天神嶽 〜はやくも晩秋の装い〜


 

【広島県豊栄町 平成14年11月4日(月)】
 
 豊栄町は広島県のほぼど真ん中に位置する、人口五千人弱の静かな町です。
 中国山地の脊梁部よりかなり瀬戸内側に位置していますが、日本海と瀬戸内海とに分水する分水嶺が通っています。
  《右図で赤い部分が豊栄町。青線は分水境界》

 山陽自動車道を西条I.Cで降り、セブンで弁当と飲み物を買ってからR375を北上。この辺りには穏やかな里山の風景か広がっています。
 今回は豊栄町にある天神嶽(758m)を目指しました。今年は観測史上最速で県内の初冠雪を記録したとか。例年に比べ34日、昨年からは40日も早い初冠雪だそうです。天神嶽近くの鷹巣山(922m)の山頂部も白く化粧をしていました。
 
 安宿(あすか)地区にある八幡神社の空き地に車を停めて、登山道に入りました。

 ウリカエデ

 ガマズミの葉と実は暗赤色、ウリカエデの葉は柿色、イヌザンショウの葉はレモンイエロー。紅葉のグラデーションがみごとです。

 ヤマラッキョウ

 さすがに花は少なかったです。ヤマラッキョウやコウヤボウキ、あとはアキノキリンソウの残り花、といったところでしょうか。


 服装も冬仕様  アシナガバチの廃墟

 午後1時。気温が最も上がる時間なのに、山間ということもあってひんやりしています。辺りの雰囲気はもう晩秋といった感じ。メジロたちが梢に残った柿をつついていました。

 ジョロウグモ

 おなかがプックリとふくらんだジョロウグモの雌。夏場はスマートですが秋になると産卵のためにでっぷりとしてきます。そして卵を産んで冬がやって来ると死んでしまいます。


 ネジキ  タカノツメ

 風は強いのですが林間の登山道は大丈夫。青空と紅葉のコントラストが鮮やかです。

 リンドウ

 稜線に出てしばらく歩くと中天神嶽に到着。山頂は岩塊で、展望は360度。風が強いせいか遠くまでクリアに見渡せました。

 山頂から南東方向の展望

 ここは吉備高原面のど真ん中にあり、同じような高さの山々が見渡す限り続いています。
 南を見ると遠く四国の山並みも見えました。北方向の県境付近には雪雲が帯状に居座っています。猿政山一帯には雪のカーテンが掛かっていました。

 気になる形の山がありました。

 北の方向に見える、周囲から独立してポコッと盛り上がっている山です。
 地図で見ると「黒川明神山」とあります。調べてみると鮮新世以降(530万年前以降)にできた新しい山で、基盤岩を貫いて噴出した玄武岩ドームだそうです。こんなドーム状の山がこの辺りにあと2つあります。

 ギボウシの種子

 景色を堪能したら、ゆっくり下山。八幡神社に到着したときにはもう夕方でした。
 秋の日はつるべ落としと言いますが、まさにそのとおり。ブルッ、ますます冷えてきました。