筑波山 〜天然の展望台から〜
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【茨城県 つくば市 平成18年10月8日(日)】
10月。もう秋真っ盛りです。いい季節ですね。
そういえば今年はヒガンバナをあまり見ませんでした。唯一見かけたのは、日比谷公園の南西角の交差点にある小さな植え込みで。これがちょっと驚きだったのですが、なんと花と葉が同時に見られたのです。通常ヒガンバナは花が咲いているときには葉はなく、葉が茂る頃には花も花茎も跡形もなく消え去っているのですが。丈は10pほどと短いものの、こんもりと花茎の下で茂っていました。これも都市環境による攪乱でしょうか。
そんなこんなで、この週末も出かけることに。場所は関東平野の北に位置する筑波山です。
東京からは首都高から常磐道に入り、北東に向かってビューッと(実際には渋滞でトロトロと)走って土浦北ICで下りるとそこは田園地帯。あの「つくば万博」が開催された筑波研究学園都市のすぐ近くです。もう目の前に筑波山が見えています。
つつじが丘駐車場 | ロープウエイ |
ほどなく山道に入り尾根筋の道路を標高を上げながら走っていくと、やがてどん詰まりに「つつじが丘」(520m)の駐車場があります。駐車場では筑波山のシンボルである巨大なガマが出迎えてくれました。(左写真の中央。白円内に拡大) ここに車を停めて、ロープウエイで山頂直下まで。今日は風が強いので、急に運行を停止するかもしれません、とアナウンスしていました。でもこの強風のおかげで景色が遠くまで見渡せます。筑波山からは広大な関東平野が一望に見渡せ、まさに天然の展望台なのです。
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筑波山は男体山(871m)と女体山(877m)との双耳峰。ツインピークスです。つつじが丘から出発したロープウエイは数分で女体山の山頂直下まで連れて行ってくれます。なのでこの山には普通の靴を履いた観光客であふれているのです。もちろん麓から登ってくる人もいて、その人たちは完全な山仕様のいでたちです。
上の写真は女体山のロープウエイ駅からの南方向の眺め。どーんと関東平野が広がっています。(この左右にも地平線は続いているんです。念のため。) 右端に見える頂が男体山。右の写真のほぼ中央に富士山が見えました。写真をググッと凝視すると見えるかも。
また、左の写真の雲の下あたりに新宿の高層ビル群が見えました。(みなさんは心眼で見てください。) 逆に、都心の空気が澄んでいれば自宅から筑波山を見ることもできます。ちょうど池袋のサンシャイン60と豊島清掃工場のノッポ煙突との間の方角、北北東約70q先の位置です。
左の写真の左端に白く光る水面が見えますが、これは霞ヶ浦。その奥には房総半島の山々(といっても丘のように見えますが)も見ることができました。
この写真だけで山梨、埼玉、東京、千葉、茨城の範囲が写っています。男体山の右側には群馬と栃木の山々も。ざっと一目で1都6県です。
女体山山頂へ |
まずは女体山山頂へ。ロープウエイ駅からは10分もあれば到着します。山頂には大きな花崗岩が露出していて、節理に沿って割れていました。岩の周囲は渋谷のような雑踏だったので早々に退散して男体山に向かいます。男体山へはなだらかな稜線の道を標高にして100mほど下り、そこから一気に上り返すと山頂です。
稜線の道 |
道は石や木の根が張り出していて、やはり普通の靴では辛いでしょう。ましてブーツやサンダルなどは…。でもそんな人も何人か見かけましたけど。
秋の空 |
見上げると高い高い秋の空。本当にこの空は漆黒の宇宙につながっているのか、ちょっと信じられないくらいの鮮やかな青です。
ノブキ(実) | ガンクビソウ |
一見奇妙な花のように見えるのはノブキの果実です。ノブキの花は小さな花が寄り集まって頭花を形成しています。中心部にあるのは両性花で、これは結実しないのだそうです。秋にこうやって実になってるのは両性花の周囲を取り囲むように付いている雌花だったところです。
