千倉海岸 〜初夏の海岸を歩く〜


 

【千葉県 千倉町 平成19年5月3日(木)】
 
 ゴールデンウイーク後半の始まりです。朝から初夏のような天気なので、今日は海の方に行ってみようと思います。今ごろ南房総では海浜植物のハマウツボが咲いているのでは。さあ、新ドリーム号に乗り込んで、渋滞覚悟で出発だ。
 
                       
 
 午前8時、渋滞情報は早くも東京湾アクアラインの渋滞を伝えていました。やはり千葉経由のルートが賢明のようです。首都高7号小松川線からそのまま京葉道路へ。ところがこちらも渋滞し始め、ナビは船橋ICから一般道へ下りろと伝えてきました。下の道もそれほど流れはよくありませんでしたが、幕張、検見川、稲毛と海沿いの道を走って、千葉の先の松が丘ICから再び高速へ。これで渋滞ポイント回避です。

 ローズマリー公園

 君津で高速を下りてから山の中に入り、鴨川で外房に出ました。そこからは海沿いに南下します。
 やがて道の駅を兼ねているローズマリー公園に到着。ここに車を駐めて海岸を歩き始めました。

 海岸に出るとこの風景です。新緑の木々で斑模様になった山と明るい空を映したような青い海。もうただここでこうしているだけで心身ともに開放されるようです。さあ、潮風を受けながらぼちぼちと歩きましょう。

 コウボウムギ

 青々としたコウボウムギ。ドライフラワー状態のものも趣がありますが、これも力強さがあってなかなか良し。

 トベラ

 トベラの葉は潮風に耐えうるよう硬く表面がツルツルにコーティングされているのが特徴。丸く反っているのも強度を増すための工夫でしょう。花は純白ですが果実は真っ赤。白い色で虫を呼び、赤い色で鳥を招く。なにかと賢いですね。

 ハマヒルガオ

 一日花のハマヒルガオ。お昼過ぎでもまだ生き生きと咲いていました。この花を見るたびに国語の教科書に載っていた「ハマヒルガオの小さな海」を思い出します。引き潮の小さな潮だまりに取り残された小魚とその脇に咲いていたハマヒルガオとの短いふれあいを描いた物語。小学3年生の子供心に何か切ない話として染み込んだように記憶しています。もう40年近くも前のことですが。

 ヤセウツボ

 おっと、これはハマウツボではなくヤセウツボです。これは海岸だけでなく街中の草地などでもときどき見かけます。もともとは北アフリカやヨーロッパ原産の植物で、今や日本の一部に帰化しているのだそうです。ハマウツボはカワラヨモギに寄生する植物ですが、このヤセウツボはマメ科やキク科の植物にも寄生するとのこと。上の写真をよく見ると、ヤセウツボの根本にキク科のハマニガナの葉があります。きっとこれに寄生しているのでしょう。

 ネコノシタ

 夏になると黄色い花を付けるネコノシタ。名前のとおり、葉の表面はザラザラしていて、確かに猫の舌ってこんな感じだったような気がします。サイズ的にも、厚さ的にも(葉は肉厚で、曲げるとポキッと折れるほどです。) さすがは海辺の植物。強い日差しと塩分から身を守るためか、頑丈な造りになっています。

 ハマニガナ

 砂の上に出ているのは葉と花のみ。茎は砂の中です。ハマニガナはこの地下茎を長く伸ばして増えていくのだそうです。養分を作る器官と受粉する器官だけはさすがに外界に出しておかざるを得ないのでしょうが、地下茎さえ地中で守っておけば地上部がだめになっても復活が期せるという作戦でしょう。ところでハマニガナは漢字で書くと「浜苦菜」。名前に「菜」がついている植物は食用にできるものであることが多いですが、はたしてこのハマニガナには食用にできる部分があるでしょうか。よっぽど大量に食べないと腹は膨れそうもありません。

 ツルナ

 こちらは肉厚で美味しそうなツルナ。漢字では「蔓菜」です。実際に日本では古くから食用にされていたそうです。
 ところで海岸沿いに2qほど歩きましたが、お目当てのハマウツボには出会えませんでした。こうなったら場所を変えて再度探してみようと思います。

 次にやってきたのは、房総半島の南端、平砂浦です。日も少し傾いてきて、しかもこの最果て感。ゆっくり探すような状況ではないのですが、それでも海岸を歩いてみました。

 オオバナコマツヨイグサ

 北アメリカ原産のオオバナコマツヨイグサ。夕方に咲いて朝しぼむという花なので、きっと今しがた咲いたばかりでしょう。和風な黄色が爽やかです。
 でもって、あちこち見て歩きましたが、やっぱりハマウツボは見あたりませんでした。残念です。

 「南房パラダイス」

 浜を背にして内陸側を見るとご覧の風景。鬱蒼とした松の森ですが、これは防砂林です。もともとここは地震(主に元禄地震)により隆起してできた砂浜で、強い風に飛ばされてくる砂との戦いの結果、このような風景ができあがったとのことです。正面に見えるのは「南房パラダイス」というレジャー施設で、大きな温室のような建物がいくつもあり、熱帯の植物や蝶、鳥などを施設内を巡回して見ることができるところです。他にも宿泊施設やゴルフ場なども併設されていて、ゴールデンウイークということもあって、たくさんの人が訪れていました。

 南国の鳥

 たとえばこんな色鮮やかな鳥がそこいら中に。名前はキンムネチョウビテリムクだとか。漢字で書くと「金胸長尾照椋」でしょうか。西アフリカのご出身だそうです。
 
 今日はハマウツボを探して房総半島の先端までやってきましたが、運悪く出会うことができませんでした。来年、もう少し下調べをしてから再度来てみたいと思います。でも、それはそれとして、輝くような初夏の一日、潮風に吹かれてずいぶんとリフレッシュすることができたような気がします。
 さあ、これからはまた渋滞を覚悟して帰路につかなければなりません。予想所要時間、5時間。おそらく今日のうちには帰り着くことはできるでしょう。