイスに最も似るウスユキソウだと言われています。 また、草本でありながら雌雄異株(であることが多い)というのも不思議な感じがします。
 それはそうと、崕山ってどんな山だろう、名前が興味をそそります。。

 レブンウスユキソウ

 こちらはレブンウスユキソウ。北海道の礼文島、藻琴山など数箇所に隔離分布しているそうです。何でそんな離れたところに同じものが生きているのか。ちょうど氷期に陸地だった瀬戸内海の山々が、間氷期に水位が上がって離ればなれの島々となったようなことでしょうか。

 カシポオダマキ

 カシポオダマキ。変わった名前ですが、カシポとは漢字で「樫保」と書き、これは日本統治時代のサハリンにあった地名だそうです。ミヤマオダマキなどに比べて花冠が大きく、頭でっかちな感じがします。

 クロユリ

 クロユリ。なかなかシブい色合いのユリです。yamanekoの家にも乗鞍の山小屋で球根で買ってきたものが毎年花を咲かせます。好きな花の一つです。花が咲くとわずかに異臭がするんですよね。

 ヒマラヤケシ

 ここからは海外のものを。
 背後からの光が花弁を透かして、蒼いヒマラヤケシをより一層涼やかに見せています。 そういえば去年の夏、六甲高山植物園で出会いました。その前はもう10年近く前に箱根湿性花園での出会いだったと思います。いつ見てもすがすがしい気持ちになります。

 チャボリンドウ

 チャボリンドウ。なんとも和の名前ですが、イタリア北部とかのヨーロッパアルプス原産だそうです。強烈な色合いですね。



 高山植物エリアを抜けると、温室中央のホールに出ました。ここではキノコ関連グッズの販売をしていて、かなりの人出で混雑していました。
 ショップの間をひととおり眺めてみて(ベニテングダケの手拭いを購入)、外に出ました。すぐに今が真冬という現実に引き戻されました。さぶっ。
 
 さあ、これからぶらぶらしながら天王寺に向かい、映画を見て帰ります(実際には、谷町四丁目から天王寺まで歩きました。)。冬晴れの下、楽しい休日となりました。山は来月に持ち越しです。