ガンクビソウは頭花がキセルの雁首に似ていることから名が付きました。といっても、若い人ではそもそもキセル自体を見たことのない人もいるのではないでしょうか。ヤマネコの母の父(つまりおじいちゃん)がキセルでタバコを吸っていました。本来の刻みタバコではなく、紙巻きタバコ(確かエコーだったと思う)の葉をほぐして雁首に詰めて吸っていたのを覚えています。当時、タバコの紙箱がぴったり収まるセルロイドのケースがあって、その半透明のタバコケースとともにキセルを吸うおじいちゃんの口元を思い出します。30数年前の遠い思い出です。
そうこうしているうちに男体山との間の鞍部までやってきました。ここから北方向の展望が開けています。正面奥は宇都宮方面。その向こうには日光の男体山を中心とした山塊が見えます。双眼鏡が一つあれば小一時間は退屈しませんよ。
この鞍部にはケーブルカーの駅や土産物店があり、広い空間になっています。当然ながら観光客がたくさんいます。
自然研究路 |
ここから男体山の山頂に向かう前に、男体山の中腹をぐるっと一周するように設けられている自然研究路を歩いてみようと思います。というか、今日は眺望を楽しむとともにここを歩くのがもう一つの目的だったのです。ここは行き交う人もまばらで、観光客の姿もほとんど見られません。
オクモミジハグマ |
秋にはキク科の植物の花が多く見られます。このオクモミジハグタもその一つ。ハグマとは「白熊」と書き、ヤクの尾の毛で作った宗教用具の飾りのことだそうです。この花の様子を白くふわっとした「白熊」に例えたのでしょう。ちなみに赤く染めたものを「赤熊(しゃぐま)」、黒く染めたものを「黒熊(こぐま)」と呼ぶのだそうです。ふーん。
カシワバハグマ |
ハグマつながりでこちらはカシワバハグマ。「カシワバ」は「柏葉」でしょう。こちらはストリングチーズのように、より細かく裂けています。
ダイモンジソウ |
岩肌を水が伝うような湿ったところにダイモンジソウの群落がありました。花を正面から見ると花弁が「大」の字のように付いているので「大文字草」です。
明るい林 |
強い風が林全体を揺らしているようですが、林の中はそれほどでもありませんでした。あっちでしゃがみ、こっちで見上げ、キョロキョロしながら歩くので、わずか2qたらずの道のりですが遅々として進みません。
ブナ | ブナの実 |
自然研究路のあちこちに堂々としたブナの姿が見られました。今年は全国的に実りが少なく、これがクマの出没に関係していると言われていますが、本当でしょうか。山に食料が少ないので里に下りてくるというのです。まあ、原因はそれだけではないでしょうけど。
男体山山頂 |
自然研究路を一周して、あらためて男体山山頂へ向かいました。こっちは結構な傾斜でした。標高は女体山の方が6mほど高いのですが、山容としては男体山は急峻で女体山はなだらかです。その辺が名前の由来でしょうか。
ツクバトリカブト |
帰りはいったん女体山まで戻り、そこからロープウエイを使わずに歩いて下ります。実は今日のルートは、10年あまり前、子供たちとハイキングをしたときのルートと同じなんです。(その子供たちもなりだけはいっちょまえになってしまいました。)
ヒザがガクガクするような急な道を下り、やがてつつじが丘の駐車場に戻ってきました。日差しもだいぶん斜めです。
ガマ大明神 |
駐車場の片隅に祀られているガマの神様に家内安全をお祈りして帰ることにしました。
それにしても筑波山の山頂からの展望の素晴らしいこと。今日は気候条件が特に良かったからであって、いつもこんな風景を目の当たりにできるものではないでしょう。ラッキーでした。(全国的に見ると大荒れの天気のところも多かったらしく、良かったのは関東だけだったのかもしれません。)
秋晴れの一日、仕事のストレスをすっかり忘れて思いっきり楽しむことができました。また来週も遊ぶぞー!
筑波山遠望(つくば市田中地区から) |
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